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遥か彼方は何処へ行く  作者: おこげっと
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遥か彼方は何処へ行く4

詳しくはあとがきで語ります。

 携帯のコール音がリビングに鳴り響く。これで何度目だろうか。あの子は、遥かに連絡を取ろうとしても、一向に出る気配はない。

 ついに、あの子は負けてしまったのだろうか?声の主の誘惑に。各地を練り歩く彼女をとめるべきだったのか?

 あの子は自分の髪色について真剣に悩んでいた。本来なら先輩として何か言ってあげるべきだったかもしれない。不安を取り除いてあげれば良かったかもしれない。

 けど、私にははぐらかすことしか出来なかった。1年前黒神病の兆候が現れたとき、一番驚いたのは私だった。ついにこの子にが私と同じ宿命を背負うことになってしまう。

 遥かは私に聞いた。黒神病について。けど私は知らないと言った。黒に染めているから遥かは気が付いていないけど私だって元は金髪だった。

 知らないと言うべきではなかった。おかげで遥かは音信不通。最近の様子を見て心ここに非ずといった表情だなと感じてはいたが、帰ってこなくなるとは予想していなかった。

 携帯電話が鳴り響き、慌てて取る。声の主は私の夫である則武(のりたけ)からだった。

「もしもし?」

「あなた!遥かが…遥かが…。」

「帰ってこないんだろ?大丈夫だ、こっちで迎えの準備を進めてる。君が心配して慌てふためくことじゃない。それに君は僕が不在の間よくやってくれたじゃないか。安心して。ありがとう。愛してる。じゃあね。」

 抑揚のない声で一方的に話し、こっちの返答を待たずに通話を切ってしまった。

 仕方がないと割り切るべきなの?私が体験した以上の苦難をあの子に背負わせるの?もういや、もういやなの。私の愛している皆が苦しむのは。皆が離れていくのは嫌なの。

「お願いだから…皆無事で帰って来て…ただいまって何事も無かったかのように帰って来て…。私はそれだけでいいから。」

 明りもつけずにカーテンを締め切った部屋に響く私の声はひどく力ないものだった。

 

 体中の痛みを感じて起き上がる。私はビルの屋上で寝ていた。空はは良く晴れていて。ひとまず昏睡に至るまでの経緯を思い出す。辺りを見回すと大きな血だまりが一つ出来ていた。確か東雲遥かによって壁に叩きつけられたんだっけか。対象を拘束するどころか逆に返り討ちにあうなんてお父様に何て言えばいいのやら…。

「つぅ…!」

 立ち上がろうとしたが刺すような痛みが体中を襲いうめき声を上げてしまった。骨折れてんじゃないかしら。後ろの壁に目を向けると大きく円形に凹んでいる。口から血が垂れているのを見る限り内臓1つは破裂していたのかもしれない。何故私はそこそこ元気なのかしら?

 ガチャリとドアが開き、高校生らしき男の子が現れた。

「おお、目が覚めたか。気分はどうだ?」

「あなたは?」

「そうか、話をするのは初めてだった。俺は神道癒接しんどういえつぐ。そのーなんだ。お前をこんな風にした奴の知り合いでな。詫びも込めて治療をしてたんだ。」

「あの子、東雲遥かは!?」

「当の昔に遠くに行っちまったよ。なんせ、あんたは瀕死に近い状態で丸二日寝てたからな。普通の人なら死んでてもおかしくない位重症だった。何で助かったんだろうな、あんた。」

 含みがある言い方に何か引っかかるものを感じた。癒接と名乗る少年はガサガサとコンビニの袋を漁り、私にサンドイッチと水の入ったペットボトルを差し出した。喉は乾いていたし、お腹もすいていたので素直に受け取ることにした。

 モサモサとサンドイッチを頬張る私を彼はまじまじと見つめている。

「…何よ。」

「お前、普天の人間だろ?」

「むぐっ…ゴフッゴフ!」

 思わず蒸せてしまった。こいつ、何で私の事を!?慌てて身構えようとしたせいでペットボトルを倒してしまった。

「あーいや、その。別に警戒しなくていいから。普天の人間ってわかったからお前をどうこうするって訳でもねえし。目的も何となくわかるしな。遥かをとっ捕まえて拘束か幽閉ってところだろ?」

 見抜かれている?何故?こいつはどこまで知ってるの?

