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グレムは岩窟の中でじっと息を殺しながらまだかまだかとライルがくる瞬間を待ちわびていた。
そうして息を殺していると段々と足音が近づいてくるのが分かった。
よく耳をすませると足音は8〜10位でまずライル・ランドルドで間違いないだろうと思い、
ローブから少し目を出して確認した。
あちら側は松明をつけているので、ライルの煌びやかな防具がきらきらと光っていたので物凄く確認し易かった。
ライル本人であると言うことを確認できたところで少し周りの顔ぶれを見てみると、1人だけ前見た時には明らかにいなかった人物がいた。
筋肉はついているが、そこまで脅威になり得ないであろう。と言うのがグレムの考えだが、
集団で、となると少しばかりきついものがあるので、ある程度最初の奇襲では周りの護衛達の数を減らした方が良いと判断した。
確認が完了したグレムはそのままローブを深く被り、目の前を通過するのを待った。
曲がり角を曲がったのを見てしばらく経った頃、ライルが率いる集団が戻って、別の場所へと向かおうとまだ通っていないグレムの前を通って行った。
それを感じ取ったグレムは音を立てないように歩きながら後ろから集団を追った。
段々と距離を詰めて行くと、遊撃役と思わしき前衛職の男が丁度良く後ろの方にいたので、
音を立てないように、一瞬の淀みなく口を押さえて後ろから心臓を刺した。
心臓を刺された男は声を上げることも出来ず、ビクンビクンと痙攣しながら息絶えた。
心臓を刺しとどめを刺した男を床に音を立てないように横たわらせ、血のついたローブは捨て、その男が頭に巻いていたバンダナの様なものを奪い取って自分の頭に巻いた。
そのバンダナの様なものを頭に巻いたグレムは気づかれない様に集団の後ろの方に行った。
残った9人はその男が死んだと言うこともわからずに、そのまま進行していた。
次の戦闘が始まる前にグレムは、後ろの方にいて、尚且つ孤立している存在を狙って後ろから襲った。
魔術役の女2人は話に花を咲かせていて、魔術役の男は孤立していたので、
そのまま後ろから先ほどと同じ様に口を塞いでから心臓を刺した。
無詠唱を使える魔術士だと無理だったが、無詠唱を使える魔術士なんて存在は限られているので、こんな一介の護衛なんてしないであろうから特に問題はなかった。
これで残るは8人。
弓使いの2人はどちらとも話すことなく黙々と歩いているので、
女の弓使いの後ろを少し視線を下に向けながら歩いている男の弓使いを、
先ほどと同じ様にして殺した時に、ついに集団はモンスターを発見してしまった。
5〜6mほど先にいるモンスターを見ながら
「おい!お前ら、前に出ろ!」
とライルが言い、後ろにいる護衛を見るが数が足りない。
と、見回していると、1人だけ服に血のついた服を着ている男と目が合った。
「お前ら!敵は後ろだ!そこのバンダナをつけてる奴だ!
マイルは前にいるモンスターを殺してくれ!あいつは俺たち7人で殺る!」
と目があった瞬間にライルは叫んだ。
そう言われてからの動きは早く、マイルは前にいるモンスターを倒し、
ライルと護衛達はグレムを囲もうと動こうとしたが、
グレムは予想外の動きをした。
グレムは集団とモンスターの隣を通り過ぎてそのまま奥へと走って行ってしまった。
それを見たライルが、
「あいつを追え!目の前にいるモンスターを殺して今すぐ追え!」
と言ったので、マイルは目の前にいたコボルト2体を軽く薙ぎ払ってそのままグレムの後を追った。
その光景を見た残りの7人は少し唖然としたが、そのままマイルと同じ方向へ走った。
少し走った場所でマイルが立ち止まっていた。
「ここの道が2つに分かれていてどちらに行けばいいかわからない。俺は1人で大丈夫だから右か左どっちに行けばいい?」
とマイルは言ったので、ライルは
「お前は左へ行け。俺たちは右へ行く。」
と言いながら左へと進んだ。
グレムは右の道を曲がり、少し進んだあたりの場所で立ち止まっていた。
それを見つけたライルは、
「おい、あいつがいる。しかもこっちに後ろ姿を向けている。
これはチャンスだ、一気にかかれ!後衛職は後ろで攻撃の準備をしてろ!」
