水鏡の覗き見
「……登りかなりキツくね?」
「スロープもね」
「二人とも遅いわよ」
「さすがルヴェルだよ…有り余る体力で余裕だ」
「ほらほら!」
息を切らしながら長い階段やスロープを登ること30分ようやく島の中心に着いた……崖登りの方がオレとしては楽だったか?
トレニアはエンロウさんに回収され宙に浮かべながら運んでいるぞ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【???島】
《???島の中心》
「……何これ」
「とてつもないほどの木材を加工しまくっている映像ね」
「シルト街の人々ってあんなんなの?」
「いつもの光景よ」
「そうだなオレたちが小さい頃から見ている景色だな」
シルトの工務店の親方は「何か普段加工してる木より硬いな」と言いつつもとてつもない程硬い木をバターを切るように加工しまくっている。
「コレならかなり丈夫な家が出来るわね」
「どんな作りにするんだ?」
「どこから攻められても大丈夫な間取りにしようと思ってる。確か…【地球】にある【スイス】と言う国で作られている奴だっけか?」
「あの間取り図は凄いのよね。確か…300年の歴史がある間取りなのよね?」
「あら、ビワト達お帰りなさい。どうでした?」
「散策する前にルウカの奴がこの先何もないなと言って森を平原にしちゃったよ」
「あらあら…先生は相変わらずですね」
「北側で取れた木材も加工して置いてくれるか」
「あいよ!」
「斬とだけ言ってこのクソ硬い木を一撃で刈ってたよ」
「マジか。俺でも3回切れ込み入れないと伐れなかったのに」
「それでも3回か」
「加工するの手伝うぞ。そろそろ夕飯の時間で女性陣が料理を始めらだろうからな」
「えっもうそんな時間なのか?昼間みたいだが」
「もしかしたらこの世界には夜の概念がないのかもな。その辺もサンゴと一緒に調べるぞ」
「サンゴ先生、そういえば時間の流れはどうなってるんだ?」
「時間の流れは元の世界と同じ時間の流れだよ」
「そうか」
「元の世界の人々はそれなりにやって行けるだろうさ。食事を終えたら皆で【水鏡の覗き見】を行おうか。そうすれば元の世界の様子を見れるだろうからね」
「その手があったな」
「でもこの辺りに泉はありませんよ?」
「それなら汚れていないとても透き通っている海が近くにあるじゃないか」
「あっそうですね」
「それじゃ食事が出来るまで男たちは木材の加工をするぞ。かなりの量があるからな」
木材の量を見て親方と父さん以外の男たちの目が死んでいる…。
「子供たちは危ないから料理の手伝いを頼むネ」
「タオ…お前はこちら側だからな?」
「それくらいわかってるネ。怪我をする人間が多いかも知れないから残るヨ。加工の手伝いはしないが加工した木材を運ぶのは手伝ってやるヨ」
「加工に関しては俺とギルシトンとルトラ先生でやる」
「お前たちまだ成人していない組は危ないからやらせないからな」
「それが一番でしょうね…出来る気が全くありません」
「他の野郎たちは加工した木材を加工した木材のまとめ場所に運んで貰うからな」
「丸太運べる怪力持ってねぇよ…」と誰かが言った。
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【???島】
《???の浜辺》
「準備は良いかい?」
「大丈夫れす…」
「トレニアは鼻血止まってないのにか?」
トレニアはルヴェルの母であるルーギュストの人に変化した姿を見て興奮し鼻血を出していた。トレニアが残念な儚げ美丈夫だとは思わなかった。そもそもそんな風に見えなかったが…。
「大丈夫だそうだ。サニカ先生」
「………では始めるよ?」
「了解」
「おう、いつでも良いぞ」
サンゴの体から魔力が伸び人から人へ魔力が伝わり皆で手を繋ぎ円を作るとその円の中に元の世界の映像が流れ始めた。
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【数ある始まりの世界の1つエクスエレニクス】
《元聖域だった場所で現在は魔神の神殿》
「魔神様!ご無事ですか!」
『…騒ぐな』
「申し訳ありません…」
『お前だけで【古の老害】に勝てると思ってない』
「……その通りでございます」
クスクス…と【アノヴァルテス】の後ろからひとりの少女が現れた。
「相変わらず情けないわね。生前は女に溺れて…股間を潰されラディオルエンド様の糧になった魔神に殺された癖にね」
「!…貴様になにが解る!」
「お前は今回もガキでも作って大人しくしてろよ」
「きっ貴様!」
「…ヤるか?あぁ?」
「お前たち大人しくしろよ」
「あ゛?」
「貴様には関係ない!」
『静かにしろ…さもなくばこの場所から消えろ』
