第三話:エクレ餡様
今回担当の“エクレ餡”様のマイページ『http://mypage.syosetu.com/1043618/』
「まさか装備が出来ないなんて、そんなはずは……いやでも確かに今剣は弾かれましたし」
リーネは困った顔を浮かべ呟く。
「武器が装備出来ないのは珍しい事なのか?」
リーネは俺の質問を肯定する。
「珍しいと言うより、普通はこんなことありませんね。伝説級の武器ならともかく、練習の剣数ある武器の中でも最弱クラスの武器なのでレベル1の人でも装備できる武器ですし」
リーネの言葉に俺は絶句する。もし仮にレベルを上げれば練習の剣が装備できるとしてもそれまではひのきのぼう以外装備できないなら、レベル上げも捗らない。もしレベルを上げても装備できないなら、それはもう最悪の展開だ。最弱装備縛りのRPG、考えただけでも嫌気が差す。
俺が困った顔で思案していると、リーネが
「とりあえず、レベル上げでもしますか?」
と提案してくる。確かに一人でレベルを上げるよりリーネに協力してもらった方が効率も良いだろう。
「そうだな、じゃあ手伝ってくれるか?」
「はい!でもその前に……」
「その前に?」
「お腹空きませんか?」
そう言ってリーネに連れられた場所は酒場だった。ファンタジーでよくある酒場。
「ここは見ての通り酒場です。私の幼馴染がここで働いているので紹介しておこうと思いまして」
そう言ってリーネはウェイトレスの子を手招きする。その子はリーネと目が合うと、小走りで駆け寄ってくる。
「リーネ、その人は誰?もしかして彼氏?」
その子のその台詞に思わず口に含んでいた水を吹き出しそうになる。
「ち、違いますよ!この方はユージンさんです。訳あって今同行しています」
「へぇーユージンねぇ。まぁまぁね」
「ユージンさん、こちらルクスです。この酒場でウェイトレスをしている私の幼馴染です。」
「よろしくなルクス!」
「よろしくユージン!」
「それで、今からユージンさんのレベル上げをしに行くのですが、ルクスも一緒にどうですか?」
「良いねぇ!面白そう!仕事が終わったら行くからそれまで待ってて!」
それから約二時間後、ウェイトレスの制服から着替え、軽めの鎧を装備したルクスが酒場から出てきた。
「で?レベル上げって言ってもユージンのレベルはいくつなの?」
「1だ」
俺のその言葉にルクスは腹を抱えて笑う。
「ハハハハハハ!1って!その年で1って!ヤバイうける!」
確かにこの年齢でレベル1って言うのはちょっとあれかもだけど、ここまで馬鹿にされると流石にちょっとムッとする。
俺が何か言い返そうとしていると横からリーネがフォローしてくれる。
「ちょっとルクス!ユージンさんは色々大変なのよ!異言語理解のスキルでもユージンさんの言語は理解できないし、ひのきのぼうしか装備出来ないしで。だから馬鹿にするのはやめてあげて」
「それマジ?ひのきのぼうしか装備できないって基本的な武器なら大体何でも装備できるはずだよ。例えレベル1でも」
「あぁ。少なくとも現状は練習の剣が装備できなかった」
その俺の言葉にルクスの表情はシリアスな物に一変した。
「そっか、馬鹿にしてごめんね!大変だと思うけど私も協力するから頑張ってレベル上げようよ!」
さっきまでふざけた奴だと思ってたけどこいつは以外と良い奴なのかも知れない。
それから三人で数十分程歩いて高い木が生い茂る、森に着いた。
「ユージンさん、ここはレンシュウの森。私たちの戦闘デビューは大体ここです。基本的に虫モンスターがたくさんいます。凄く弱くて小さい子供でも倒せるモンスターばかりなので私たちはユージンさんがピンチになったら助ける様にしますね。それでは頑張って下さい!」
リーネのその言葉を待っていた様に巨大なハチのようなモンスターが現れた。