━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 7
そして、身体に不釣り合いな豪腕で大薙刀を振り回し、下段に構える厳時。
利光も太刀を正眼に構え、口元に引き寄せた刀身へ冷気を吹き付けた。
だが、臨戦態勢の二人に対してそっぽを向いた双七は、
「やってらんねぇ、オレは戦わねぇぜ……」
腕組みしたまま、背中の大太刀に触れようともしなかった。
「何を言うのですか。アナタも白露様の遺志を継いだのですよ。三人一緒にならな……」
「コイツはっ、コイツは……っ、その白露様を殺した張本人だろうがっ! オレの師匠も殺されたんだっ! はいそうですねって、一緒に戦える訳ねぇだろうがよぉ!」
厳時の言葉を乱暴に遮り、彼は怒鳴った。その言い分も無理からぬ事ではある。
「気持ちは分かりますが……、白露様が選んだのですよ。まぁ……、そこまで逆らうというなら、仕方ありませんね。あとでキサ君にたっぷりと……」
「おっと、キサは意識を失ったまんまだ。残念だが、その手は通じねぇぜ」
そう、癒しの息で意識を取り戻したのは双七だけであった。震拳を受けた時に身体を操っていたキサの方が、ダメージが大きかったようだ。ついでに、纏火もずっと消えたままである。
「無理強いしても仕方あるまい……、好きにすればよい……」
「けっ……、言われなくても勝手にしてやらぁ」
当の加害者である利光は、気の利く言葉をかけるどころか冷淡に突き放した。二人は、ますます険悪な雰囲気になってゆく。
「まだかなァ、もう飽きたからヤッちゃうよォ?」
「まぁ……、いいでしょう。イキますよぉ!」
暇そうに鎌槍で肩をトントン叩く光房へ向かって、厳時が大薙刀を大きく振るった。
純粋な剛力にて空気を切り裂いた衝撃波が、敵の腰掛けていた岩だけを砕く。
「ゆくぞ……、霜風」
続いて、利光が動く。トン、トン──と、軽く跳ねるように距離を詰め、彼の握った太刀が垂直の弧を描いた。
縮地を使って姿を現したばかりの光房に、絶妙なタイミングで振り下ろされる刃だったが、
「あまァい!」
鎌槍で防がれてしまった。されど、この霜風をうまく受け止めたとしても、魂の底まで凍える強烈な寒気が襲いかかる──はずなのだが、なぜかケロッとしている。
さすがは震皇、並みの<もののふ>とは格が違い過ぎるというべきか。




