━━━第六章・名と狐火を継ぎし弟子━━━ 11
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凄まじい威力を持つ銀世界。
これまで、束になって挑んできた十把一絡げを瞬時に葬ってきた、便利な能力である。一撃必殺として絶対の自信を持っていたのだが、今回はなぜか妙にひっかかる。
白い煙に視界を奪われたこの場所で、評 利光はずっと佇んでいた。
龍の髭を切り落としたと伝わる宝刀を、未だに携えたまま──。
「静かだ…………」
先程まで、気が狂ったような金切り声が何度も聞こえて来たのに、ぱったりと止んでいる。
まさに嵐の合間の静けさのようで、次に訪れるのは一体何であろうか。元服以来、名立たる[もののけ]どもを討ち取ってきた五年の経験が、彼に最大級の警鐘を鳴らす。
「どこから来る…………?」
刀身に冷気の吐息を吹きつけ、上段にやや持ち上げて構えた。
ゆっくりと目を閉じ、研ぎ澄まされた感覚の網を張る。
「………………きたか!」
右後ろにプレッシャーを感知した利光は、振り向きざま太刀を横へ倒してかざし、そのまま受け止める。
「なっ、なんだこれは……」
大上段からのとてつもなく重い一撃だった。
神威をも打ち砕きそうな、激しい紅蓮の炎に包まれた大太刀。それが──深い冷気を含んだこちらの太刀に干渉して、強烈なエネルギーを発生させた。次に、隠れ里を包み込む煙を跡形も無くかき消すほどの突風となって、一気に拡散。
恐るべき相手の姿も、同時に明らかになる。
「うおおおおおおぉぉぉ」
真っ赤な髪を振り乱し、一本の大きな尻尾が金色に映える。
若竹色の布地にシンプルな楓の文様が添えられた直垂を、半ば覆い隠すようにまとわりつく炎は、まるで甲冑のようにも見え──。
「神威……だと、バカなっ!」
おそらくは、圧倒的なパワーでねじ伏せるタイプの<もののふ>であろう。信じられない事だが、神威なら非常に厄介である。
利光は、全体重を押し出して力業に持ち込もうとする相手の勢いを利用し、太刀を流れるように引いた。刃が滑り合い、お互いの身体が交差し行き過ぎる。




