━━━第六章・名と狐火を継ぎし弟子━━━ 12
「予は……、従一位鎮西将軍・評 利光であるぞ。そちの名を聞こう、名乗られよ!」
間合いを離して振り返りつつ、正眼に太刀を構え直した利光が、鋭い声で言い放った。
対峙する狐火の<もののふ>は、草鞋から露出している紅い足爪を地面に食い込ませ、ぐっと腰を落とす。
「オレか……? オレの……<もののふ>の字は……」
キツネの耳がちょこんと飛び出た赤髪は、周囲から沸き起こる炎によって、ふわりと舞い上がった。額の〝白い鱗〟が、より一層の輝きを放つ。
「……紅蓮小僧だ!」
続いて、双七郎改め──稲薙 双七。覚悟を決した気迫の名乗りだった。
「ほぅ……。ようやく<もののふ>となって、師匠の名を継いだという訳か……」
「なんで仇のてめぇがっ、オレの事情を知ってるんだっ?」
有り得ない事だった。利光の言葉を聞いて目を丸くした彼は、ストレートに問いただす。
「言ったはずだ。予が<もののふ>になった時点で、雪音の記憶も得られるのだと……」
「そうかよ……、なら話が早くていいや。師匠の恨みを、ここで晴らしてやるぜぇ!」
あっけなく謎は解決し、双七は吹っ切れた。
師匠の大太刀を右後ろへ構えると、足爪を差し込んだ大地から紅い光があふれてゆく。
「来るがよい……」
クールに呟き、正眼に構えた刀身へ息を吹き付ける利光。
「くらいやがれええええええぇぇぇ」
爆裂爪の効果で地面が爆音と共に砕けた。爆風に押されてスピードが倍加した双七は、右から水平に大太刀を薙ぐ。
豪快で大振りな一撃だ。神威で受けても良いが、万が一にも砕かれたら面倒な事になる。
「受けよ、霜風……」
跳び上がって避けると共に、利光は綺麗な縦線を描く真っ向唐竹割り。
「まだまだぁ、これでどうだああああああぁぁぁ」
再び、双七の足爪が差し込まれた地面が弾け飛び、爆風に乗った彼の身体が目前に──。
「なにぃ……」
完全に意表を衝かれて太刀筋がブレた利光に、彼の頭突きが見事に炸裂。なりふり構わない不格好な体当たりだ。
両者、姿勢を崩して大地に激突する。
「まっ待て……、なんたる不作法……」
若干よろけながらも構えを直す利光が、珍しく文句を口にし、
「おいおい、戦いに作法もへったくれもあるかよ?」
バク転して素早く立ち上がった双七は、やれやれと肩をすくめる。
「……一騎打ちは<もののふ>の華。美しくあるべきぞ!」
「知らねーよ。オレは勝てばいいんだっ! てめぇさえブッ倒せば、それでいいんだよぉ!」
「…………ならば、本気で神威の力を使うとしよう」
利光の目つきが変わった。辺りの温度が急激に下がってゆく。
「使ってみろよ?」
それに対して、紅い足爪を地面に突き刺した双七は、気合いの音声を上げると共に身体中の炎を燃え上がらせる。
ついに登場、<もののふ>紅蓮小僧!




