表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/105

━━━第六章・名と狐火を継ぎし弟子━━━ 1




 信じられない光景が広がっていた──。

 双七郎そうひちろうは、呆然ぼうぜんと口を開けて眺めている。そのショックは計り知れないだろう。

 隠れ里のあちこちで、怒号どごう剣戟けんげきの音が響き渡っている。見上げれば、赤々と燃え盛った空。緑の天井が空襲によって炎に包まれたのだ。そこから火の粉が飛び散ったのか、火事になっている住居も多かった。ただし、これは予定外だと敵がざわめいていた事から、空襲は指揮系統のアクシデントらしい。

 攻め入ってきた地上の敵は、一人一人が恐ろしく強かった。あっという間に、里人さとびとの半数が捕縛ほばくされたのだ。お多満たまオバサンと塗壁ぬりかべが合体した<もののふ>、そして大剣豪だいけんごうと称される猿宝斎えんぽうさいの二人が中心となり、隠れ里の残った強者つわものを集めて必死に抵抗しているが、明らかに劣勢である。ひざを屈するのは時間の問題だと思えてならない。

 キサはそんな状況を、双七郎そうひちろうの首に巻き付きながら見ていた。いまだ気を失ったフリをしているが、いわゆるタヌキ寝入り。キツネなのにというツッコミは却下である。ズタボロだった身体は直ちにお雪がいやしてくれたので、意識を取り戻すのも早かったのだ。しかし、その命の恩人は今、目の前に広がる信じられない光景の一翼を担っている。

 キサにとって、それは都合の良い事なのは間違いない。なにせ最大の恋敵こいがたきが消えたのだから。

 ただ、彼女の心中は複雑だった。


 全ての記憶を取り戻していたお雪は、

 炎けぶる隠れ里で──、

 双七郎そうひちろうとキサの目前で──、

 師匠の憎きかたきであるこおりの 利光としみつと──熱い口づけをしていたのだ。


「なんでだよ……お雪さん、なんでそんな奴なんかと……」

 内蔵を鷲掴みにされたようなうめき声で、双七郎そうひちろうは我知らずつぶやいていた。

雪音ゆきね……。はずっとそなたを待っていた……」

「……お殿さま……夢にずっと出てきました。今のような白衣を着て……わたしを迎えに来てくれるんです……」

 ギャラリーがいるにも関わらず、二人だけの世界にひた利光としみつ雪音ゆきね。そんな彼らに外界からの声が届くはずも無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