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外に出ると空はもう茜色に染まっていた。
金貨353枚を持ったグレムは街に帰った後、すぐに奴隷商へと向かった。
その道中にグレムは黒い髪をした藍色の瞳の女の奴隷に首輪をつけて引っ張っていっている小太りの男の貴族を見た。
それを見たグレムはまさか、と思い奴隷商へと走った。
全力疾走で奴隷商まできたため、息を切らしながら扉を開けて中に入ると、
レイスが此方へと歩いてきた。
「この前俺が見たレミという奴隷はどうした。」
とグレムが聞くと、
「つい先程に売れてしまいました。」
と言われた。
それを聞いたグレムはふらふらと店の外に出て行き、少し離れた所で膝をつく様にして倒れ込んだ。
意識が少し遠のいて、異常に視界が狭くなり、世界から色が消えて行くような感覚に襲われながらグレムの頭の中では、
何故俺は売れてしまうと言う可能性があるという事を考えていなかったのか。
何故早く始末せずに無駄な事をしていたのか。
無駄な事をしていなければあいつに出会わなくても良かったのかもしれないのに。
と、今更どうする事も出来ないような事がぐるぐると回っていた。
さっき見た小太りの男。あれは前々から奴隷をいたぶって恥辱を与え切ってから殺す趣味があると言われているグリムンド侯爵家の長男、
リブル・グリムンド本人だと思う。
伯爵家の次男で煙たがられていたライル・ランドルドとは違い、正真正銘の貴族である男だ。
それに手を出そうとなるとタダでは済まないだろう。
そこまで考えてからグレムは1つ思った。
タダでは済まない?それがどうしたのだろうか。
相手の戦力が未知数で攻めるのが怖い?成功したとしても後に狙われ続けてしまう?
それが、どうした。
今まで欲しいものを盗ってきたのでは無かったのか。
簡単に諦めれる物なのか。
リスクが怖いから諦めるのか。
グレムは一旦深呼吸した。
考えろ、今ここで結論を出せ。目を瞑りながら自分にそう叱咤しながらグレムは考え続けた。
少し考えた時にはもう結論は出ていた。
それと同時にグレムはその貴族の家のある王都の南側へと向かい始めた。
今までのどんな時よりも速く。今までのどんな時よりも息を切らしながら。
ただただ目的地へと辿り着く為だけに走った。
6分ぐらい走ったぐらいだろうか。
それくらい全力を超えて疾走した頃にはグレムはグリムンド侯爵家の前に立っていた。
乱れた息を整えてから、グレムは侯爵家へと侵入しようと
1分ぐらい深呼吸した辺りでグレムの体力は回復していた。
最後に深く深呼吸をし、グレムはグリムンド侯爵家への侵入を始めた。
鉄格子の大きな門をこえていかなければ侯爵家への侵入は出来ないので、
先ずは門の前に立っている重装備をしている衛兵2人を始末する事にした。
グレムが歩いて近づいて行くと、衛兵が持っている槍を交差させて
「何用だ。」
と片方の衛兵が言ったのを見て、
「味方がうまく侵入したみたいだ。」
とわざと聞こえるように言って門の向こうに手を振る様にし、
衛兵の意識が少しグレムから外れた瞬間、グレムは一瞬で短剣を取り出し、距離を詰め衛兵2人の首を飛ばした。
衛兵を片付けた後は門を無視して、壁を登り、屋敷へと一直線に向かった。
屋敷へと向かう途中には特に見回りの兵などがおらず、本当に貴族の家なのかと疑う位に警備が甘かった。
道中に罠がないか、監視の目がないかを警戒していたが、特に罠も見つかる事もなく屋敷に辿り着くことが出来た。
いざ入るとなった時に、どこから入ろうか少し見渡して見たら、
ちょうど屋敷の左の一階部分の窓で開いてる所があったので、そこから侵入していく事にした。
開いていた窓から入った先には食事を作る厨房があった。
とにかく、奴隷はどこかに収容されるか、主人の部屋で何かされているかしかないので他の部屋を見回していく事にした。
厨房を出ると、扉が規則的に並んでいる廊下が見えたので、
とりあえず1つずつ部屋を見て回る事にした。
扉には鍵が掛かっていたので、破壊して部屋へと侵入した。
部屋に入ると箪笥やランプなどの物が置いてある光景が広がり、
ベッドには人が寝ていた。
部屋を見渡すと壁にはメイド服がかけてあったので、
この屋敷に仕えているメイドであると分かった。
関係のない人を殺すと言うのも少し罪悪感を感じるグレムだったが、短剣を振るい
首を落とした。
その様にして部屋を見て回ったが、特に位の高い人は見つからず、
従者しか見当たらなかったので、別の場所を見て回る事にした。
同じ一階の右部分も調べたが、結果は同じだった。
こうしている間にもあの奴隷が壊されているかもしれないと思い、
グレムは焦燥感を感じていた。
屋敷の左部分から右部分へ移動する際に見た、
屋敷正面の扉から入って真っ直ぐ進んだ場所にある二股に分かれた階段。
右と左の廊下へと通じる扉があったエントランスへと出たグレムは、
二階に上がる事にした。




