━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 19
汗腺から吹き出す液体によって、どんな傷も癒す事ができる黒露大蛇だが、髭だけは別であった。元通りに生え揃い、再び震皇の力を存分に発揮できるようになるまで、最低でも一ヶ月はかかってしまうだろう。
とにかく今は、使える力だけで迎撃せねばならない。
【おのれぇ、ムシケラ如きが神に勝てると…………】
鎌槍を握りしぼって、突進して来た厳時の動きを見据える。まだ、震皇の能力は残っているのだ。いくら傷ついても即座に治すという不死身の汗がある限り、彼らの決定打は無きに等しい。最後の最後で泥沼の消耗戦を制するのは、この黒露大蛇をおいて他にない。
【思うなよおおおおおおぉぉぉ】
突如、相手の額から白い閃光が発せられる。またもや目くらましか。
黒露大蛇は一旦退いて間合いを空けた。しかし、様子がおかしい。相手も立ち止まったまま、追撃してくる気配が無いのである。
「これは一体、どういう事でしょう……?」
そう──、
厳時と利光の額に張り付いた、白露ノ大蛇の形見とも言える〝白い鱗〟が、二つ揃ってまばゆい光を発していたのだ。そして、彼らが見上げた先にあるのは、ぽっかりと浮かんだ黒い雲。
──その奥で三つ目の輝きが漏れている。




