ルナッティックムーン
「…あっその手が有ったわね!」
「ルウカちゃんは煽るのを止めなさい、期待させないのよ。アンタじゃ無理よ」
「何でよ、ママ!」
「いつも言ってるだろうが。こう言った場ではママって呼ぶんじゃねぇ」
きゅっ急にドスの効いた声が響き渡った。
「ごっごめんなさい!ラブ様」
「流石ピンクの国の女帝様だ」
「……ビワト、お前は平気なのか?」
「うん、小さい頃からこういうの見て育ったから平気かな。…でも自分に向けての威圧ならエクル見たいにビビるかもな」
よくオルシェルアピンク王国でこう言った光景は日常茶飯事だったし。
「だとするとこのまま前線に出したら」
「運良く生き残れた子しか戻って来ないわよ」
「まだルナティックムーン開始まで猶予はあるから安心しなさい」
「そうですか…モーリン学園長、今から全校生徒に向けて放送をします」
「えぇ」
エクルは手際よく全校生徒に向けての放送を始めた。
「皆、聞いてくれ。とある旅人と学園長の母上であるラブナシカ様が学園長室に現れ今回の出撃は無しとなった。戦闘準備を解除しそれぞれの持ち場から離れそれぞれの部屋に戻って欲しい。
今回の現象は【ルナッティックムーン】と言う現象で我々では太刀打ち出来ないと判明したが暫くは猶予があると言われたので不安になり学園から出ないようにしてくれ」
するとその直後に学園長の部屋に数人が押し掛けてきた。
「今さっきの話は本当なの!?」
「……なんだ?このオカマは」
「止めなさいグルート。あのお方は学園の育ての親の【愛の神】よ」
「あのオカマの女王様だと!申し訳ありませんでした!!」
「そこのお子様は分からんけどな」
「そこのお子様ふたりは観測者の生まれ変わった姿だな」
「前の時と違って力を失い純粋な人間で君たちより弱いから期待しないでね」
「知識ぐらいしかないな」
「その【ルナッティックムーン】とやらに関してはどうするんだ?何か対策を練るのだろう?」
「ほぼ詰んでるけどね」
「「「「え」」」」
エクルが今さっき聞いたことを聞いてきた。
「まさか本当に……あの爺さんは話してくれなかったぞ」
「お前たち現在の魔王の一族は【浄化の魔王】の血は引いてないから知らなくても同然だろう。現在の魔王たちは過去の歴史を捏造しただろうからな」
「え」
「その辺は置いておいてこれからどうするかだね」
「【ルナッティックムーン】だから行動が限られてるしな」
「そうねぇ…この学園全体を結界で包み込んで時が過ぎるのを待つしかないわね」
「その方法があるなら死を覚悟する必要ないじゃないの」
「結界を破壊されたらもうその場で終わるからな?」
「そもそも結界が壊れるなんて…」
「【ルナッティックムーン】の時は魔物が甦るといったでしょ?それは大昔に退治された魔物も甦るって事だからね?」
その言葉を聞いた人たちは全員一斉に青ざめた。
「…大昔に存在していた魔物も?」
「そうよ。【大魔法使い】が退治した魔物や【四属性の勇者】が退治した魔物も含めてね。そういったのが攻めてきた時なんて絶望よね」
「ま…ラブ様!だとしたら悠長にしている暇はありませんよ!」
「大丈夫よ、何て言ったって天命を終えても尚|いまだにこの大陸を作った【大魔法使い】の強者の魔力とオーラがこの谷を包み込んでいるんだから…少しは大丈夫でしょう」
「本当に強かったのですか?その【大魔法使い】は」
「えぇ、この世界で偉業を成し遂げ、いまだにその偉業を越えた魔法使いは現れてないわ」
「どんな偉業を成し遂げたのですか?」
「その辺は詳しくは教えられないけど、この世界の神秘を解き明かしたとでも言っておきましょうか」
「へぇ」
「言えるところは術式や魔法を研究していたなら必ずぶつかる壁を乗り越えたって事ね」
「俺たちも戻ったら鍛え直さないとだな」
「感知魔法にしろ諸々も鍛え直さないとだからね」
この時、モーリンやカーウェンは2度と知能あるゴリラババアと知能あるゴリラジジイが誕生しないようにすると誓った瞬間である。
「その辺はワシも手伝いますぞ」
「…カーウェン、今なにか考えただろ」
「いいえ(嘘)」
「……それでルナッティックムーンはどうするのですか?」
「このまま全校生徒や教員、モーリンを総動員してもルナッティックムーンに耐える頃には半分以下になってるだろうから。
今ここで決断しろ、ここに残って結界を貼りモンスターの攻撃を防ぐ事が出来る様に祈るか俺たちの世界に学園ごと引っ越しするかな」
「……シルトの住人たちを良く思っていないのもいるけど良いの?」
「シルトの子供たちの協力があれば一度向こうに行って終わったら戻ってが出来るよ」
「…でもそれは1度限りでしょ?何度もこの【ルナッティックムーン】は起きるのよね?」
「起きるな。誰かが【ルナッティックムーン】や【ブラッディームーン】等が起きないように封じ込める術を作ればいつもの生活になるだろうけどな」
それを聞いたモーリン学園長は学園の全校生徒や教員、そして学園に保護された人たちにアナウンスをして意見を聞くことにし、どのような結果が出るのか待った。