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━━━第三章・キツネの嫁入り黒き影━━━ 18


 一方、最後の切り札が通じなかった光房みつふさは、太刀を地面に突き刺して体重を預けつつ、肩を上下させていた。彼の尻尾が半透明に──いや、全身がぼやけている。こおりの秘剣がもののけ[もののけ]に大きな負担を掛け過ぎたので、今の状態を維持する事が難しくなっているのだ。苦虫を潰した顔で、途切れ途切れ、驚くべき言葉をつむぎ出してゆく。

「伝説……の……<もののふ>……、震皇しんのうにさえ……なれば……、キミなんか……っ!」

「なんやて!」

 猿宝斎えんぽうさいの目が丸くなった。探し求めていた謎が意外な所で明かされ、さらに真犯人が呆気あっけに取られるほどの小物だった──という、あまりにも拍子抜けな事実に戸惑いを隠せない。

「あんさんが……、黒幕やった訳かいな……?」

「そのとおり……さァ!」

 念を押す猿宝斎えんぽうさいに同意を示した光房みつふさは、力尽きて前のめりに倒れる──かと思った直後、地をうギリギリの低姿勢でダッシュ。

 まっしぐらに猿宝斎えんぽうさいへ突っ込んでゆく。

「ワテが引導を渡してやるさかい、地獄で罪をつぐないやぁ!」

 わずかに意表をかれたものの、しなやかな筋肉を流れるように動かして必殺の構えをした猿宝斎えんぽうさい。その目はしっかりと、敵の急所を見据みすえている。

「ほな、さいならぁ!」

「くーっ、ひゃっはーぁ! 第二尾・けむりの真髄を思い知るがいいさァ」

 光房みつふさを中心に、黒くて巨大なキノコ雲が立ち上った。地上は一瞬で、真っ黒な煙におおわれてしまう。

「ワテに同じ手は通じへんでぇ!」

 規模こそ桁違いだが、光房みつふさが初手で仕掛けたパターンとまったく一緒である。視界がいくらさえぎられようとも関係ない。猿宝斎えんぽうさいは先程と同じように、数多くの修羅場をくぐり抜けて研ぎまされた感覚の網を張る。

 だがしかし──。

「…………しっ、しもおーたぁ!」

 猿宝斎えんぽうさい──一生の不覚であった。敵は、ハナから逃げるつもりだったのだ。

「ずっとそうしてるがいいさァ! とりあえず、このコギツネちゃんを仕込んだら、必ず復讐してやるからねェ! くーっ、ひゃひゃひゃひゃひゃっはっーはっーはっー」

 気を失ったままのキサを抱きかかえた光房みつふさは、いつまでも続きそうなバカ笑いだけを残して姿を消した。すぐさま追おうした猿宝斎えんぽうさいだったが、ふと足を止める。怪我人をここに放置しておく訳にはいかない。

 煙が晴れた時、空はもう薄暗くなっていた。

実は、こ~んな小物が黒幕だったんデス。

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