第7話 初めての町
所持金10万5000ゼニー。
「これが風町かー!ひとがたくさんいるなー!!」
トールがきょろきょろとしている、田舎者まるだしじゃないか、と思っているが、
俺も似たようなものだ。そもそも服装が違う。
周りはきれいな服装か、しっかりとした装備の冒険者ばかりで、おれらのようなボロボロの服装できょろきょろしている若者はいない。
「にいちゃんたち、近くの村から出てきたばっかだろー、この時期は毎年いるんだよなー。冒険者のギルドと、武器屋、それから安いけど飯が出てくるおすすめの宿屋を紹介してやるよ。代金は3000ギルでいいよ。」
「3000!?ただの案内にそんな金出せねーよ、アオイ行こうぜ」
そういって、トールは俺の手を引っ張り行こうとするが、右も左もわからない俺らがうろうろするのはあまり得策でないだろう。ここは。。
「トール、ここはお願いしよう。すみませんが、案内をお願いします。」
そういうと、俺は3000ゼニーを渡した。
「まいど!そういう姿勢は大事だぜ、だまされないようになんでも拒否するのが一番やばい、おれはジョウホ、よろしくな、気分が良いからある程度の質問は答えるぜー」
そういうとジョウホは握手しようとしてきた、なんとなく面白くなくてその手は握れなかった。
「まずはギルドで冒険者登録、そのあと武器屋にいって、そのあとに雑貨を買いたい、その後宿屋に案内してほしい」
そういうと、ジョウホ少し考えた様子でうなずいた。
「うん、悪くないな、ただ順序が悪いな、ここは俺にまかせてくれ、悪いようにはしないさ」
そういって、ジョウホは歩き出した。トールはまだ不審がっているが、どのみちついていくしかないさと、トールに目配せ、ジョウホについていった。
そうしてついたのは、市場だ。
「最初に市場?おれらはギルドに行きたいんだが。」
トールがそういって、少し怒った様子だが、ここにきた理由はすぐにわかった。
「おー兄ちゃんたち、冒険者かー、駆け出しかー、なつかしいな、がんばれよーこれやるよ」
そういって、市場のおじちゃんたちがいろいろなものをくれるのだ。冒険者といえば、男は一度は憧れるもの、そうして二人の両手にも、レベルが上がって容量が広がった<ストレージ>にも入らなくなったあたりで、ジョウホは
「次はこっちにいくぞー」
そういって次に向かったのは、武器屋だった。
「おれらが行きたいのはギルドなんだが。」
おじちゃんたちから、物をたくさんもらって笑顔だったトールはまた不機嫌そうな様子だった。先ほどよりは不機嫌ではない様子だが。
そういっているトールを無視して、ジョウホは武器屋のおじさんと話をしている。よく来ているのか、とても仲よさそうに話をしている。
「予算はいくらくらいだ?といっても、困るだろうな、全部でいくらもっているんだ?」
そういう店主に、俺もトールも驚く。
「いや、さすがに所持金はいえねえよ」
そういうトールに俺もうなづく。
「おまえらみたいな駆け出しに、ぼったくる真似はしねーよ。ただな、武器でけちるといざってときに後悔するぞ、今回だけは言うこときけ」
そういう店主の雰囲気はすさまじかった。きっと昔は名のある冒険者だったのだろう。俺らは首を縦にふるしかなかった。
「10万ゼニーもあるのか!お前たちがんばってきたんだな!あとはスキルと得意なことだな。スキルは教えるなと村のやつらに教わっているだろうが、さすがに装備をきめられないから教えてくれ。スキルは大体の内容を教えてくれればいい、それに熟練度があがるにつれてスキルは成長するから、絶対におしえちゃいけないわけじゃねえ。これはおぼえておけよ」
そうしてトールは武器を全般使えるスキル、俺は、戦闘に関係ないスキルであることを話した、その後、裏の広場でワラ束や的に向けて、様々な武器を使わせてくれた。
その結果、トールはチェーンソード、俺は弓になった。まったくもって意味がわからない。特にトールは不機嫌そうだ。
「おれは父ちゃんみたいに大きな剣をもちたい!」
そう叫ぶ、トールを横目に店主は話をしだした。
「おまえらすごく不機嫌そうだな、理由を教えよう。まずトール、おまえは武器全般が扱えるから、剣のような武器はもったいない。チェーンソードは二つの剣にチェーンでつながっている。両手で武器を使うのはもちろんのこと、鎖で防御もできる。片手で剣を持ちもう片方の剣を飛ばしてけん制することもできる。しかし並みの人間だと両手で剣を使うのは難しい上に、鎖に絡まれちまう。だから、おまえのような、剣と投擲のスキルを持つやつにはこの武器が良いんだ。使い手はすくないがな。」
そういわれて、トールはあからさまに笑顔になった。その機嫌がすぐに治るのはトールの長所だよなとしみじみしていると俺のはなしになった。
