━━━第三章・キツネの嫁入り黒き影━━━ 7
あそこまで強かったのか。
女二人の戦いを見ていた双七郎は、キサの意外な強さに驚いていた。想像以上である。
「う……、こ……っの、ガキぃ!」
木の幹に爪を食い込ませて身体を支えてる年増女は、まさに血まみれでズタボロ。いくらド根性を発揮しようが、もう戦えそうにない。
一方、落ちた場所が草むらでしかも受け身を取っていた為、ダメージは少なかったキサ。
「あはははっ、空吉との秘密特訓が効果あったみたいね。あんたみたいなババァ、あたしの敵じゃないわよ」
得意気に話すその言葉に、双七郎は目を丸くした。初耳だった。
確かに、あいつは──空吉はモテるらしい。そのような噂も、いくつか耳に入ってきていた。されど、まさかキサと付き合ってるとは、夢にも思わなかった。
「調子に乗ってんじゃないわよ、クソガキがっ! もう許さない、引き裂いてやるっ!」
「やってみなよ、くそババァ」
いきりたつ年増女から視線をそらす双七郎。キサの背中も見たくなかった。女というイキモノに、得体の知れない疑念と恐怖を感じたからだ。
「きええええええぇぇぇ」
狂ったような奇声を上げて、年増女が駆け出した。なんという精神力──いや、もはや執念と言うべきか。その両手にしっかりと短剣を握り、狙いはキサの腹部。
だが、キサはそれを冷静に見計らい、ぎりぎりまで引き付けてから左下へ身体を沈めた。続いて、狙いすました足払いが見事にヒット。
「あぁっ」
年増女は無様に倒れ込む。キサはそこへ、トドメとなる渾身の爪を繰り出した。
「これで終わりよっ」
「そうは……」
うつ伏せで倒れていた年増女は、背後に迫り来る必殺の一撃を感じ取り、何も考えずに素早く横へ転がった。地面をえぐったらしい破裂音が響く。
「いくもんですかっ……ハァハァ」
とにかく、転がって転がりまくって、間合いを離したと思われる地点で、年増女はなんとか立ち上がった。しかし、何度かふらついて近くの木に寄りかかる。




