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ひのきのぼうでも勝てますか!?  作者: リレー小説に参加して下さっている皆さま。
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第九話:只の鯨様

 俺の現状を確認しよう。

 まず、ひのきのぼう以外装備できない。

 そして、初級魔法以外使えない。

 それすなわち……

「俺クソじゃーん! なんの価値もないじゃーん! いぇぇぇぇい!」

「やめて!? ここで現実放棄しても最弱であるこの事実は変わらんよー!?」

 ……もういやだこの世界。


「いやーそれにしてもなんでかなー。いくら変態拗らせたとはいえステータスに直接関与して自らを貶める羞恥プレイとか聞いたことないわー」

「羞恥プレイがしたくてこうなってるんじゃねぇよ!」

「特殊性癖とか拗らせた事ない?」

「ないね!」

「首輪で繋がれたペットを見ると?」

「興奮しない!」

「ちょっと痛いくらいが?」

「普通に痛いわ!」

「うーむ、マジか……」

「今の質問になんの意味があるんだ……」

 ただのアリエラの興味だった気がする。

 しかしアリエラは真剣な表情で言った。

「いや、まぁまぁ意味あるよ?」

「なんでだ?」

「これは噂程度の情報だが、ガチで何かを極めた人はその人専用の特殊スキルが開花するって話がある。可能性はあるかもしれないからな。マゾの才能」

「近年稀に見る目覚めたくない才能来たな!」

「聞いた限り無さそうだな」

「なによりだよ……」

「あっちなみに最初の質問で分かってたから」

「やっぱりあと二つは興味かこの野郎!」

 続けて抗議しようとしてアリエラは俺の口に手を当てた。

「ところでなんだが、あんたは多分自分のそのお粗末なステータスについて大声で抗議できてさぞスッキリしただろうが……一応今ハッチーに追われてるってこと、まさか忘れてないわな?」

 その瞬間後ろから独特の羽音がした。

 ……冷や汗が流れる。

「はいはい問答無用で出発するぞー!」

 アリエラに再び担がれ、俺の視界が歪む。

 ハッチーを物凄いスピードで突き放すアリエラ、もはや車だ。

「ハッチーを撒くのにはやっぱり脳筋スピード勝負だよなぁ〜」

「それ最弱の俺の前で言うかぁグフッ!?」

「ほら喋ると舌噛むよって言ったのにねぇ、死因が女の子に担がれてる間に舌噛んだとか洒落にならんぞー。一応ヒール」

「ありがてぇ」

 ちなみにこの全てを俺を担いで全力で疾走してる間にしているのだからアリエラの器用さがわかると言うものだ。

 その後やっとスピードダウンし、アリエラが止まる。

「こんくらいでいいっしょ」

「というかもうここどこだよ……」

「逃げるときは道なんて気にしないし、ドラゴンのせいでここの地図も正確じゃないから正直迷子! ごめんね、てへ!」

「やめろお前! まぁ俺も何も出来ないからしょうがねぇんだけどさ……」

「そんなわけで地道に目測するしかないか……。太陽の位置と磁場は使えっかな……」

 テキパキと道具を出してはしまい、ものすごい勢いで現在地を調べるアリエラ。

 情報屋という職業はものすごいスペックの技術が必要らしい。

 そんな風に考えているとふとアリエラの手が止まった。

 顎に手を当てて何かを思案している。周りを見渡してみるが木々以外何もない。強いて言えばまぁ奥の方に反り立つ崖らしきものがあるくらいだ。

「なぁユージン、あそこの岩壁がみえるか?」

「あぁあの崖な。あれが?」

「……奇跡的にあれが毒持ちドラゴンデッドリーウイングドラゴンの巣穴だわ。多分」

「は!!??」

「うん、奇跡的に。これあの巣穴の入り口からぐるーっと半周した感じだな。そのおかげでこれまで見えてこなかった部位のスケッチもいけるな! よっしゃ行くぞぉ!」

「まって一人でめっちゃテンション高まってるけどあのドラゴンの前マジで怖いから辛いんだけど……!」

 まぁそんな言葉をアリエラは華麗に無視し、俺はただついていくのみだった。

「……んー。こりゃどこから入ったもんかな……」

 俺たちは岩壁の前で首を傾げた。ロッククライミングで登っても岩屋根で巣穴に入れるわけでもなく……こっちから穴を探すのが一番だろうが。そう簡単に見つかるわけでもない。そろそろ日暮れも近づいてきたのかこっちに刺す光が斜陽になりかけている。

「夕方か、これ以上の捜索は無理かなぁ。引き返すか」

「そうしようぜ」

「やけにニコニコしてるからまだここにいたいのかなぁ~? まだもうちょっといようか?」

「さーせん早く帰りましょう!」

「ガチでここ苦手なのかよ頑張れよ……」

 そんなこと言われてもここ最近まで近代文明の恩恵受けまくってた人間だからな……。

「まじめな話、ユージンは冒険者家業やるんだろ? そうなるとやっぱもう少し体制つけた方がいいぜ。正直情報屋家業とどっこいどっこいかそれ以上の苦労があるからな」

「あー、うん。そこはしっかり考えるよ。ありがとうなアリエラ!」

 アリエラはその瞬間ぼーっと俺の方を見てきた。

 お、これもしかしてアリエラルート入ったんじゃね? やったぜもうこの世界ヒロインゲットしたよよっしゃー!

