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そしてグレムがリビア岩窟を探索し結構な時間がたった。
「とにかく全部このダンジョンは回ったか。噂通りゴブリン、コボルトはダンジョン内で何回も見たな。
ボスのゴーレムはボス部屋に入ってはないから確認はできてないがまぁ正しい情報だろう。
そしてこのダンジョンには罠が4つあって、3つが下から針が飛び出す罠で、1つが落とし穴っと。
その落とし穴は2階層へと繋がっている。
行き止まりは7個あって、入り口付近に四角形の真ん中に壁のあるぐるぐる回るような所へと通じる道がある、って感じか。」
そう呟いているとすぐに入り口へとたどり着いた。
眩しく輝いている太陽から目を隠すように手をかざしながらグレムは
「戦うには十分な場所だな。」
と呟いた。
王都へと戻ったグレムはリビア岩窟を視察するという目的は達成したので、次に敵の視察に当たる事にした。
敵の護衛がどのくらいの奴らか見ないといけないし、
なんとかリビア岩窟に誘い込むために煽って扇動しなければならないが、
敵がいない事には出来ないのでとにかくライルを探した。
だが、どこにいるのかはわからないので、とにかくギルドへと向かった。
今はまだ日が真上に登ったばかりの時間なので、大通りは人でごった返していた。
「オレンはいらんかぁ〜?」
「ウルフの串焼き買ってきませんかぁ?歯ごたえがあって噛むごとに肉汁が出て来て美味しいですよぉ。」
「うちのネックレスは恋人に渡したら結婚間違いなし!そこの兄ちゃん買ってかんかね?」
と言うような大通りで露店を出している人達の声を聞きながらグレムは歩いていた。
早くギルドへ向かわねばな、と思っているグレムに声がかかった。
「あの、そこのローブを着たお兄ちゃん、ランガはいりませんか?」
と赤い果実をバスケットに入れた幼い女の子供が声をかけて来たので、
「一個でどれくらいかな?」
とすこし目元を緩ませたグレムが言うと
「石貨1枚です。」
と幼い子供がまだ舌足らずな感じが拭えない可愛らしい声で言った。
「じゃあ3つ貰おうかな。」
と言ってグレムは銅貨を2枚渡した。
「はい!ランガ3つだよ!お釣りは…えーっと…。」
と幼い子供が悩んでいるとグレムは、
「お釣りはいらないよ。それはチップだから好きな物に使ってくれ。」
と言いながらランガを3つ受け取ったグレムはギルドへ向かってまた歩き出した。
「ありがとうお兄ちゃん!」
と後ろから聞こえたのでグレムは振り向かずに後ろに手を小さく振った。
そういうやり取りの後、買ったランガをかじりながら10分ぐらい歩いたところでギルドに着いた。
今は真昼で、ギルドに入ったり出たりする人の数は少なくなかったので、
その人混みに紛れるようにしてグレムはギルドの中へと入って行った。
ギルドの中に入るとまず目に入るのが知の象徴とされているクロルル(梟の様な見た目をした青い鮮やかな毛が特徴の伝説級のモンスター)
が描かれた壁。
その壁の前には丸いテーブルに椅子が周りに4つ程あるものが何個も並んでいる。
そしてそこの場所とは反対側に視線をやるとギルドの受付が5つある。
1つが孤立した場所にあり、4つはすこし距離置いて並んでいる。
孤立した場所にあるのは登録専用の受付口で、
残りの4つは普通のクエストを受けるためにある。
グレムはその中の丸いテーブルが何個も並んでいる場所へと歩を進め、
テーブルの近くにある椅子に座り、目を閉じて耳を澄ました。
「おいおい聞いたか?またレジェンドスレイヤーが伝説級の魔物を狩ったんだってよ!」
「嘘だろ!?これで何体目だよ。どんだけ伝説級の魔物を狩れば気がすむんだろうな。」
