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ひのきのぼうでも勝てますか!?  作者: リレー小説に参加して下さっている皆さま。
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第二話:只の鯨様

今回担当の“只の鯨”様のマイページ『http://mypage.syosetu.com/772004/』

 男達の間で理解できない言葉の応酬が続く。発音された言葉も理解できない。初めて英語を聞いた時の様に俺は会話から取り残された。

 それにしても長耳……これはあのエルフという奴らではないだろうか。魔法が得意なことで有名な異種族。

 通じない言語、エルフ、これは間違いなく異世界であることの証明……!

 正直、「異世界転生キターッッ!!」と叫びたい気分だった。……勿論本当にはしないが。

 やがて男達は首を傾げ、そして手招きをした。

 やはりジェスチャーは世界共通みたいだ。

 一応突然襲われる可能性も考慮したがさすがにそんなことは起こらないらしい。少し安心しながら俺はついていった。

 辺りに注意を払うと自然と聞こえてくる鳥の囀り、木々の形、重力に至るまで地球と似ている、というかそっくりだ。

 しかし地球での異世界転移系の小説と言えば地球にいた生物にプラスして特殊な生物が現れるのがお約束。これからに期待しよう。

 ところで歩くのに邪魔なんだがこの板どうやったら消えるんだろう。

 試しに色々やってみる。たしか「ステータス」に反応したのか……?

 試しに色々言ってみる。

「ステータス、ステータスクローズ。あっ消えた」

 クローズに反応したみたいだ。すごい技術だ。なんだか更にこの世界が不可解になった。

 そうこうしている内に森の中を抜けるとその眼下には街が広がっていた。

 どうやらこの森は少し小高い丘にあったようだ。見下ろす街並みはまぁまぁ広そうな街で人通りの多さから見てもこれは当たりの街かもしれない。

 丘を下り、街中に入る。

 行商人の呼び売り、追いかけっこをしている子供たち、牛みたいな体形のモンスターが荷台を引いている。今の生物は見たことないな、たぶん初めての異世界モンスターだ。

 街並みが西洋風なのもいい、外国に来たときのような不思議な高揚感がある。

 ……しかし一旦興奮が収まると今度は逆に不安が頭をもたげる。今俺を導いてくれるこの男性達はいい人かもしれないが彼らだっていつまでも善人でいてくれるわけじゃないだろう。

 そうなると俺は自らの自力でこの世界を生きていく必要がある。もしそれが無理なら先に待つのはたった一つの変わらない事実があるのみだ。もういい、考えたくもない。今はそうならない解決法を見つけるしかない。

 考えている内に彼らは目的地へついたようだ。俺は再び手招きされ、それに従った。

「教会……?」

 俺の独り言に男は反応するが首を傾げただけだった。やっぱり言葉はわからないようだ、まぁそれはそうだろう。俺だって男達の会話を一度たりとも理解できていないのだから。

 サイズ的にはそうでもないが、ちゃんと受付らしき人が立っていた。男達は時々俺のことを指差しながら何か話し込んでいる。

 再び手招きされ、俺は奥に進む男達についていった。

 開かれた扉から中に入ると、そこは礼拝堂があった。

 奥の方には穏やかな笑みを浮かべた女性の像があり、彼らはその像に対して片膝をついて両手を胸にあてた。どうやら今のが礼拝らしい。

 ちなみに俺は信徒ではないのでジャパニーズお辞儀をしておいたが正解は分からない。

 礼拝を終えたらしい男達が地面を指差した。どうやらここにいろ、ということだろう。

 宗教、それもまぁまぁ有名所みたいだ。ちらほらと数人の参拝者がいる。

 助かった……なんとかなるかもしれない。

 扉が開き、再び男達が戻ってきた。さらにもう一人連れて来たみたいだ。

 ……そこに現れた少女に、俺は心奪われた。

 美少女だった、しかも俺より相当若い。

「――――。――――?」

「―――――――」

「――――――」

 少女がこちらに来て話しかけ、思い出したように口を抑える。

 たぶんここからの相手は彼女なのだろう。

 少女は熱心にこちらにジェスチャーをする。

 まずはこっちを指差し、自分を指差す。

 空中に四角を描いて、指を前にフリックした。

 ……全然分からないぞ。

 しかしこんなところで必死な女の子を悲しませるのは人間として悪いので必死に理解しようとする、が一向にわからない。

 少女は少し困った顔で祈りのように拳を握った。

 まるでもう一度決意を固めたみたいだった。

 …………。

 うおぉぉぉぉ頑張れ俺の発想力ぅぅ!

