何か来てる!と重い話
【1年B組の畑】
「あ、ビワト君たち戻ってきた」
「僕たちが最後ですか?」
「そうですの」
「先生はまだ来てないのか」
「もしかして罠に掛かってないかな?って相談していた所なんだぜ」
「あっ」
「罠に関しては私たちクラスメイトを除く者を捕まえろって仕込んだから…少し不安なのよね」
「あぁ~」
「…先生のこと考えてなかったわね」
「感知魔法を使って辺りを感知してみては?」
「やるか」
「おう」
オレとエクルと感知魔法が使えるクラスメイトのヤライと帰還組のメルナとサティの5人で畑の中心で目を瞑り円陣を手と手を合わせて感知を始めた。
「どう?誰か近付いてきてる?」
「…なんか変な動きをしているのがいるわね」
「それぞれの方向から来てるぜ」
「しかも罠に掛かってるのも変な動きをしてますぅ」
「先生の魔力は感じないぞ」
「先生はまだ校舎に居るみたいだな」
「こちらに向かって来ている人たちは一体誰なんです?」
「敵の強さを測るまでは感知出来ないからな」
「魔力の違いで人物を特定出来るだけでも凄いわよ」
「……学園の生徒でもなさそうだよな」
「だからと言ってオカマたちでもないな」
「こっちに近付いて来てるですぅ!」
「どうしよう!」
プチパニックになり始めている所に冷静なトレニアは言った。
「…ここの土の中に空間を作って隠れてみますか?」
「でも空気とか…」
「この【大気苔】と【光苔】を使ってやりましょう…僕ひとりではまだ瞬時に作れませんが」
「オレも協力するよ、土の中に空間を作る訓練を叔母から受けてるからな。実戦でも使ったし…」
「実戦?」
「ではさっさと作って隠れてしまいましょう」
速急で空間魔法を使い土の中にけっこうな広さの空間を作り崩れないように土を固め【大気苔】と【光苔】と撒いてシナエとクラスメイトひとりであるハーフエルフのシェルファが植物を急成長させる精霊魔法を使い成長させて常にキレイな空気を作られるようにした。
オレとエクルでクラスメイト14人を速急で作った空間に転移させた。
「結構な魔力を使うな」
「慣れてないとそうなるよ」
「やっぱりビワト君は余裕だね」
「どうしてこんなにテキパキ出来るのかしら?」
「オレの家の家訓で10歳になると過激な戦いの真ん中に放置させられるんだ」
「えっ」
「そこで嫌でも叩き上げられるんだよ。早くそう言った物を上手に作らないと死にかけるし、素早く的確に作らないと戦場で数多の味方の兵士さんが死ぬからな…嫌でも作れるようになるのと魔力の使い方も上手くなる」
「だからお前は魔力の使い方が上手いのか」
「使いすぎたりすると倒れたりして戦場では足手まといになるからな」
「うわ…」
「名門の家には家でいろいろあるのね…」
「羨ましいな~って思ってたけど…苦労もあるんだ…」
「やることがえげつないな、我も姉もそんなの事はさせられてないぞ」
「だからこそ【アシュクラフト本家】の実力は世代を越えても能力は健在ですと宣伝するんだ…父の時はもっとヤバい場所に捩じ込まれたらしいからな」
「あぁ…お爺様からその話は聞いてるぞ…魔族たちですら引くぐらいの争いだったらしいな」
「フジトラ様が活躍した戦いね」
今でも語られる23年前の大悲劇【煉獄三国の戦い】と呼ばれる地獄の戦いで、ひとりではどうやってもヤバいだろうと言うことで付き添いでとある街のギルドマスターが同行者として付き添い、父はかなり活躍して【剛剣の紺子獅】と言うふたつの名をそのギルドマスターによって付けられたと言われていた。
その戦いで三国とも同時に滅び数多の人たちの命を奪った戦犯として3つの国の王族と貴族たちは3つの国の王族の赤ん坊を残し一族郎党斬首刑になったと聞いてる。
「3つの国が合った場所は確か亡くなった人たちの怨念とかで不毛の土地になってるわよね」
「【シェイルーン教会】が毎年大規模な慰霊祭やってるよね…教皇様が自ら聖魔法を使うので有名だよね」
「そうそう!」
「広大な土地が不毛の土地だからね~」
「赤ん坊だったそれぞれの国の最後の王族の生き残りの3人も【シェイルーン教会】に引き取られて親たちがやったことの教えられて懺悔させられてるらしいから」
「それに血を残せないように処置されたらしいね」
「そうだな…」
「あっ!」
「どうしたの、サティ?」
「さっきからずっと感知してたんだけど」
「今でもやってたのね…」
「感知してた人たちがちょうど今わたくしたちの頭上に居るわよ」
「マジ?」
「早いわね」
「何か畑の上をぐるぐる回ってる?」
「何それ怖っ」
「ビワト、お前だったら畑の魔力に自分の魔力を同化させて調べられるんじゃないか?」
「出来るけど…緻密な魔力操作か…久し振りだyo」
「最後の語尾が変なんですぅ」
「何か不安になるわ」
地上の様子を見てみた。
【1年B組の畑】
「今さっきまでここにガキどもが居たのに…何処に行ったんだ?」
「それにこの辺に仕掛けられていた罠もなかなかの代物だったぞ」
「モーリン・タリフェルスが自由に動けない今がチャンスだというのに」
「まて!」
「どうした!」
「魔力を使った経緯があるぞ…それにこの畑は魔力畑だ」
「まだ魔力畑が有るのか!」
「この学園は本当に末恐ろしいな」
「まさか俺たちに気付いたガキどもは逃げやがったか?」
「だとしたら今年は豊作だぞ…」
「もしかして土の中に空間を作って逃げたか?」
(!…まさか気付いたか?)
「それは有り得んだろう」
「どうしてそんな事が言える」
「土の中に空間を作るのは訓練や実戦を経験していなければ思い付かん、それに入学したてのガキが出来るわけがねぇ」
「どこの学園であろうと挙手制で実戦に出されるのは四年生からだしな」
「それに【雷激のジレン】がこちらに来ているぞ」
「なに!」
「このクラスはジレンが担当しているのか!」
「…次の場所に行くぞ!」
(そろそろ意識を戻してもいいな…)
土の中に居る本体に意識を戻した。
「どうだった、ビワト」
「人拐いだな」
「ひっ!」
「どどどどうしてひっ人拐いが!」
「学園長が自由に動けないのが理由だそうだ」
「どうして学園に侵入したの?」
「あぅ…」
「人拐いたちいなくなったなら外にでないの?」
「少し待ってからな」
「どうしてです?」
「ガキだから戻って来るだろうと待ち伏せされてる可能性が有るからだ」
「そっか」
「Zzzzz…」
「寝てるのが1名居るぜ」
「どこでも寝れるのが特技です~って言いそうだな」
「Zzzzz」
「こちらにも寝てるのがもうひとり居るわよ」
「良く寝られるよな…きっ緊張感が取れない…」
「お前みたいなのが普通の反応だよ」
雑談をしながらジレン先生が来るまで待った。