狂戦士の通り名は伊達じゃない!
【サンゴの持ち運び式の家】
《リビング》
「ふむ……」
「…と言う事をしようと思う…まだ早いか?」
「別に早くないと思うよ」
「……」
「ルヴェルに告白をするならタズルに関しては確実に断ち切ってからじゃないと失礼たからね?」
「分かっているさ。アレから半年も大海原を渡って様々な島を旅して心の整理を着けたよ」
「そうか…1つ聞きたいんだけど良いかい?」
「うん」
「私も行動を共にしているけど、おじゃま虫じゃないか?」
「そんな事はない。サンゴは現に相談役として相談に乗って貰ってるし…それにルウカと違って茶化してこないから…居るのと居ないので安心感が違うんだ」
「…………」
「それじゃオレは薪を集めてくる」
「ありがとさん、行ってらっしゃい」
それだけ言うとオレは宿屋から出ていった。
「……シアレたちと手紙のやり取りして様子を書いて送っているけどビワトには後で見せようかな……タズルも呪いが解けたようで良かった」
「あら…タズルたら遂に呪いが解けたのね」
部屋で休んでいたルヴェルがリビングにやって来た。
「そうみたい。シアレから送られてきた手紙に書いてあったよ」
「あら…手紙のやり取りしてたのね」
「定期的に手紙のやり取りはやるよ」
「そっちの方が皆が心配しないものね」
「ビワトにはまだ内容は見せてないけど…ルヴェルには話しても良いかな。その呪いの解け方が凄かった見たいだよ」
「もう既に行われたであろうその…しっ初夜で解けたんじゃないの?………内容を聞いても?」
「うん」
シアレから送られてきた手紙の内容はこうである。
新婚生活の初めての夜にてトレニア新婚夫婦の家から悲鳴が聞こえたが新婚の初夜だからと皆で悩んでいたがルウカが直撃し家の中に突入したのでシアレたち女性陣が入った。
そしたら既に天に召された筈のロザイアがタズルと殴られて気絶しているトレニアに罵倒を浴びせていたそうだ。
「えっ!あのキレイでおしとやかな人が!?」
「うん……続き読むよ?」
「えぇ…」
罵倒の内容は『貴族の元娘が何しとんじゃぁあ!!どんなに小さな頃の口約束だろうと勝手に破ってんじゃないわよぉお!!例え家が断絶していようが少しは向こうで貴族として育ったでしょうがぁ!!』と罵声を浴びせた。
そして『そこの野郎と【一目惚れ婚】する前にビワト君にせめて「昔あなたと交わした結婚の約束は取り下げて下さい」と断りを入れなさい!!そして昔約束した本人の目の前で断りを入れてないのにイチャイチャするな!!』と娘を高速の往復ビンタし始めたんだそうだ。
「ひぇぇ~……あれ?でもタズルはサンゴたちの訓練を受けたわよね?だから自力で止められるはずじゃ…」
「ルヴェル、それは【妖精の加護】があった前提での話してあって、加護が無い状態での特訓はやってないからね」
「あっ」
「ロザイアは冒険者をしていた時期が短いけどあってね。その短い冒険者時代に通り名が付いてその通り名は【二面性の狂戦士】だからね」
「狂戦士…あの可憐な見た目なのに」
「それを知るのは極わずかだけど」
「……続き聞いても良いかしら?」
「了解」
ロザイアは問答無用で高速往復ビンタをしていたが自分の背後にシアレたちが居ることに気付いてこう言った。
『あら…お久し振りです。シアレ、愚かな娘の為に式場やらドレスやら料理を用意してくれてありがとう』
「感謝される筋合いは無いわ。親友の娘なのだから当たり前よ」
『ビワト君に関して愚かな娘が申し訳ありません』
「気にしてないわ。ビワトには相応しい娘が来てくださると思って居ますから。タズルの事を愚かな娘と呼ばないで上げて」
