旅立ちの日
「おはようばあちゃん」
「おはようティルクス」
「………ん?」
ばあちゃんは呑気にお茶を飲んでいたが、窓の外を見ると村が破壊されじいちゃんとカリーナ姉さんの特製ゴーレムが破壊されていた。
「どうしてこんな風景に!」
「おはようございますサニカ様」
「カリスも早いね」
「やはりこうなりましたか」
「ばあちゃんと村長!どうして冷静なの!」
「旅立ちの日を迎える前日に必ず魔神教が全勢力を引き連れて村を襲撃してくるんだ」
「今回も派手にやられたのう」
「マグナじいちゃんも冷静」
「慣れって怖いのう…テムルやカリーナ、リシアやトルヤ…この村を旅立つ若者を見守ると必ずこうなるからのう」
「防衛しないの?」
「防衛しないぞティルクス」
「クイントさん」
「一方的にこっちが勝っちゃうからな」
「そうするとな化け物どもを滅ぼそうって、他の国を巻き込んでの争いになるんだよ」
「争いを避ける為に村が壊れても何度でも直せば良いから、手を出さないんだ」
「そう言うことだな」
前回のオレが旅立つ前も実際はこう言うことが会ったんだな…確かに変だったな最初の旅立ちの場所が山じゃなくて海辺だったからな。
「外に出ても平気なの?」
「いや、ダメだな…この村の所々に伏兵が居るし、空気と水が汚染されてるから無理だ」
「僕たちの旅立ちどうなるの?」
「ミストル起きたのか」
「心配ないわよ、ミストル」
「カリーナ姉さんとリシア姉さ」
「朝ごはん出来たわよ~」
「…シカナさんもいつも通りだ」
「もう、シカナさんたら…何を言おうとしたか忘れちゃたわ」
「別に良いじゃないかい!どんなに時間が経とうと状況は変わらないんだから…冷めない内に食べようじゃない!」
「シカナさらに腕を上げたな!まいう~」
「じいちゃんいつの間に…てか朝食皆より先に食べてるし」
起きた順に朝食を取り旅立ちの場所を何処にするか話し合っていた。
「扉を世界樹ユグドラシルの麓にある私の家に設定してと…」
「世界樹だって?」
ばあちゃんの発言は信じられないほど恐ろしい台詞だ…世界樹ユグドラシルが生えている場所は聖域と化してしかも世界樹ユグドラシルに選ばれないと入れない領域である…エンシェントドラゴンですら侵入出来ない場所である。
「ばあちゃん世界樹ユグドラシルに選ばれたの?」
「昔の知…嫌なことが合ったら癒されに来て良いよって言ってくれたんだよ」
「ティルクスは何かしってるの?」
「あぁ、大昔から生えている大樹で世界を見守っている…そこには古の種族のひとつである樹人が住んでる場所らしい」
オレも入った事はない…と言うより入れなかったな…仲間を置いて来れば入っても良いよって言われたな。
「今のティルクスとミストルなら入れるだろう」
「あそこで花見すると最高なのよね」
「あそこの綺麗なピンク色の花はなかなか見れるもんじゃないものね」
「花見酒僕もしたいなぁ~」
「ミストルとティルクスは後二年後な」
「わかってるよ」
「その前に一度見聞広めないと」
「村はどうするの?」
「少し経ったらまた直すよ」
「それまではサニカ様とルトラウス様の先祖が作った空の隠れ里に身を寄せてるわよ」
「隠れ里?」
「そっかまだミストルとティルクスは知らないんだっけ」
隠れ里は前回の時耳にした時があったけど世界にはなん十ヶ所とあるらしいが…ばあちゃんたちの先祖が作ったのか…。
「お前たちが旅をしているときに麓の村人の証であるアイテムを渡されるからそれを使うとサニカ様とルトラウス様の先祖が作った各地にある隠れ里に入れるんだよ」
「町で泊まるより隠れ里で休んだ方が危なくないぞ」
「タダで泊まれるし、この麓の村で育った人たちが暮らしてる場合もあるから情報もくれるよ」
「隠れ里を目安に旅をすると良い」
「人が住んでない隠れ里もあるし、旅好きなカリーナの親父さんとか俺のお袋とも鉢合わせするかもな」
「カリーナ姉さんのお父さん旅してんの?」
「テムル兄さんのお母さんも旅してるんだ…」
「えぇ…ひとつの場所に留まるのが嫌らしくてね、旅先で見つけた薬草とかを送ってくれるわ」
「世界中の魚を釣って見せると店をほったらかして旅してるぜ…だからオレが店番してるんだけどな」
「他にも居るのそういう人」
「マグナ爺さんの娘のマリーナさんもそうだよな」
「珍しい鉱石見つけたい!とか行って飛び出した娘か…どこをほっつき歩いているんだか」
「クイントさん所のトルヤもそうだな」
「そういやぁ…倅の奴は珍しい木を取って来る!って行ったきりだな」
「無事なの?」
「ルトラウス様が作った村人の証で生存確認出来るからそこは心配ないな」
「準備出来たから行くよ」
「またねティルクス、ミストル」
「何かあったら連絡するのよ?」
「楽しんでこい」
「ほっほっほ…ワシはただのんびり過ごして待つのみじゃ」
「リュックにアタシ特製のサンドイッチ入れといたからお食べよ」
「ワタシはリュックに薬草詰めといたからね」
「辛くなったらいつでも戻ってこい」
他の村人とも挨拶してからじいちゃんたちと一緒に旅立ちの場所に向かった。
「相変わらず空気が最高なのじゃ」
「はぁ~…とても大きなお花畑!……風が花びらを運んでる」
「空気が澄んで安らぐ」
「この花畑から清らかな魔力を感じる」
「最高の旅立ち日和だね」
オレはミストルと一緒にじいちゃんたちに旅立ちの言葉と誓いを立てた。
「「麓の村シルトフォールに生まれ、育ち、旅立つ時を迎え…昔から行われてきたこの風習に従い見聞を広め、世界の魔力の流れを観測しに最果ての地【リバンティエル】へ向かいます。」」
「…気を付けて行ってくるのじゃぞ?」
「お兄ちゃんとティルクスお兄ちゃん…気を付けて行ってきてね」
「何かあったら、戻ってこいよ」
「…見守ってるからねティルクス、ミストル良い旅路を」
「お前達なら楽勝だ……行ってこい」
じいちゃんとばあちゃん、イシェーラさんとアルーヴさんとシェリナに見送られながらオレはラセスに乗り、ミストルはセルクシアに乗って世界樹の麓から最果ての地【リバンティエル】に向かって進み始めた。