「今日はどのクエスト受けるか?はぁ!?またゴブリンだぁ?どんだけ心配性なんだよお前はよ。」
「い、いや…僕たちにはまだウルフとかは早いから…。」
「12使徒の中の女6人だとお前は誰が好みだ?俺はアリシアちゃんだぜ!あの少し切れ目気味の目で蔑まれる様にして見られたいぜ…。」
「いーや、俺はエウロちゃんだね。あの肌の色加減とか丁度良くついた筋肉がいいんだよなぁ。一回エウロちゃんに首を絞められてみたいよ…。」
「おいおい、それじゃお前が死んじまうじゃねーか。」
耳を澄ますと色々な会話が聞こえてきたが、グレムの欲しい情報は何1つ得られなかった。
なので、方法を変えて直接聞いて回ることにした。
グレムは近くに座っている冒険者の男2人に尋ねた。
「ライル・ランドルドが今どこにいるか知らないか?」
「ん?俺はどこにいるか知らねーぜ。」
「さ、さぁ…どこにいるのか分かりません…力になれなくて申し訳ないです。」
情報を得られなかったグレムはさらに少し向こうに行き座っている冒険者の女に尋ねた。
「ライル・ランドルドが今どこにいるか知らないか?」
「さて、どこにいるのかはわからないけど、どうせまたどこかで遊んでるんでしょ。」
グレムはさらにその向こうの机へと歩き、座っている冒険者の男に尋ねた。
「ライル・ランドルドが今どこにいるか知らないか?」
「ああ、あいつならさっき東門に向かってたからエイラ草原にでも行ったんだろ。」
「そうか、情報提供ありがとう。これは少しばかりの気持ちだ。」
「おう、ありがたく受け取っとくぜ。」
ようやく欲しかった情報を手に入れたグレムはすぐに王都の東門へと走り、
15分程経った頃にようやく東門へとついた。
そのまま開いている門を通り抜けてエイラ草原へと出たグレムは、
ライルの姿を探して草原を駆け回った。
モンスターとの戦闘を7回ほどして倒した後に、前方に9人ぐらいの人の集団が見えた。
もしかして、と思い気配を隠して近づいて行くと、案の定真ん中にいるのはライル本人であった。
黄土色の髪の毛に少し金に近い色をした瞳を持つ男が狩場とは不釣り合いな
煌びやかな防具を纏って、趣味の悪い装飾のされた剣を装備してモンスターと戦っていた。
よく護衛の編成を見て見ると、2人の男が盾役と思わしき厚い鎧を着た前衛職で、1人は片手に剣を持ち、もう片方の手に盾を装備しており、もう1人は体を覆うほどの大盾を装備していた。
1人が大剣を装備し、鎧を着た前衛職の男。
そして1人の男は遊撃役と思わしき前衛職で、短剣を片手に装備して、身軽ななりをしている。
2人の男女が弓矢を持ち、後衛職として戦っている。
最後の3人は魔術役でローブを着た後衛職の男1人と女2人がいて、男は魔力の質を見るに
炎属性の使い手で、女2人は片方が風、もう片方が光属性の使い手だと見れた。
護衛の編成は偏りすぎて居らずまぁまぁいい感じではあるが、
特に突出して強い奴が居るわけでもなく、
平均した強さもそこまで強くないと見れるのでまず大丈夫であろうという結論に至った。
今日だけのための護衛、という事も考えられなくはないが、
まずあり得ないのでそれは除外でいいだろう。
それに、俺と戦う時には別の強い奴が来ないと限った訳でもないので油断はするべきではないだろう。
とにかく、相手の護衛の大体の戦力は分かったので、
ライルが王都に帰ってきてギルドへと向かおうとしている所を狙って、煽って誘い出そうと計画を立てることにした。
そろそろ日が暮れそうだという時間だろうか、
その時間にライルは王都への帰路についていた。
当然グレムはそれより早く王都へと行くように少し走って急いだ。




