大昔から潜んで居た悪意
【天光の宿屋】
《リビング》
「はー…なんか落ち着くな」
「ここの宿にはテレビがあるではないですか!」
じっちゃんのいつもの喋り方ではなくなっている…この宿に来てからテンション高いなー。
「……テレビ?」
「地球で作られている【ピー】だな。悪いがピーーは無いみたいだ」
「仕方ないですじゃ、ピーーはとても優秀ですからのう。マリ○カートやりたかったのう」
「ん?」
「何でもないぞ」
オレとルヴェルには規制がかかり聞き取れないみたいだ。
じっちゃんは地球に行ったことあるから規制が掛からないのかもな…少し羨ましいな。
「この大陸からいつ出るのじゃ?」
「この大陸も遂に役目を終える時が来たから、崩れ去るのを見守ってからだね」
「来たばかりなのに?」
「この大陸は数十万年の平和に貢献している大陸でね。今を生きる魔王たちがもう必要ないと宣言してくれたから……ようやく役目を終わりにしてあげられるよ」
「この大陸はどんな事をしていたんだ?」
「現在メインとなっている大陸に住む人たちのどす黒い悪意を浄化したり人々が乗り越えられないような試練が降りかかって来ないようにヤバい部分を削いでいたりしてたかな」
「何か凄いな…」
「そういった浄化する事ができる場所だから心地良く大陸全体が美しく煌めいているのね!」
「やはりルヴェルにはそう見えるか」
「この大陸が無くなるとどうなるんだ?」
「他の世界同様に荒れ始めるだろうな…ベリックス…魔王たちが望んでいる混沌とした世界になる事だろう」
「小僧どもは平和のありがたさを知らないからああいう事を言えるのじゃ。
ワシが20代の頃あった争いもこの大陸がなければあれ以上にかなり戦況が悪化していたと思うとぞっとするのう」
「…シルトの子供たちですら何度かピンチになってたからね」
「そうだな…この宿にあるこの大陸を眠りに付かせられる【とこしえの宝玉】に願うとしよう」
「とこしえの宝玉?」
ルヴェルがそう反応した…もしかしてペンタスから聞いてるのか?
「まっ見ていろ、今からやるから」
ルウカとサンゴが祈り始めると大陸の中心に建っている城の様な建物の天辺から強烈な光が発せられた。
すると…。
「ようやく見つけたわ…」
「ルヴェル!何を言ってるんだ、それと今からどこに行くきだ?」
「別にどこに行ってもいいでしょ!ようやく、ようやく辿り着いたのっ!離してちょうだい!」
するとルヴェルの中から何かが飛びだしルヴェルの体が崩れ落ちたのでオレはルヴェルの体を支え、黒い何かがこの宿から飛びさって行った。
「まさか【アレの生まれ変わり】がまだ続いて居たとは…」
「反省してちゃんと転生していると思ったのに……これだけたっぷりと猶予を与えられたのにダメなのか」
「お二人ともどういう事ですかな?」
「二人して急にどうしたんだ?ルヴェルの中から黒い何かが出て行ったけど」
サンゴが口を開き語りだした。
「…今いる世界が生まれた頃……創世記の話にまで戻ることになる。
とある【女神】が自身の快楽のためにこの【世界を作り出した主神】をタブらかし、この世界に芽生えた数多の種族を争わせたり冤罪を吹っ掛けたり好き勝手やっていた。
だか長い年月が過ぎ、ついには異世界の人間を巻き込み自身が気に入らない種族を滅ぼす計画を作り出した。
だが【全ての始まりの勇者】と呼ばれる異世界の人間がハイエルフの妻とその仲間たちと共に世界の歪みに気づき、その女神と主神を引きずり下ろし【2代目主神】と共に封印することに成功した。
しかしこの世界は女神と初代主神が仕出かした事が酷すぎて悪意と言う悪意にこの世界が包み込まれ闇に包まれそうになったが【2代目主神】が悪意を浄化させるために【とこしえの宝玉】と【浄化の魔王】という管理者を作り浄化システムをこの世界に作り出した。
そしてそこからかなりの年月が経ちだいぶ浄化が進んでいた頃に【2代目主神様】が反省と浄化させるために女神たちを人間に転生させたが【女神の転生体】がまたも罪を犯して始めた。
【2代目主神】は神が直接的に人間に手を出すのはご法度とされて悩んでいた所にその女神の魂は更なる禁忌まで犯してしまった。
その事が引き金となり【2代目主神】はキレて後に【四大貴族】と呼ばれるようになった者たちの先祖である【四大属性の勇者】を召喚した」
じっちゃんはかなり驚いた表情をしていた。
…サンゴはこの世界の創世記の話をしているのか?
