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━━━第六章・名と狐火を継ぎし弟子━━━ 11



          * * *


 凄まじい威力を持つ銀世界。

 これまで、束になって挑んできた十把一絡じゅっぱひとからげを瞬時に葬ってきた、便利な能力である。一撃必殺として絶対の自信を持っていたのだが、今回はなぜか妙にひっかかる。

 白い煙に視界を奪われたこの場所で、こおりの 利光としみつはずっとたたずんでいた。

 龍のひげを切り落としたと伝わる宝刀を、未だにたずさえたまま──。

「静かだ…………」

 先程まで、気が狂ったような金切り声が何度も聞こえて来たのに、ぱったりとんでいる。

 まさに嵐の合間の静けさのようで、次に訪れるのは一体何であろうか。元服以来、名立たる[もののけ]どもを討ち取ってきた五年の経験が、彼に最大級の警鐘を鳴らす。

「どこから来る…………?」

 刀身に冷気の吐息を吹きつけ、上段にやや持ち上げて構えた。

 ゆっくりと目を閉じ、研ぎ澄まされた感覚の網を張る。

「………………きたか!」

 右後ろにプレッシャーを感知した利光としみつは、振り向きざま太刀を横へ倒してかざし、そのまま受け止める。

「なっ、なんだこれは……」

 大上段からのとてつもなく重い一撃だった。

 神威かむいをも打ち砕きそうな、激しい紅蓮ぐれんの炎に包まれたおお太刀だち。それが──深い冷気を含んだこちらの太刀に干渉して、強烈なエネルギーを発生させた。次に、隠れ里を包み込む煙を跡形も無くかき消すほどの突風となって、一気に拡散。

 恐るべき相手の姿も、同時に明らかになる。

「うおおおおおおぉぉぉ」

 真っ赤な髪を振り乱し、一本の大きな尻尾が金色こんじきえる。

 若竹色の布地にシンプルなかえで文様もんようえられた直垂ひたたれを、なかおおかくすようにまとわりつく炎は、まるで甲冑のようにも見え──。

神威かむい……だと、バカなっ!」

 おそらくは、圧倒的なパワーでねじ伏せるタイプの<もののふ>であろう。信じられない事だが、神威かむいなら非常に厄介である。

 利光としみつは、全体重を押し出して力業ちからわざに持ち込もうとする相手の勢いを利用し、太刀を流れるように引いた。やいばが滑り合い、お互いの身体が交差し行き過ぎる。

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