『いいえ、それだけの事をしたのだから愚かな娘で良いのよ』
「ロザイア。タズルちゃんをよく見なさい」
チラッとロザイアは自らが胸ぐらを掴んでいる娘を見た。
「……これだけしたら愚かな娘も反省するかしら?」
「もはや反省どころか気絶してるわよ」
「……それよりロザイアよ」
『先生どうしましたか?』
「お前…なかなかやるな!」
『あら、先生に誉めていただけるなんて…』
「オレはてっきり天に召されたと思ったぞ!まさかチョーカーに魔力を注ぎ込み潜んで居たとは!」
「誉めてどうするんだい!普通は止めるでしょうに!」
「いやー…すまん」
『平手打ちはもうしません。その代わり少しの間【切り結びの呪い】を掛けさせて貰います』
「ロザイア、あなた…娘に対して流石にそれは酷くない?」
『酷くはありません、それ相応の事をしましたから』
「それはあまりに強い呪い…」
『心配には及びませんよ。【成人したての結婚】だと条件を達しないと子供が出来ない【不幸を避ける呪い】が神父より掛けられますので孫に対して心配はしてません。小さき頃の口約束だったとしても…約束をしたのです。ちゃんとそこはビワト君から来るであろう告白が来るまで我慢して無理だと断り昔した約束を破棄して欲しいと本人に言って欲しかったのです』
「ビワトの事だから時間が立てば気にしないと思うのだけど…」
『そうね。シアレとフジトラ様の息子ですから時間が経てば遺恨として残さないでしょうね。そろそろ時間なので【切り結びの呪い】を掛けておいとまさせて貰います』
それだけ言うとロザイアはタズルに【切り結びの呪い】を掛けて光となって今度こそ天に召された。
その後、目覚めたトレニアは義理の母であるロザイアに顔と腹と股間にそれぞれかなりのダメージを与えられ女性恐怖症に陥り新婚なのに別々の部屋で暮らしているそう。タズルは淫魔の呪いが解けて新たに呪われたけど通常の生活に慣れてきて普通の生活に戻りつつあると書いてあった。
そしてその光景を水晶でずっと覗いていたアザレアが腹を抱えて爆笑していたそうだが弟の生活を覗くなとエンロウに説教を受けたそうである。
「へぇ……それで【切り結びの呪い】はどんなの呪いなの?」
「【切り結びの呪い】は本人ではなく【次の世代】に影響がくる少々厄介な呪いだよ」
「えっ…名称からしてそこまで悪くない物だと…」
「そう思うでしょ?【切り結びの呪い】は呪われた人物の子供に効果がでてね。本来なら結ばれるはずだった人と結ばれなくなる呪いで長子だけに出ることなく子供全員に出るんだ」
「うわっ…それってヤバくない?」
「だからルウカたちもはぐらかしてタズルとトレニアに伝えているだろうね。呪われたからと言って普通に繋がる縁は切られることないから心配はないけど」
「【切り結びの呪い】は解けないの?」
「んー…この種の呪いはかなり根深いから物好きな神父か巫女さんじゃないとやらないね。まぁロザイアの事だ呪いに関しては10年くらいで解けるんじゃないか?」
「……ロザイアさん」
「でも体に異常とかは出ないから、もしかしたら本人たちが気付くまでは【切り結びの呪い】を利用して普通の生活に戻れるよう指導してるかもね」
「……誰1人として言わないのね」
「ロザイアが仕掛けた呪いであって強力だからね。ルヴェルは何かしに行く予定はないのかい?」
「特にないわ。まだ皆が暮らしている島に戻らないの?」
「ビワトとルヴェルが帰りたいと言ったら帰ろうと思っている」
「だとしたらまだ先になりそうね…ビワトは新しい島を見るたび目をキラキラさせてるし」
「こちらとしてはこの世界の全体の地図か作れるからありがたいけどね」