「そうね…現に失敗したんだけど。どうしてあなたがその事を知ってるの?」

「あんたの仲間に聞いたから。一度無理矢理捕まえようとしただろ?悪いがあの時邪魔させてもらった。その時にあんたの事を聞いたんだ。山師真狐やしまこさん?」

「…あなたは何が目的なの?私の弱みでも握りたいの?」

「そうじゃない。あいつはもう手遅れなんだ。下手に手は出さない方がいい。止めるにしたって1年以上早く動くべきだったんだ。」

「どういうこと?」

「今の遥かをいくら拘束しても『声』は聞こえている。聞こえる続けるからにはいつかは屈して今のような暴走状態になる。あいつを止めたかったなら『声』が聞こえる前に拘束すべきだったんだ。あんたのせいとは言わないが動くのが遅かったな。」

「そもそもなぜ、あなたが彼女の異変に気が付いたの?そもそもどうして私が差し向けた仲間のことを知っているの?」

「多くは語れんが…。あいつは黒神病の話をするときにいつも俺に相談していたんだ。話を聞いたりだとか、黒神病について調べたりだとか。親には相談出来なかったみたいだし、頼れるのは俺だけだったみたいだ。学区がある日とかはほぼ毎日話してたけど、日が経つにつれてあいつの口数が徐々に減っていったんだ。話もあんまり聞いてなかったりすることもあった。それでまあ、その何だ。後を付けていたというか何というか…。周りの人間になるべく被害を及ぼさないようにするために見張ってたんだ。本人は気が付いていないとは思うが。」

「そこまでする道理はあったの?」

「悪い奴じゃないしな。何と言うかかわいそうな奴だったよ。本人は強がってたけど内心穏やかじゃ無かっただろな。ただあいつは、『声』から解放されたかったんじゃなくて真実を知りたがってた。止めようとするのは野暮だと思ったし、もしかしたら『声』から解放されるきっかけを得られたかもしれないからな。」

 まあ暴走は始まっちまったけどな、と付け足した。

「どうしてあなたは普天の人間について知っているの?」

「おいおい、質問攻めだな。まあいいか。俺がまだ幼いときに俺の父さんが普天の人間に連れていかれた。父さんは秘術の後継者だったからな。何かしらの脅威を感じ取って父さんを連れ去ったのかもしれないが、連絡も無ければ生きているかも確認できない。きっと生きてるんだろうけど、そっちの都合だけで俺は大切な父さんを引き剥がされてしまったって訳だ。」

 皮肉交じりの声で私に話した。その目は諦めが混じる冷たい目だった。

「私を恨んでる?」

「言ったろ?どうこうする気は無いって。それとこれとは話は別だ。お前がやった訳じゃ無いし。さあ、今日の分の治療をしよう。俺も一応見える範囲で治したが見えない内臓とかは治しにくいからな。どの箇所が痛いか教えてくれ。」

 こうして痛む箇所の治療をしている間に数時間が経過した。癒接の手が淡い緑に発光し私の傷に触れると徐々に痛みが引いていく。まるでマッサージを受けているような感覚に気が付けば私は寝てしまっていた。 癒接に起こされたとき彼は額に汗を浮かべていた。かなり集中のいる作業だったのだろう。

 私は彼にこれからどうするのかを聞いた。

「ひとまずお前を仲間の元に帰す。遥かの事はそれから考えよう。」

 癒接が立ち上がりドアを。私も合わせて立ち上がる。立つときに感じた痛みも消え失せていた。階段を降りようとしている背中に私は問いかけた。

「ねえ!あなたは何者なの?あなたには何が見えているの?」

 状況が整理できていない頭がまたしても質問をした。

 彼は少し考えてから、

「後々わかるさ。」、と答えをはぐらかした。私は彼の背中を追いかけた。

 空を覆う雲が黒雲が空を蝕み始めていることに気が付くのはビルを降りた後だった。

 

 徐々に秋が深まり、夏の残暑と冬の寒さが混ざり合う今日この頃。皆さん如何お過ごしでしょうか?

私に関していいますと、一言で言うなら多忙。日々の仕事、イベントなどに忙殺され、気が付けば寝てしまっているような生活を送っていました。

 以前は週一ペースで投稿できていた小説も気が付けば月一に。文章をいかに表現するかなどを考えさらに書く時間が無いので現在の様な投稿ペースになっています。

 実は少々スランプ気味で思い付けども形にならずが繰り返され心苦しくなる時も多々ありました。

 何とかして月一のペースを続けていくつもりですが、内容が伴わないことが多いかもしれません。ですがこれまで通り頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします。

 それではまた次回お会いしましょう!

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