━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 11
穂先を弾き飛ばして槍の死角、すなわち太刀の間合いへ入り込んだ彼は、評の秘剣を独自に進化させた奥義を放つ。
正眼に構えた太刀が左へ流れるよう、まさに三日月を描き切った刹那。
ガラスの割れる音が響き渡って、辺りに白い霧が一瞬だけ立ちこめる。
「霧霜・三日月!」
評の秘剣である〝一振り三太刀〟は、本来<もののふ>の状態では乱用できないのだが、太刀を振るう動作を〝突き〟に短縮する事によって負担を無くし、何度も使用可能にした。
それが──三日月という技である。
すぐさま霧は拡散され、背を合わせた両者の状況が明らかになる。
「ぐっひゃああああああぁぁぁ」
耳障りな絶叫を上げた光房の身体に、太刀で刺したと思われる傷が三ヶ所あった。いずれも急所を確実に貫いており、更にその患部は凍傷に近い症状をあらわしていた。
「なんだよこれはァ……、寒いよォ、いたいよォ!」
傷口から染み渡った寒気によるものか。光房は、奥歯をガチガチ鳴らして苦痛に喘いでいるものの、びしょびしょに濡らす妖しい汗による驚異的な治癒能力を発揮させ、またもや復活を遂げるつもりだ。
だからこそ、利光は容赦無く追い打ちをかける。振り向きざまに放ったその能力は、双七にとって因縁深いモノだった。辺りの空気は急激に冷えてゆき、世界は白一色に染まる。
「さらばだ……、銀世界で地獄へ旅立つがよい!」
さすがの震皇と言えども、冬将軍の二大必殺技を連続で受けては、ひとたまりも無いだろう。視界が戻った時、光房は白い氷の彫像と化していた。地震がぱったり止んだのは、彼が息絶えた証拠なのか。
「終わりましたかねぇ?」
今まで身動きの取れなかった二人が、ゆっくりと立ち上がる。
「終わったのだ……」




