SS バレンタイン…デスネ
【日天の宿屋】
《ダイニング》
「さて、今日はチョコレートのお菓子を作るぞ」
「ふへへ…ビワト」
「…なんで僕まで」
「タズルの場合は…レシピを覚えて貰うためさ。シアレたちベテランはもう巨大チョコレートケーキとか思い思いのお菓子を作ってるからこちらも始めようか」
リビングのテーブルではベテラン主婦や彼氏持ちが巨大なチョコレートの模型などを作り上げているのが見えるわ。
「それで僕たちはどんな料理を作るんだ?」
「生チョコかチョコレートプリンだよ。作り方のレシピはそれぞれ渡すから作り始めよう」
「ワタシはチョコレートプリン作りたいわ」
「なら僕は生チョコか」
「分からない事が合ったら聞くんだよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【???島】
《大広場》
「アトハ誰ガ捕マッテイナインダ?」
「エンロウトシルトノ年長ノ既婚者ドモダ!」
「チッ相変ワラズスバシッコイナ!」
「オ前タチ!探シニ行クゾ!!」
それを家の屋根から見る人たちかいた。
「この時期になると出てくるよな」
「年々人間離れしてないですか?」
「全く困った奴らだヨ」
「親方とかも上手く隠れるもんだなぁ」
「ヤスバは昔から擬態するの上手いからな」
「さて…俺たちはどのルートから安全地帯に行こうか」
「安全地帯はサニカ先生が毎年必ず作ってくれますからね…ですが今年は特に力の入れようが凄いですね」
「初めて恋人が居る状態で参加するビワトはそこまで酷いことされないと思うゾ」
「大広場に恥ずかしい姿で曝されているトレニアを見て言う?」
「トレニアに関しては仕方ないと思います。恋人がいる女性と独身の女性にナンパしてモテない男から怒りを買ってますからね」
「あれだけの事が合ってまだやるか…」
屋根の上で話し込んでいると独身男児たちが騒ぎ始めた。
「クッ流石ハシルトノ連中ダ…ナカナカ見ツカラナイゾ」
「我々側ニ居ルシルトノ者タチデモ難シイノカ」
「ソレハアリ得ン」
「オォ!同志ヨ!」
「隣ノ島ニ潜伏シテイタ奴ラヲ捕マエタト連絡ガ入ッタ!」
「ソシテ…屋根ノ上ニ潜ンデ居ル奴ラヲ捕マエルゾ!同志ヨ!」
その様子を見ていた俺たちは立ち上がらず周囲を確認すると屋根の上には独身男児たちに囲まれていた。
「バレナイト思ッテイタカ!」
「バレると思っていたさ」
「相変わらず努力しない奴らネ」
「努力シテルヨォオ!コチラカラ行ッテモ振リ向イテクレナインダヨォ!」
必死すぎて怖いなこの人たち。
「ソグルてめぇ」
「ナンノコトカナ?」
「卑怯ですよ」
「ソンナ事ハナイゾ」
「ルウカも片言かよ!」
「大人げない男たちネ」
ソグルを含めた独身男児たちはルウカの指示の下で動いていた。
「ヨシ、オ前ラ掛カレ!」
「お前ら四方八方に逃げるぞ!」
「あっオレは終わったわ」
「諦めるの早いヨ!」
「こうなれば…!」
煙玉をエンロウさんは服の裾から取り出し地面に叩きつけると四方八方に逃げた。
「相変ワラズ、エンロウハ小賢シイナ」
「ソレニ比ベテビワトハ潔イイナ」
「煮るなり焼くなり好きにしてくれ…」
「自ラ投降スルトハ…」
「ビワトヲ大広場ニ連レテ行ケ」
オレは抵抗せずに大広場に連行された。
「オ前ハ自ラ投降シタノヲ含メテ今年初メテ恋人カラ貰ウノカ…ダトスレバ今回ハ顔ニ落書キノ刑ダケダナ」
「ソレニコヤツハ初恋ニ敗レタノモ含メテソレダケデ済マセテヤル」
「…………(見た目は良くても中身のせいでモテないんだな。シルトの女性住人は特に人柄を見切っちゃうからな)」
オレは抵抗しないで独身男児から特殊メイクを受けた。
そして数時間後…。
「ビっビワト!誰にやられたの!」
「たぶん…シルト街の鍛治屋のラクードおじさんたち」
「サンゴから聞いていたけど。こんな事をする人たちとは口を聞いてやらないわ!ビワトに着いている魔力を感知して誰が関わっているのか分かるんだから!」
「顔に落書きされる以外は何もされてないから大丈夫だ」
「それでもワタシは暫く話さないわ」
ルヴェルさんはどうやら激おこの様である。
「………ふっ……ザマァ」
「それが夫に対してですか?」
「もし次にまた女性をナンパをするようならお前に着いている呪いを発動させるからな?…覚悟するんだな」
「…………大人しくします」
「だと良いが……手作りしたチョコは罰として無しだ。独身の女性たちが作っていた【可哀想な独身男児のためのチョコレート】に寄付する」
「どうぞ、ご勝手に」
「ぷぷっ………先が思いやられるわね~弟夫婦は」
そして独身の女性たちがテーブルの用意をして大広場に巨大なチョコレートケーキやチョコフォンジュ等の料理をたくさん置くと独身男児たちがどこどの民族の格好のまま藪から現れた。
「全く、懲りないわね。恋人が欲しいなら中身を磨きなさいよ」
「見た目が良くても中身が断念なのが悪いわ」
「アンタたちがこんなことばかりして変わらないから駄目なのよ」
「アタシたちは一人でも生きていける自信があるから男からナンパされても乗らないしそこまで不自由してないわ」
「それにシルトの女たちは誰かさんたちの教育のおかげでナンパする男たちは好かないわ」
「なんのことやら」
「ふむ?」
その教育を作り出した当の本人たちは聞き流し知らんぷりをした。
「アタシたちがお子様になびくわけないわよ」
「ルヴェルもビワトの顔を拭いてあなたの手作りチョコを渡しなさい。思いが通じ合って初めてのバレンタインなんでしょ?」
「えぇ!」
ルヴェルがオレにニコと微笑み可愛らしい箱をオレの目の前に出した。
「はいっサンゴに指示を貰いながら作ったの」
「これはチョコレートプリンか!この場で食べても良いか?」
「うん」
オレはルヴェルが作ってくれたチョコレートプリンをいつの間にか建てられていたベンチにルヴェルと共に座ってから食べた。
「味はどう?」
「美味しい」
「えへへ…良かった」
「オレは母さんからしか貰ったことなかったから嬉しいよ」
「この間までは従魔の契約を交わしていた中だからここまで出来なかったけど…来年は違うチョコレートのお菓子を作って見せるわ!」
「ならオレも父さんたち見たいに独身男児たちから逃げ切らないとだな」
「その父親たちには困ったものです」
「母さん?」
「あれほど遠くには行かないでと言ったのに…戻ってくる気配がないのです。ルーキュストに探しに行って貰っています」
父親たちが戻ってきたのは一時間後でそれぞれの伴侶や恋人や身内から説教をくらいスミマセンでしたと謝っていた。
コレがほぼ毎年行われるのか…恐ろしいと思った日でもあり恋人が頑張って作るチョコレートを貰える日でもあると思うと嬉しいと思った。