「アオイ、おまえは戦闘関係のスキルがないために、近接戦闘は避けたほうが良い。さっき的あてをみて思ったが、弓というのは自分の身体だけでなく、風の状態や経験がものをいう。本来であれば的にあてるのは難しいはずだ。しかし、3連続で的に当てたのは才能がある。もしくはスキルのおかげかもしれん。」
スキル<きおく>がこういったところで活きてくるとは思わなかったな。風の流れや弓の飛び方は、自身の感覚によるところが大きいからやりやすいのだ。近接での戦闘は相手との駆け引きなど相手の感覚に合わせるところが大きいので、現在の経験量ではとてもじゃないが使い物にならないのだろう。
あとは防具だ。トールは青銅の鎧になったようだ。初心者におすすめの防具のようだ。
俺はチェーンメイルだ。基本的に相手との距離を取るためにスピードは犠牲にできないためにこういったものになった。
「もし壊れたらおれが格安でなおしてやる、無理して武器をこわすんじゃねーぞ」
「わかりました、丁寧にありがとうございました」
そういって店主は、にやりとした笑顔でこういった。
「代金は9万ゼニーな」
「「エッ!!」」
人生そう甘くはなかった。
「まさか貯めたお金がほとんどなくなるとはなー。」
「だね、でも丁寧に教えてもらえてよかった、自分たちではこの武器は絶対に選ばなかった」
後で話を聞くと、これでもかなりサービスしてもらえたようだ、それほどまでに俺たちの武器は冒険者の駆け出しにしてはかなり良い装備のようだ。
「さて、ではお待ちかねのギルドに行くぜ」
ジョウホはニヤニヤしながらギルドに向かった。その時の笑顔がなんだかはその時の俺にはわからなかった。
「おかえりなさいませ、ジョウホ様!」
「うん、お疲れ様、特に変わりない?」
といったやりとりをしていた、なんと、このジョウホ。ここのギルドを任せられているマスターらしい。
なんでも有能そうな初心者をよくギルドに連れてくるらしい。あのとき、案内たのんどいてよかった。
「さて君たち、ギルドの登録を済ませるにあたり、登録料5000ゼニーそれから、この水晶に手を置いてくれ。」
これは魔導書と違い、細かなステータスから、スキルの方向性など、詳しいことがわかる。つまり、その冒険者の今とこれからについて大まかにわかってしまうのだ。
「じゃあまずはトール君からねー、スキルは「ぶきつかい」かー、ポピュラーだけど強力なスキルだね、冒険者にはもってこいだ。属性も火だから使いやすいだろうね。今後は「ぶきますたー」になって、様々な武器の力を最大限に使えるし、武器に火属性も付与できるだろう。基本的には、遠距離の弓でけん制し、中距離でのチェーンソード、近距離での両手剣というスタンスで良いだろう。魔術師相手には弓を打ちながら接近、身体機能向上スキル持ちにはやや距離をもつことで対応できる。問題があるとすれば、お金だね。武器マスターは武器をもってこそのスキルだから、武器に金を渋るのだけはやめたほうが良いよー。」
なるほど、これまでたくさんの冒険者をみているだけあってこんなにすぐにわかるものなのか。雰囲気はひょうひょうとしているけど、かなりすごい人なんだろうな。
そして、トールはうんうんとうなずいている。どこまでわかっているか心配だ。
「次はアオイだね、うんうん、きおく?これは…」
あーすっごく難しそうな顔をしているよ。やっぱり厳しいのかな…
「このスキル持ちははじめてだから、今後の成長について対してアドバイスが難しいね」
「今のところスキルの効果は、今までのことを記憶しておけるなんだよね?、それだけだったらすごく弱い。戦闘には向かない。」
それは僕も同じ意見だ、やはり厳しいのかと少し悲しくなってきた。
「でも、これは過程の話なんだけど、この記憶が自分の記憶だけでなく他人の記憶も閲覧できたらどうだろう。それで相手の弱点?とかがわかるかも?といっても、戦闘中にそんな時間はとれないだろうし。メリットは少ないかも」
相手の記憶か、これは盲点だった。そういえばトールの記憶を垣間見れた気がする、少し意識してみよう。
「少し、光明がみえたかもです、ありがとうございます!」
「そう?それならよかったよ、さてじゃあそうこう話しているうちに準備ができたようだ。はいこれ」
そういって渡されたのは、灰色のカードだ。
「それでは、そちらのカードについて説明させていただきますね。冒険者のランクはS、A、B、C、D、E、Fの7段階です。そのランクによって、受けられるクエストのレベルが違います。受けられるランクは自分のランクの1段階上までです」
「君たちのランクは一番下のFランクだよ、というわけで今の君たちにぴったりのクエストはこれかな」
そういってジョウホが出してきたのはFランクの薬草採取クエストだ。
「採取クエストとか、つまんねーよ、やっぱり討伐クエストやりてー!」
トールはそういうと思った。正直俺もそう思う。
そんなことで、二人が微妙な顔をしていた。
