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年下上司に囲われて

作者: ton

書いてみたかった年下上司ものです!

「ああ~!!35億と5千万人の男がいるはずなのに、なんで私にはひとりも!ひとりも寄ってこないんだよう!!!」

「あーもう、泣き上戸はよしてくださいよ、亀山先輩。立てますか?」

「…歩けない。」

「ほら、ああもうまったく、手が焼けますね。」

そう言って、後輩の二階堂は私の手をとった。


私、亀山美琴は御年35歳だ。

さんじゅうご。しかも独身。


若いうちに仕事でなんだかうまいこといっちゃって、すぐに課長まで上り詰めた。

それからはもう社畜だよね。

結局中間管理職なんてものは、社畜として人の人生を縛るようなもので、私も例にもれず、日々仕事漬け。親からお見合いの話なんかきても、まだ大丈夫だって知らんぷり。

長い黒髪に少しシュッとした切れ長の瞳。

結構見た目は褒められて生きてきたほうだから、まだ平気、そう思ってた。

だけど現実はそう甘くなくて、友達に誘われた婚活パーティに参加してみたらあえなく惨敗。理由はそう、年齢。


どうにか恋愛しなくちゃと焦って合コンに参加してみたが、蓋を開けてみればいいと思った人は皆既婚者ばかり。

合コン参加してんなよ!家に帰って家族サービスしておけ!!!


そんなこんなしていたら…


「あ~、やっぱりね、後のことを考えると、ここで彼を伸ばしておきたいんだよねぇ~。仕事できるし。」

そう言ったのは頭の禿げあがった部長。そして課長にはこいつ…二階堂聡志が抜擢された。しかも二階堂は私が手に塩をかけて育ててきた子だ。物覚えも早く、気も効く。それに、何より頑張ってる。それを知っているから、私は何も言えなかった。

まだまだ若い25歳。私が課長になった年より1つ若い年に、彼にも課長というポストが与えられた。


ただ私にあてがわれたのは課長補佐という肩書き。


昇進ではなく、降格。

解せぬ。解せぬよ。


「先輩、先輩の家どこですか? ああっ!寝ちゃダメですって!!」

タクシーに乗って二階堂の太腿に頭をのせた。

うんうん、いい筋肉じゃ。若者のハリのある太腿はいいのう。


二階堂はイケメンではないものの、柔和で優しい雰囲気の青年だ。

少し天パのかかった栗色の髪に優しく笑う姿は隠れた裏人気ランキング3に入ると聞いたことがある。

裏ってあれだよ。キャーキャー人気じゃなくてガチのやつ。結婚狙いの。


ははっ いい人生だね。

恋愛には縁がなく、仕事にまでそっぽを向かれた私と比べてなんて幸せな人生か。ええ、嫉妬していますよ。していますが何か?


なんだかもうぜぇんぶめんどくさいやぁ…。。


そう思ったのが、彼の太腿の上で瞳を閉じたその瞬間で。

目を覚ました時に思ったのは。



「やっべぇ…。」



落ちた服に、乱れたシーツ。

そして痛みが残る下腹部に、ベットに横たわってすうすう眠る栗毛。


うーわー!!!


なんてことだ!!わ…若者を食ってしまった!しかも10歳も下の年下上司!!

覚えてねーし!ぎゃあああ死ねる!!



…うん。逃げよう。



そうして私は、二階堂が起きる前にトンズラした。

えっ?ズルい? しらねーよ!



* * * * *



「A社との取引はまだ成約までいっていないんですよね。」

「…ええ、今度の接待の時に成約するという約束をしております。」

「それ、何とか明後日くらいまでに成約できないかな。そうすれば今月の売り上げに上がるし…」


書類とにらめっこする二階堂。その瞳は真剣だ。


え?それから?

ほほほ、いたってなーんにも変わりませんわよ。おほほほほ。


少しくらいは気まずそうな顔するとか、恥ずかしそうな顔するとか、そんなのを想像していたのに。

いたってフツー。フツーに週明け、「おはようございます」って。


あれか。慣れてるのか。

35歳はヤッたら結婚うんぬかんぬ言いだしそうだから警戒でもしてるのか。

うううくやしいよう。久しぶりだったのに…。いや、覚えてないけどね。


だけど…なんだか優しく、頭を撫でられた それだけは覚えているから。

ちょっとだけ、ちょっとだけ寂しいんだ。

その優しさが、嬉しかったから。



二階堂が押す形でA社との成約がすぐに決まり、昇進記念も含めて部署全員で打ち上げにいくことになった。

さらーっと逃げようとしたんだけど、後輩の女の子に捕まった。だって行きたくないじゃん。

私にとっては今回の人事は降格なんだよ。


「かんぱーい!!!」

この間あんなことがあった私は今回は控えめにしようと心に決めていた。一杯飲んだら消える。

用事を忘れてたとか、何とかいって逃げ出そう。

そう思ってカシスオレンジをぐいっとあおる。ほぼ一気の勢いで。



「おお!飲むねぇ!亀山ちゃん!

課長から降格だもんなぁ、そりゃ飲みたくなるよなぁ!!」



凍りつく場。



年上のくせに仕事できないと思っていた上司の一言。

空気まで読めないのか。


「あ…あの、お手洗い、行ってきます。」


そういってそそくさとその場を出た。

ここにいても場がぎこちなくなるだけだ。

案の定、ふすまを閉めて少ししたら、若い女子社員につるし上げられてる上司の声が聞こえてきた。

ざまあみろ。



トイレに入る手前の柱に背中をあてて、ずるずると座り込む。

あああ、戻りたくない。

会社にも行きたくない。

かといって、逃げ出せる場所がない。


恋人もできなくて一人で老いてゆくんだ。

泣ける。


「うぇぇぇぇ…」

意外と酒に弱くなっていたのかな。カシスオレンジ一杯でこんな、泣けるなんて。

ぼたぼたと、大粒の涙が床を濡らした。


あたしの居場所、どこにもないじゃん。




「先輩!?」


顔を上げると、そこにはびっくりした顔の二階堂がいた。


「ああもう、こんなに泣いて。」

そう言ってハンカチをあたしの頬に当てる。

「…あたし、もうかえる。」

立ち上がった私を、

「そうですね、帰りましょうか。」

二階堂はそういって、軽々と持ち上げた。


「えっ…!!ちょ、二階堂!?」

「大切な先輩を泣かすような上司に酌する義理ないです。

俺も帰って先輩をめろめろになるまで可愛がって甘やかしたいです。

そのために今週中に取引終わりにしたんだし。」


…は?


な、なんか今けっこうなことをさらっと…。


「先輩、この間みたいに逃げるのはナシですからね。

取引も終わったから明日から気兼ねなく先輩も僕も3連休です。

あ、月曜の分は俺がまとめて有給申請しておきましたから、土日…いや、今晩からだな。

今晩から抱きつぶしてあげます。逃がしませんよ。」


にっこりと笑った二階堂の笑顔はいつもと違ってちょっと黒くて。

近づいてきた唇を、私はそらすことも、よけることもできなかった。

だって、あの時と同じように、私の頭を優しく撫でるから…。


「先輩、愛してます。一目惚れしてから仕事をがんばって、ようやく貴女に追いついた。

今度からは俺に飼われて、存分に囲われてくださいよ。」




そのあと本当に週末抱きつぶされて、翌月にまさかの妊娠が発覚。

その後結婚、出産を経て、社畜からジョブチェンジした私の、華麗なる転身人生です。



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