 脳をフル回転させる。多分この場にあるものでなんとかなるんだろう。

 さっきやった動作をもう一度思い出す。

 あの箱みたいな動作、あれさえ解ければ理解できるだろう。

 この近くにある箱みたいなもの、または四角いもの。床タイル? いやそれなら床を指した方が早いよな? なら目に見えないもので四角いものか……。俺の頭か? いや俺の思考力は確かに固いからなんとも言えないがとりあえず閑話休題。

 この場にあるのに目に見えないもの、それは四角いらしい。

 ……ふと頭の中を何かがよぎった。

 そういや俺はつい最近それを見てないか? 初めてこの世界にたどり着いた時出てきた。

「ステータス!」

 突然大声を上げた俺に彼女がびくつく。

 そしと俺の目の前には、見事に1が並んだ自分を表す四角い板。

 よし、ビンゴ!

 俺は彼女に向けてそれを素早くスライドした。

 すぐに彼女が嬉しそうに跳ねる。どうやら正解だったらしい。

 しかし彼女の顔がまた曇った。

 少し不思議な顔をしながら再びこちらに向かって彼女は指をフリックした。

 俺のところにステータスが返ってくる。画面が切り替わり表示には「『異言語翻訳』スキルを獲得しますか?」と出ている。

 押せってことか。

 彼女が首を大きくふるのでとりあえず押すことにした。

 指が画面に触れたその瞬間、

 自分の中の何かがまるでスイッチを切り替えるように変わった。

 視認する世界に変化はない。しかし俺の中でこの世界は今明確に急変した。

「これで、いいのか……?」

 半ば確認を求めるように声を出す。

 そして俺はやっと変化を実感した。

「やっと喋れるようになりましたね」

 彼女が俺の言葉に明確に反応したのだ。

 満足げに美少女が満面の笑みを浮かべる。その姿に思わずドキッとした。

 少女は続けて言う。

「色々驚きでした。『異言語理解』のスキルにあなたの言語が登録されていないし……、その歳でレベルが1だなんて」

 一方的に話してすいません、と彼女は一度断りを入れた。

「改めて自己紹介しますね? 私の名前はリーネ。今はこの教会所属の見習い僧侶をしています。あなたは?」

「俺は悠仁(ゆうじん)、桜羽悠仁だ」

 名乗りあう。これが出来るのは大きな進歩だ。

「ユージン……いい名前ですね」

「リーネ、ありがとな。色々と」

 彼女はニコニコしながら当然のように返した。

「いえいえ、聖母神の友愛に基づいて我々聖母教徒は悩める人を全力でサポートしますよ」

 拳を握って意志の強さを表すリーネ、表情がころころ変わって面白い。

「ちなみに装備が『ひのきのぼう』なのは何故ですか? すいませんさっきいじってる途中で偶々見えちゃったんですが」

「え?」

 ステータスを念じて開き、確認する。たしかに『ひのきのぼう』が装備されていた。

 おかしいな。何か装備するなんて押した覚えはないけど。

 もしかしたら森にいる間にたまたま『ひのきのぼう』に触ったのかもしれない。

 リーネが提案する。

「じゃあ流石にずっとひのきのぼうでいるのは不便でしょうから何か変えましょうか? 確かここら辺に初心者用の剣があったはず……」

 程なくしてリーネが剣を持ってくる。

「じゃあ一回持ってみてください。そのあとこのステータスボードで武器を選択です!」

 リーネはすらすらと説明していく。言葉が通じるとこんなにも楽に作業できるらしい。俺はリーネの指示通り進め、アイテムから「練習の剣」を装備しようとして、

 手から剣が弾かれた。

「は?」

 もう一度手順を踏む。剣を武器として装備に……

 一部始終を見ていたリーネに話しかける。

「リーネ」

「なんでしょう……」

「装備出来ない」

 リーネは再び困った顔で祈りの拳を握った。

二話担当の只の鯨と申します。前作に引き続きよろしくお願いします!

待望の新作! 面白い設定ですね。特にステータス。VRゲームみたいな設定で使いやすそうです。

そして個人的に心配なのは主人公の名前、翻訳スキルを手に入れた都合上一気に自己紹介まで駆け抜けましたが……、名前が気に入らなければ是非なろうでリレー小説がしたい様か私にメッセージを。もしよろしければ悠仁とリーネでお願いします。

長くなりましたがまた二周目で。

読んでいただきありがとうございました!

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