「まあまあ。その辺の草が、何の効果があるかはとっても便利なんだよ?雑貨屋で購入しているものがその辺にあるからね。毒や睡眠の効果があるキノコをたべたら一大事だからね。香草とかは魔物の肉を食べるときに役立つし、というわけでこれを差し上げよう」
といって、渡してくれたのは草大辞典だ。かなりの分厚さがある、なかにはイラストがある為に、かなりわかりやすいものにはなっている。シゲル本で調べようと思ったけれど、あの本にもデメリットがあって、自分で見たもので名前がわからないものは調べることができない。
「たいていの冒険者には薄いものを渡すんだけど、アオイは<きおく>のスキルがあるからね。全部の草情報が書いてあるから、ぜひ役立てておくれよ、さてこのくらいにしようか、あとはなにか聞きたいことはあるかい?」
「おれはレベルが早くあがる魔物を教えてほしい!あとスキルのあげ方も聞きたい!」
「トールくんらしいね、魔物は採取クエストの森にはキノコの魔物と木の魔物がいる、この魔物は火に弱いからトール君にはちょうどいいと思うよ、レベルが10を超えたあたりにまた来ると良い。スキルは何度も使うこと、他にもなんかきっかけとかもある。それと夕方には、オオカミがでるけど今の君たちにはかなり厳しいからみつけたらすぐに逃げること、いいね、アオイ君は?」
「村には本があまりなかったから、とにかくたくさんの本が読みたいです。図書館とかあれば教えてほしいです」
「図書館は町の中央にある大きな建物だよ、ギルドカードがあれば、中に入ることができる。借りるには会員カードを別で発行する必要があるけど」
そういうと、窓の外から大きな建物を指さした。村にはない大きな建物だ、あれなら読むのにしばらくは困らないだろう。とはいえ、まずは採取クエストだな。
「ありがとうございます、とりあえずはクエスト行ってきます!」
といって、町の外の薬草採取だ。
「おれは周囲の警戒をしているから、アオイは採取を頼むわ!あ、パーティーを組もう。経験値が俺だけもらっちゃうのはまずいしな」
ギルドに登録したことでパーティを組めるようになったのだ、これで経験値を分配することができる、パーティーは5人まで組めるので、魔法使いや僧侶あたりが欲しいところだ。採取クエストがの依頼報告のときにパーティーメンバーのことはきいてみよう。
町の外の薬草採取といっても結界の中はほとんど採りつくされているから結界の外に出ないといけない、といってもこの町の外もスライムやゴブリンばかりなので大して問題ない。さっきジョウホさんが言うように、夕方のオオカミだけ気を付ければ良い。
さて、クエスト依頼は薬草採取10個だ、今日1日で終わると良いな。
気にしてみると、たくさんの草がある。このギザギザしたやつが薬草で、この毒々しいキノコは食用、逆に色鮮やかで前にトールが食べようとしたものは毒キノコだったのか、このクエストはやっておいてよかった。毒キノコや睡眠キノコは矢に塗ったりできそうだ。
そうこうしているうちに夕方になる前には、町に帰ってくることができた。集まったのは、解毒草8個、薬草10個、毒キノコ20個、睡眠キノコ24個、食用キノコ4個。食用のキノコや薬草は簡易的な本にも載っているし、重宝されるためかあまり見かけることはできなかった。
ギルドでは今朝見かけた受付のお姉さんがいた。ジョウホさんはいないようだ。
「クエスト達成おめでとうございます。こちらが報酬となります。」
そういって渡されたのは、500ゼニー。少し少ない気もするが、薬草一つが100ゼニーあたりで売られていることを考えると妥当なのかな。
「チェー少ないな、やっぱ討伐クエストがいいなー、ランクは上がらないの?」
チェーンソードの使い勝手が予想以上に良かったのだろう、狩りの効率が格段にあがっていた。レベルも、二人ともレベル7まであがっていた。
「ランクアップにはあと採取クエストを3回ほどでEランクにあがります、もしくはゴブリンの10体討伐クエストでEランクにあがりますが、おすすめは宿屋の手伝いクエストです。こちらは今夜と明日の午前中に手伝いすると報酬として無料で宿泊できますし、食事も付きます。そちらを受けますか?」
装備品でかなりの出費があったからこの提案はありがたい。このへんはジョウホさんが一緒にいてくれたからこちらの懐事情も把握してくれているからだろう。本当にジョウホさんには感謝だ。
「宿屋は、ここから2分ほど町はずれに行ったところにある。治安はあんまりよくないけど、あなたたちの装備であれば絡まれることもないでしょう」
残金1万3000ゼニー
トールレベル7
青銅の鎧
チェーンソード
アオイレベル7
弓
チェーンメイル
冒険者のランクはS、A、B、C、D、E、Fの7段階
続きます。
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