━━━第四章・月下に揺らいで━━━ 5
「断じてさせないっスよ! キサちゃんは必ずオイラ達が助けるっス!」
鼻息を荒くしながら、熱血ヒーローの如く拳を突き上げる空吉。
(……そりゃそうだもんな)
彼とキサがイチャイチャして肌を重ね合わせている所を想像し、どうしようもない怒りが込み上げてきた双七郎は、
「一人で勝手に行けよ、オレは知らねぇ……」
心にも無い事を口に出してしまう。
「何言ってんっスか! あんたが行かなきゃ始まらないっスよ!」
「キサはしばらく殺されないんだろ? 今すぐじゃなくてもいいだろうがっ」
「お嫁に行けない身体になってしまうっスよ。それでもイイんスか?」
「かまわねぇよ! 困るのは、てめぇだけじゃねぇか!」
誰か止めてくれ。腹の底から沸き出てくる黒いムカつきが、次から次へと口から出ていく。
もう何を言ってるか、双七郎自身でも分かってなかった。
「なんで……、なんでオイラだけが困るっスか? 訳分かんないっスよぉ!」
「トボけんじゃねぇよ! てめぇとキサは恋人なんだろ? 秘密特訓してるんだろ?」
「は……? 何言ってるんスか、あんたは……? 勝手に勘違いして嫉妬っスか? カッコ悪りぃっスよ」
「ざけんなっ! なんでオレがクソギツネで嫉妬しなきゃならねぇんだよ! あんなガサツですぐ暴力に訴える奴なんか、女じゃねぇんだよぉ! 妹みたいなもんだから……、嫌々付き合ってやってるだけだぜぇ!」
図星を指され、ますます意固地になって怒鳴り散らす双七郎。
「本気で…………、本気で言ってるんスかああああああぁぁぁ」
「はっきり言ってマジだぜ? なんか文句あっかよぉ!」
俯きながらワナワナと強く拳を握りしめ、空吉は静かに歩み寄ってくる。
「歯ぁ、食いしばるっスよぉ!」
「あん?」
勢いよく踏み込んだ空吉の姿が見えた途端、衝撃と共に視界が揺らいだ。派手に吹っ飛ばされた双七郎は、じんわり痛む左頬を押さえながら立ち上がる。
そして──、
「ち……っ、きっしょう……、てめぇもう許さん! ぶった斬って……」
師匠の大太刀に手を掛けつつ、空吉の方を見据えたが──、
まさに青春。恋愛王道ライトノベルっぽい展開です。
あの時は若かった(?)




