交渉
【流星の谷】
《エイスワイズ学園……学園長室》
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
くっ空気が重い……とうして何も喋らないんだ。
「まさかこんな幼女とショタが現れると思わなかったわ」
「このバカが仕出かしてね」
「でも縛られている感じがしないわね」
「おう、俺もサニカも呪縛から解き放たれて自由になったからな」
「それで何しに来たの?」
「魔王たちの様子と学園の様子を見るために来たんだ。奴等とは縁をぶった切った」
「そう」
「この世界はもうこれ以上は繁栄や発展しなくなった、衰退していくだけだ。この世界が直ぐに滅ぶ事はないが君たちが今している生活を永遠と続けることになるだろう」
「やはり生命力溢れる魔力を感じなくなったと思ったら…やっぱりそうだったのね。それでシルトの住人はどこにいるのかしら?」
「新たに誕生した世界に避難してそこで今まで通りの生活を送ってるよ」
「新たな世界…」
「海の水が7割で島が多くてな。だかかなり安定しているよ」
「…………広い大陸はあるの?」
「あるよ」
「その前に一つ聞きたいことがある。ここに来るまでに荒れてたけど何があった」
「……どうしてもいざこざが起きてしまうの。多種族での内輪揉めがあったのよ」
「やはりか……もし受け入れたら、せっかく向こうは安定していると言うのに争い事を持ち込み、そしてこの土地は自分の物だと言い張るものが出てきて戦になりますぞ」
「それはどの世界でもそうだし今さっきの言葉はカーウェンの意見でしょ?」
「そうじゃが、受け入れるも受け入れないも向こうの世界を作ったのはこの二人ですぞ」
「!」
モーリン学園長は二人を見て驚愕していた。
「転生前の体の時にだな」
「世界創造ですって…!…ワタシでもまだ成し得てないわ」
「私もルウカも別に学園を受け入れるのは構わないよ。条件としては時空を弄くったり、無益な争いをしない、環境を壊さないと約束するならだね」
「まぁ、住み良くするために整備するのは許すが劇薬作ったりして海に流したりゴミを海や周辺に捨てたりしない事だ」
「あとは大陸や近辺の島を奪い合ったら許さないし暗殺なんてもっての他で…要するに知恵ある生物としてモラルを保てと言うことさ」
「ワタシのやりたい事が出来ないのね」
「今はっきりとモラルが無いと認めたぞ、この人」
「とても魅力的な移住だけどそういった研究が出来ないならワタシはパスね。この学園に暮らす子供たちが二人が作った世界に行きたいなら止めないし学園に残るならそれでも良いわ。
ワタシは時空間の研究や秘薬の開発は止められないもの」
「劇薬作りならマフェットが居るよな?」
「マフェット…?」
「マフェットは劇薬を作っても海に流したり環境を壊す事は一切しないからね」
「だけど学園長はやったと」
その事はルウカが喋った。
モーリン学園長は今から500年前にたくさんの失敗作の薬品を作りもて余していたが海にたくさんの劇薬を流しその劇薬を浴びた魚が超巨大なモンスターへと変化しそのモンスターを倒すまで船が出られないくらいに海が荒れたらしい。
「………地面に埋めると怒るんだもの」
「そりゃ怒るよ」
「場合によってはただの木がモンスターになるからのう」
「え」
ちょうどそこに急ぎ足で成長したエクルが現れた。
「学園長!」
「エクル!」
「お前はビワトか!変わったな!…再開したのは嬉しいがすまん、少し緊急事態でな、この件が終わったら話そう。クラスの皆も心配していたが」
「エクル君どうしたの?」
「また月が赤く染まりだした」
「!…また来たのね」
「赤い月だと」
「なら戦闘の準備…」
「暫し待たれよ」
「「「「「ん?」」」」」
サニカは古めかしい言葉を使って制止した。
「その赤い月は何度起きたんだい?」
「確か…10回目だな」
「それがどうしたの?」
「10回目は不味いな」
「一体何なんだ」
「今起きているのは【ルナッティックムーン】という災害だよ。月が真っ赤に染まりモンスターが凶暴化する現象。
本来は【ブラッディームーン】と言う赤い月になる現象だけど10回目はモンスターが更に強くパワーアップしそしてこれまで倒した魔物も一時的に甦り、更にこちらも強くなってるんだ」
「へ!?そもそもなんで知ってるのよ」
「この現象は大昔に存在していた【大魔法使い】と【浄化の魔王】がこの災害が起きぬようにと封印した現象の一つなんだよ。
誰かさんたちが自身の力があれば大昔の加護は必要ないと捨てさり封じていたのが解けたんだね」
「…そういった記録もあの宿屋に残っていたのね?……ちゃんとくまなく本を読めば良かったわ」
「さっき言っただろ?この世界はもう発展する事も繁栄することはないと。この世界の人々の為にと大昔からある物も無くなるだろう」
「だとしたら魔大陸に湧く【エリクサーの泉】もいずれは渇れるのね?」
「直ぐに渇れるだろうな。加護を捨てた一部の王族たちは慌てふためくだろうさ」
「だとしたらその【大魔法使い】と【浄化の魔王】はありがた迷惑ね。もしその現象が元々残っていたら対策を練って慌てる事はないのに」
「そんな現象が大昔から残っていたら人類はここまで繁栄しないし隠れ里に住むのが普通になってたわよ」
そこに見たこともない麗しい男性?がやって来た。
「ママ!?」
「ママって呼ぶんじゃないわよ。ここではラブ様かお姉様でしょう?」
「ラブか久しいな」
「あらあら、二人してこんな幼い姿になってこの世界に現れるなんて…それに魂を縛っていた鎖は無くなってるわね」
「やはりラブからもそう見えるか」
「えぇ、まさかこんな時に【ルナッティックムーン】が起きるなんてね。アタシの可愛い妹分たちが各地に動いてくれているけどいつまで持つかしら?」
「ママも大昔から生きているから対策も知ってるのね!」
「はぁ……対策を教えてと言っても教えられないわ。どんなに作戦を考えても駄目なの、モンスターは夜が明けるまでは何度も甦ったりして無限に現れるの。
だから大昔に起きた時は皆して死を覚悟したものよ?地下に隠れても洞窟に隠れても山奥に逃げてもモンスターはどこまでも追ってくるし…本当に強いか運が良い子しか生き残れないの。
これからはこういった事が常に起きるのが常例となるし【大魔法使い】と【浄化の魔王】が防いでいた現象が一気にこれから連続で起きるでしょうね」
「そっそんな…」
「モーリンも頑張って【大魔法使い】と【浄化の魔王】が協力して封印していた現象を封印する方法を新たに作りだせばよいではないか」