━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 13
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太古の昔より、我ら[もののけ]は森羅万象の一切を司っていた。
いや──[もののけ]とは、後世の人間どもが我らを蔑む為に作った言葉である。それまでは、土地神と呼ばれ崇められてきた。
やがて、時を経るごとに傲慢になった人間どもは、己が尺度で、我ら[もののけ]を選り分けて、都合の悪い方を排除するようになった。
そうやって、[もののけ]が狩り出された結果、気候が激変して天下は滅びに瀕した。土地の管理者が突然いなくなったので、至極当然の事ではあった。
そこで、全国の土地をあるべき姿に戻す為に、一人の善良な人間と契約を交わす。
<もののふ>の契約とは元来、我らが管理する土地を人間と共に守る為のもの。一所懸命という言葉の語源もそこから来ている。
だが──愚かな一部の人間は、それを許さなかった。天下万民すべてのモノは、朝廷の持ち物だと主張したのだ。思い上がりも甚だしい。
故に我らは、天に代わって人間どもに制裁を与え、その上で新たな秩序を築こうとした。
それが──。
朝廷とやらを敵に回し、五十年もの間──戦った〝震皇ノ乱〟と呼ばれる出来事だ。
【愚かな人間どもよ、聞くがよい……吾輩の名は黒露大蛇、鎮西の神である】
そう名乗った彼の身体は、以前の姿をほとんど留めていなかった。
髪は残らず抜け落ち、肌はヌメヌメと真っ黒に艶めいている。ひょろっとした貧相なスタイルが、ゴツゴツと筋肉質なボディへと変貌し、身に纏う衣服はかろうじて牡丹色の袴が残っているだけであった。
先程までの光房が操っていた震皇とは、まるで違う。外見の肉体は差し置いても、それより顕著なのが圧倒的なプレッシャーである。さすが神を名乗るだけあって、桁違いのものだった。
「あいつが……、黒露大蛇……かよ」
「これからが、本番という訳ですかねぇ……」
さわやかで暖かな朝日の光が差し込んできた。しかし、それに似合わない一陣の激しく冷たい風が、大地に立つ三人の体温をさらってゆく。