 アリエラはじゃあ、と言って言葉を続ける。

「お礼は体で示してほしいな」

 ッッ!!!??? 展開は早いがオッケーオッケー! ウェルカムだぜ!

 アリエラが近づく。俺は待つ。だんだん近づくアリエラは俺の前に立ち……。


 ポン、と俺の胸を押した。


 え?

 理解が追い付かないが、とりあえずこのままだと俺倒れるよね?

 とりあえず後ろに手を突こうとする、がこれもまた大きな誤算だった。

 俺の背後は少し勾配があり、下っていた。

 体の重心がすべて坂に向かってに引っ張られる。

 結局勢いがつくと止まらないものでそのまま坂の下まで転がり落ちた。

 アリエラが叫ぶ。

「お礼は体で示してよ! そこの坂の下近くに岩穴あるでしょ!?」

「お礼ってそっちかよぉ!」

「バーカ何期待してんの!」

「ぐぬぬ……」

 しょうがないので見に行くしかない。

 たしかにそこにはほら穴らしきものがあり入ることも可能だった。相当大きい。

「大丈夫かー?」

 穴の外からアリエラの声がする。

「変に凶暴な生物もいないし、大丈夫だろ」

「んじゃまぁ、安全確保したしアタシも入りますかね」

「オイコラ」

「え? 何、私にセクハラしたって怖いお兄さんたちに訴えられたい?」

「すいませんなんでもありませんでした仕事を与えてくれてやさしーなぁあはははは」

 全力で目をそらした。

 洞穴と言っても相当大きい。

 たまに見る穴ぼこも人間が入れるサイズだったりする。アリエラでギリギリで俺は無理そうだが。

「おかしい、このサイズの穴なら生き物の一種類や動物の家族位住んでるはず……、それに毒素が濃くなって……あ」

 アリエラが急に何かに気づき足を止めた。

「どうしたんだよ」

「竜の生態がすこしわかった」

「どんな?」

「竜の食事についてだ。この穴、やっぱりこのサイズだと生き物が住処にしてておかしくないサイズなんだ。しかし、動物たちはそうしない。なぜか?」

「竜が近くにいるからじゃねえか?」

「その通り、でも人間と違って動物たちは毒に関する能力は低いはずだ。ではなぜそいつらでさえこの穴に近づかないのか」

「……?」

「要はこの穴で竜の(・・・・・・)姿を見たんだよ(・・・・・・・)

「……は?」

「竜を見るってことはこの穴と竜の住処はつながっている。つまり、生き物の住処に見せかけた竜の罠だったってわけ」

「ここに入った動物たちは……」

「事前情報の捕食シーンよろしく、全員毒ブレスで死んでから餌食でしょうねぇ」

「……ってことは早く逃げないとまずくね?このままだと俺らはッ!?」

「あーまぁ、手遅れだろうね」

 そう言ったアリエラの視線の先には、


 巨大な目玉があった。


 瞳が闇に鈍く光っている。人間サイズではない生物の瞳が。

「まずは毒ブレス。この時点でおじゃんっしょ」

 アリエラも頬を引きつらせながら泣きだしそうに言う。

 俺は活路を探した。どこか小さい穴でもいい。毒ブレスがどんなものかは知らないが、もし一直線に吹くものなら小さな穴でも一回は耐えられるんじゃないだろうか。

 目玉が動き、微風が吹く、ブレスする事前動作だとしたら非常にまずい!

「アリエラ走れ!」

「いやいやもう無理でしょ。この洞穴出口までまぁまぁ遠いんだぞ!?」

「いいから!」

 手を引いてとにかく走る。

 奇跡的に都合のいい穴は事前に発見していた。あそこしかない。しかし、その穴はどう見ても俺よりも背の低いアリエラがかがんでギリギリといった感じの穴だ。とても二人は入れない。

 しかし選んではいられなかった。

 アリエラを押し詰め、俺も入ろうとする……まぁもちろん入らない。

 終わった。

 この一言に尽きる。後にできるのは俺が竜の視線を向けさせることだが、穴から抜け出すので時間いっぱいだった。俺の人生は再びここで終わるのだ。

 ……もう毒死は一回経験している。何を怖がることがあるのか。

 でも、死ぬのは辛い。出来れば死にたくない。

 俺方向に一直線に来たブレスを見て、とてつもない絶望とともに俺は最後にそう思った。

二周目のただの鯨です。

魔王さん様のキャラクター、アリエラ(ちゃん)とてもかわいいですね。ギャグパートもできるっていうのがまたいい! ギャグもシリアスも書きたい私としては最高のキャラですね。天才かよ。そんな私は今回もまだ新キャラが出せませんでした。三周目には出したいなぁ、どうなってるかによりますが……(笑)。ではエクレ飴様よろしくお願いします。三周目も楽しみです。

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