終わりと始まり
「ここでの生活もいたに付いてきたね」
「当たり前です。ばあ様」
「トウリ…俺に厳しくないか?」
「じい様が手加減をしないからでしょう?」
「オレもじいちゃんが悪いとおもうぞ?」
イベリスが天に召された日から半年後に村の皆で話し合いをして麓の村はもう必要ないと言うことになった。
と言うよりは村の住人たちは外の世界での生活を望んでいた。
じいちゃんとばあちゃんが溜めに溜め込んだ金額をそれぞれの家庭に配り外の生活での当面の生活の面を心配なく過ごせるようにと。
世界中にバラバラに散った村の住人たちはそれぞれの場所で上手くやっていると聞く…噂でな。
「ドラゴンを一撃で仕留めるのは流石にな…少しは演技しろ」
「近くの村の人たち引いてましたよ?」
「いやー…調子に乗ってたからな」
「まぁ…あそこの村はこれでドラゴンに悩まされる事はないよな…多分…」
『対策としてボクの風魔法仕掛けておいたから安心しなよ』
「…トウリ行ってくるんだろ?」
「面倒ですが…ワイズエルス学園に行ってきますよ」
「ばあちゃんのお陰で飛び級かましたけどな」
「父さんだってそうだったでしょう?資料残ってますよ学園に」
「シオンとかにも宜しくな」
「えぇ…どうせ絡んできますよ」
『では、トウリと共に行って参りますね』
「ペチュニア頼んだぞ」
『はい』
ペチュニアはセルクシアとペンタスの娘でトウリの従魔となったピンク色のドラゴンである。
『我でも良いんだぞ?』
「ラセスは僕と父さんと一緒に3年間旅したでしょう」
『たまには…たまには!』
「ペチュニアの方が安全に登校出来るので良いです…ラセスは牝馬を見つけると直ぐにナンパするでしょうに」
「ラセス現地妻を作るな…お前さんの子供たちから父をどうにかしろって苦情が来るのだが」
『本能には逆らえないんだが』
『押さえなさいよアホ…母様に言いつけるわよ?』
『セルクシアの説教は長いよ~』
『ルノカ先輩もやられた口ですな…主張するの止めときます』
『それで良いのよ…ラセスに乗って登下校すると黄金の馬に乗った王子様って言われて女子がキャーキャーうるさいのよ…牽制するの大変なんだから』
「ペチュニアのお陰で助かってますよ」
『当たり前よ!あんな小娘どもに負けてたまるもんですか!』
「ほらほら…遅刻する前に行きなさいな」
「行ってきます」
トウリはペチュニアに乗ってエイスワイズ学園に向かった。
「学園には教師としてカルミアと過保護のペンタスが居るから変なのは寄って来ないだろ」
「俺は研究に向かうかな」
「ばあちゃん」
「そうだね…最後のエンシェントドラゴンを外の世界に送り返すとするかね」
オレは今ばあちゃんと共に世界を飛び回る忙しい生活を送っていた。魔神の脅威が無くなったことでエンシェントドラゴンたちが覇権争いを始めようとしたのでばあちゃんの秘技【強制送還】を使い元の世界に送り返している。
「お仕置きは向こうの始祖竜に任せれば良いからね」
「めんどくさそうにしてるけどな」
「向こうに帰ったら帰ったらで俺の方が偉いと周囲にケンカ売ってるって聞くからね」
「うわ…懲りないんだな」
「今日は最後の竜を送り返すよ」
「あぁ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
??年後…
「父さんはホントに若いままですね…」
「妖精の血が出てるからな…トウリ苦しまずに逝けるなら逝け」
「……そうですが…父より先に逝くなど」
「その辺はじいちゃんたちに取り計らってもらってんだ、気にするな」
「父さんはもう自由に生きてくださいね…」
「…子孫はオレが生きている時に馬鹿をやったらオレに任せろ…トウリは何も考えずに新しい旅路に行け。トウリ、オレとイベリスの子供として生まれてきてくれてありがとう」
「父さん……また会いましょう」
トウリも逝っちまった…長生きってなんか…な。
「………………」
「ティルクス…」
「じいさんもばあちゃんたちもこれを何度も経験してるんだよな」
「それでも私たちはこの役目を引き受けたからね」
「救いは有るのか?」
「救いは今のところないな…観測者の役目を引き継ぎを見付けないと死ねないからな…はっはは!」
「見付けられないんだな」
「この役目を引き継げる子と出会えるのはまだまだ先だよ」
「でも居るのか」
「その辺は出会った時にかな…素質はあっても性格がとか問題があると引き継げないから」
「ティルクスはこれからどうしたいんだ?」
「オレはもう山奥で隠居するよ…ばあちゃんに習った水晶から覗く術で子孫を見守ることにするよ、テムル達と交流しながらな」
「そうか…何かあれば俺たちの所に来い」
「そうするよ…曾孫に宜しく言うのは止めとく…孫に否定された事が有ったから」
「見た目年齢が曾孫と一緒だからな」
「じいちゃんたちもいままでありがとう…イベリスすまんな…まだやることが出てきちまった」
「その時まで元気でね」
「今はのんびりと過ごせ…時が来るまでな」
「あぁ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さらに年月が流れ……
「あんたが俺の先祖か!」
「そうだ…ばあちゃんたちの手を煩わせる訳には行かないからな…子孫が馬鹿をすれば出て来るに決まっているだろう」
オレの目の前に居るのはオレの最後の子孫だ…時空を歪める事件を引き起し外の者を呼び込もうとした…なんだかなーなんでオレの子孫が仕出かすかなー。
「お前たちがしたことの責任を取りに来ただけだ」
「まさか…俺のご先祖様が最後の生き残りに引導を渡しに来るなんて思わなかったよ」
「時空を歪め外の者を呼ぶのは【時空維持委員会】が禁止しているはずだが?」
「あんな古臭い物にすがっている者にはわからないだろう」
「大昔に起きた事を繰り返させる訳には行かないからな」
「何年前の事を言っているんだ!」
「そうさな…5000年前の出来事だろうか?」
「…老害は消えろ!」
「【アクアプリズン】」
「なっなんだと無詠唱だと!ここから出せ!」
水の檻の中で子孫が騒いでいるが無視した。
「じいちゃんの言ってた通りに魔法レベルかなり下がってんな」
「ティルクス良くやったな」
「ホントに良かったのか?」
「白理がティルクスたちの最後の子孫は捕まえても良いと言ってくれたからね」
「30年異界の牢獄行きだけどな」
「出るときは50代か…まぁやり直せるだろさ」
「ははっ…じいちゃん、ばあちゃん頼みたい事があるんだが」
「良いよ、その先は言わなくて見えてたから」
「これでティルクス世代の子供たちは居なくなるのか…寂しくなるなサニカ」
「こればかりは止められないよ…もう満足したかい?」
「あぁ…子孫が馬鹿をするのは予知夢で有ったのをオレの手で止められたんだ。
本来ならトウリの天命尽きたら逝こうとしたが子孫の事で長生きしたからな…それにばあちゃんとじいちゃんに見守られて逝けるんだそれで充分だよ」
「そうか…ご苦労だったなティルクス」
「さぁ行きなさいな!」
「「次の人生でまた会おう、ティルクスの新たな旅に祝福を!」」
穏やかに微笑んでいるじいちゃんとばあちゃんの表情と言葉を聞き意識が遠のいた。