「!…もっ申し訳ありません」
「ちっ…お前のせいで怒られちまった」
「!」
「静かにせんか……ラディオルエンド様の御前だ。控えよ」
このメンバーの中でも最年長の男のプレッシャーを浴びて今度こそ大人しくなった。
『ターリット戻ったか』
「はい、我らが神よ。魔国、獣王国など大国の制圧は完璧に完了しました…ですが魔王や獣王など国のトップが側近と共にどこかに逃げられました…申し訳ありません。ラディオルエンド様、罰を与えるなら私めにお与え下さい」
『土地を制圧出来たならそれだけで良い。魔王などはどうせすぐ見つかる捨て置け』
「はっ」
『空から落ちてきた巨大な島から受けた【極大光魔法】の影響がまだ暫く我の体を蝕むであろうが着実にこの世界は我の力に染まりつつある』
「ラディオルエンド様1つ宜しいでしょうか?」
「ラディオルエンド様の御言葉を遮るか貴様」
『話すが良い。ラシェット』
「ラディオルエンド様の慈悲に感謝します。【古の老害】たちはどこに消えたのでしょうか?」
『……奴らはこの世界から忽然と姿を消した。それも外側の世界でも【地球】とやらにも奴等を感じん…だかいずれ奴らの居所を見つけ我が直接食らってやる』
「あとラディオルエンド様は【地球】に攻め要らないのですか?」
場の空気が凍る感じがした。
「貴様!それの事は!」
『ターリット、抑えよ。ここまで事を運べた褒美に話してやる』
「!…くっ…了解しました」
『【地球】に手を出したら我らは【外側に居る化け物】どもに善良な者が居ようと塵も残ら無いように総攻撃を受け【この世界】ごと消されるだろう』
「なっ!その様な者が居るのですか!」
『数ある世界があると言うことはそれだけの文明や魔術や技術が存在すると言うことだ。我々もこの地で力を付けなければ奴等と渡り合えないだろう。それに今この時この話を【外側の化け物】たちは【異世界の魔術】を使って覗いているであろう』
「「「「「「!」」」」」」
『この世界の【古の老害】たちが我々の話を異世界の化け物たちにしているだろうからな』
この世界から消えても尚も邪魔をするか!本当に憎らしい!と6人の使徒は心の底で一致した。
『【外側の化け物】どもは既に攻められても良いように常に準備して居るだろうな』
「では異世界の侵略は…我々の根本はどうなさるお見積で?」
『この世界のどこかにある【亜竜】が【至竜】に至った場所を見つけ出し力を蓄えこの世界の概念を食らってからだろう』
「それだといつか攻撃されませんか?」
『それは出来ぬ。力を持つ世界については始まりからある【理】がある限り【その世界】に攻めいられなければ抵抗出来ないのだ。だからこの世界は何度も外側から攻められ外側から来た神を【魔神】と呼び何度も排除しているのだろう』
「ラディオルエンド様、我々の話に御言葉をいただき感謝します」
それだけ言って6人は深く感謝の意を示した。そして――
『もうこの世界に巣食っていた者は居ない、この世界に居る生き残っている人類に宣言せよ。我を崇めよと!』
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【???島】
《???の海辺》
「……だそうだ」
「あの様子なら直ぐに襲撃しなくても大丈夫そうだね」
「今日からやろうとしてたのですか…」
「魔神の奴ピンピンしてたな」
「そうかい?魔神の足ガクガクしてたけど」
「えっ」
「結構なダメージ入ってそうだったわ」
「そこまで見てなかったな」
「さて今日はどうしますか?」
「どうするとは?」
「今日は宿に戻りもう休みますか?」
「こんなに明るくても夜なんだっけか」
「今日はもう各自それぞれの時間を過ごしましょうか」
「皆がそれぞれが朝から自由時間が過ごせるようになるにはそれぞれの家が完成したらだね」
「ここに居る連中は自身で出来るからな」
「魚についてはどうなってる先生」
「それなら放流は少し延期したよ。水質は問題なかったけど明日海に潜って近くの海を散策してみようと思ってる」
オレもサンゴたちと潜ろうかな。
「なら島の改造はワシらに任せてください!」
「街の監修は私が残るのでご安心ください」
「エンロウ1人で止められるかい?」
「わたくしもエンロウと共に心を鬼にして止めますのでご安心くださいませ」
「俺も今回は島に残って俺も家作り手伝うぞ」
「「「「えっ」」」」と父さん含む建築組の人たちが言った。
「当たり前だろ。俺とシアレとエンロウが残れば下手なことはしないだろう」
「逆に心配なんだか…もしヤバかったら全て破壊して1から作り直させるからね?」
「心得てます」
海の水をかき分けながら宿に戻って自由時間を過ごしだした。そうしている内に眠くなり部屋に入ってオレも休んだ。