「【四大属性の勇者】と【当代の浄化の魔王】たちの活躍により女神の転生体と女神に利用されていた元主神は散々な目に遇わせられながらも捕まり無理やり【転生】させられ、懺悔や反省させるために自分たちがやって来た事を本人たちに体験させる形の転生を繰り返させていた。
そして今まさにこの瞬間までその【女神の魂】は悟られぬように潜んでいた」
「……まさか…その女神の今代の転生体がルヴェルだったと言うことなのか?」
サンゴは否定した。
「それは違うよ。【女神の転生体】は何らかの要因で既に体を失って魂の状態でウロウロしていた所を学園に通う女子生徒の中に潜んでいて何かの拍子でルヴェルの中に入ったんだね」
「ルヴェル本人は気付かずにいたんだろうな。今は魔力を奪われて倒れたのだろう」
オレはホッとした。
「とこしえの宝玉とは何なのですか?」
「どんな願いも叶える力を持つヤバい宝玉だ。今も力は現役で平和な世界が続いて欲しいと願いを込めこの大陸ごと隠したらしいな」
「二人はどうして知ってるんだ?」
「観測者となった時にその【2代目主神】がこの世界から旅立つ時に記録を見せられてね」
「そうでしたか……その女神は大昔から懲りずにとこしえの宝玉を使い返り咲こうとしているのですかな?」
「カーウェンの思った通りだろうさ。本当にしぶとく、しつこい奴だよ」
「ルヴェルに異変は無いんだよな?」
「たぶん、今の私たちでは調べられ……あっ」
サンゴはハッとして歩き出してどこかの部屋に入りそこから本を取り出してきた。
「やっぱりこの宿の方にはあったね」
「その本は魔力が貯められている?」
「この本はもしもの時のためにと【2代目】が残してくれた物で【女神】が関わった物に対してのみ使える本でね。これならルヴェルの状態を見れるよ」
サンゴが本を開くとその本から光が溢れるとルヴェルを包んだ。
するとステータス画面が現れた。
【ステータス】
ルヴェル
レベル 100
性別 ♀
年齢 15歳
称号 恋する乙女ドラゴン
種族 デュモルチェドラゴン(宝石竜種)
職業 騎乗竜
体力 75000
魔力 8000
力 600
守備 900
魔防 800
技 300
【スキル】
【威嚇】【空間把握】【視覚遮断】【人化】【氷水合成魔法レベル50】【料理スキルレベル23】【逃走レベル(極)】
【バットステータス】
【悪女の魂の元宿主】
「やはり元宿主って出てるね」
「何かヤバいのか?」
「ルヴェルには暫く何もしてなくても悪意が集まりやすくなる」
「何もしてないのにですかな?」
「うん、理不尽だけどね。それだけ【元女神の魂】の穢れがヤバすぎるんだ」
「どうすれば…」
「ルヴェルが目覚めたら事情を話して暫くはビワトとの契約の媒体にしていた契約石の中に入って貰い浄化するしかないね」
「そう簡単にそんなヤバいのを浄化出来るのですかのう?」
「それが【女神の魂の残り香】には良く効くんだ。愛情や純粋な思いと言ったものにかなりの弱くてな。ビワトがルヴェルを愛しいと思うそれだけで浄化できる」
「!……だからこそシルトの子供たちに対して愛情や尊さを教えてから心を鍛えるのですね」
「あぁ…あれか…最初はあんまり良くわからないけど、アレを見させられるとを人を見下せなくなるし人を敬う気持ちになるよな。アレを見ている子供たち泣くし逃げだそうとするの出てくるから縛られてるのいるし」
「アレは…一生のトラウマものじゃ……だからこそ人を見下す者はシルトの子供の中では出ないのだけどな」
……口に出したくないのでスマンが内容は…聞かないでください。
サンゴとルウカはルヴェルが目覚める前に宿の戸締まりをして【いろり】と呼ばれる場所にオレたちを案内して寛ぎだした。