第一話 スキル覚醒の朝
「もう、絶対に忘れたくない」
それが俺の最後の記憶だ。いや最初の記憶といってもいいのだろうか。
気が付けば、俺は硬いベッドの上にいた。さきほどの白い部屋とは違い、木でできている家だ。
頬には、涙の跡があるが、その涙がなんのための涙かは思い出せない。
変な夢をみていた。白い部屋で俺は横になっていた。傍には涙を流しながら笑顔でいる女性。
それが誰なのかはわからない。けど、俺はその人がとても大切だった。。
「アオイー?おきてるー?ごはんできてるよー?」
気が付けば、普段起きている時間を30分も過ぎていた。いろいろと考えたいことはあるが、ひとまず起きよう。
「今日は珍しく起きるの遅かったわね、今日は村長のハジメさんのところに行く日よ、私もあんまり寝付けなかったからアオイのこといえないけど」
そう笑いながら話かけてきたのは、母親のヨシコだ。年齢は、30半ばといったところだろうか。
ん?寝起きのせいか、少し記憶が混乱しているな。少し落ち着こう。
…そうだった。おれは15年間ここで暮らしていた。昨日は15歳の誕生日だった。15歳の春になるとスキルが付与される。
母親のスキルは、「へいわ」。彼女の周りでは、常に穏やかな雰囲気が流れている。母さんがいると喧嘩していた人たちも落ち着くので、この村ではよく仲裁役としてみんなに呼ばれることが多い。もちろん母さんが怒ったことも生まれてからみたことがない…いや、親父が村を出て行ったときにひどく怒っていたっけか。
俺は今日、村長のところにあるステータスボードに手をあて、スキルを教えてもらうのだ。そこで村長と話し合いをして、今後どうするかの話し合いをする。スキルは多種多様だが、主に戦闘スキルと非戦闘スキルにわかれる。どのスキルになるかは完全にランダムで誰にもわからない。という話を村の人は話していた。親父に話したら鼻で笑っていたからホントは決まってるのかもしれない。
木でできたドアをあけ外に出た。やけに朝日がまぶしい、朝というには少し昼前といったところか。
夢をみたせいか今日の空気はとくにおいしい気がする。これは完全に寝坊したようだ。
「いそぐか」
もう見慣れた村を眺めながら、硬い地面を母さんが昔作ってくれたサンダルで踏みしめがら小走りした。
人口50人程度の小さい村なので、村長の家までは5分とかからなかった。集合時間にギリギリだったために、もうすでに他の人は集まっているようだ。
さておれは何のスキルなんだろうな、楽しみだ!
続きます。
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