と言いながら前衛の護衛とともに突撃してきた。
突撃してきた護衛が残り2mくらいに接近してきた時、それは起きた。
もっと近づこうとする護衛の前衛職の男3人が足を進めた時、地面から針が生えてきた。
それに対応できなかった3人はそのまま地面から生えてきた針に串刺しにされてしまった。
それを見てたじろいだ4人に急接近してくる影があった。
その影はライルを無視して後ろにいる護衛の魔術士2人と
弓使い1人に近づいて行き、そのまま詠唱を続けている魔術士2人の喉を連続して切り裂き、
そのまま走って矢を放とうとしている弓使いに急接近し、喉を切り裂いた。
3人を切り裂いてから立ち止まったグレムは後ろを振り向いた。
殺した人数を心の中で数えていたグレムは1人いないことに気づいたが、
こういう状況になった今、目の前の男から金目の物を奪い取ればいいだけなので、
周りの気配に注意しながらグレムはライルに視線を向けてゆっくりと歩き始めた。
切り裂かれた3人の死体を見て腰を抜かしているライルは、
あ、あ…と声にならない悲鳴をあげながら少しずつ後ろへ下がろうとしていた。
その様子を見ながら段々と歩を進めていったグレムはふとした瞬間に後ろから迫ってくる
気配を感じ取った。
気配を感じ取ってから振り返ったグレムは筋肉がついた男が迫ってきている事を確認して、
戦闘にすぐに移れるよう血塗れの短剣を振り、血を払ってから両手に持って構えた。
男は止まる事なく背負っていた斧を手に持って突撃してきた。
グレムは手に持っていた短剣を男に投げるとすかさず懐から真新しい短剣を取り出し男に向かって走った。
男は投げられた短剣が見当違いの方向へ飛んでいくのを見て、顔に笑みを浮かべてそのまま突撃してきた。
男が顔に笑みを浮かべて突撃したのを見たグレムもまた笑みを浮かべていた。
そのまま突撃してきたのを見てからグレムは立ち止まった。
立ち止まったグレムを見て何がしたいのか意図が読めなくなった男だが、好機と見て潰そうとそのまま突撃しようとしたその時、
見当違いの方向に飛んでいったはずの2つの短剣が弧を描いて男の両脚へと刺さった。
そして男は何が起きたかわからないという風な顔をしながらグレムの前に倒れた。
グレムは男が倒れた事を確認してから男の両腕を短剣で切り裂いて、
後ろにまだライルがいる事を確認するために少し顔を横に向けて目を動かすと、まだライルは腰を抜かしていた。
それを確認したグレムは前に向いて、倒れている男の上に腰をかけた。
「ぐっ…」
と腰をかけられた男は呻き声を上げた。
「なんで短剣が足に刺さったか不思議でならないような顔をしているな。
何故そうなったか教えてほしいか?」
とグレムは自慢したくて仕方がない子供のような顔をして言った。
「ああ、教えてくれ。」
と男が言うが、
「くっくっく…そんな簡単に教えるわけがないだろ。」
とグレムは言った。
だが、少し浮ついた気分でいるグレムは、
「まぁ今回は特別に冥土の土産にでも少し教えてやるよ。」
「武器を使っていると何か技が出来るって言う感覚がビビッと来る時があるだろ?
その時にきた技がさっきの攻撃の正体だ。」
「どんな技かとか詳しい事は話さないが大体察しはつくだろ?」
と言った。
そして話が終わった所でグレムは
「じゃあな。」
と言って男の心臓部に短剣を突き刺した。
男が死んだ事を確認したグレムは未だ腰を抜かしているライルの方へ歩き出した。
それを見たライルは少しずつ後ろに下がるようにしながら命乞いをした。
「ま、待った…待ってくれ。は、話し合いをしよう。
何が欲しいんだ?金か?名誉か?それとも女か?
このライル様ならなんでも用意できる!だから待ってくれ!」
と後退りながら言っているのを見て、グレムは
「お前、今どれくらい金を持っている?」
と言った。
「今は金貨を316枚に…」
と続けて言おうとしているライルにグレムは短剣を突き刺した。
「がっ…な、んで…」
と言い残しライルは息を引き取った。
そして、死体から金貨だけを奪ったグレムは、
「そこまで持ち歩いてないと思ったが、これは僥倖だな。装備を売ったりする手間が省けた。」
と言って、リビア岩窟を後にした。




