━━━第八章・氷炎の仇討ち━━━ 終
筆名・嵯峨 卯近
ワープロ原稿紙 A4・39字詰め34行 / 126枚
※2009年に、とある新人賞へ応募した小説で、同時に人生初の長編作品です。
結果は、一次選考突破で二次選考落選でした。
話の作り方が強引なのと、キャラ視点がブレているのと、和風世界なのに現代用語使いまくりで違和感が激しいのと、問題点が結構あります。
あと、あらすじは当時の応募規約に則って書いたもので、思いっきりネタバレになっております。
以上の注意点を踏まえて、長々とした拙い小説ではございますが、読んでいただけると幸いです。
「邪魔すんじゃねぇ! オレは、師匠の仇を取らなきゃならねぇんだ!」
「でも、あんたの師匠は仇討ちなんて望んでないんでしょ? バカアニキが伝えた遺言を忘れたの?」
「うっせぇ、それじゃあオレの気が済まねぇんだ! そこどきやがれっ、女子供の出る幕じゃねぇんだよ!」
しがみつくキサを横へどかそうとしたが、ダメージを溜め込んだ身体が思うように動かない。
「ほらぁ、その女子供に支えてもらっといて何言ってるのよぉ!」
足がもつれてコケそうになった双七を、キサが横で抱きかかえた。
あまりにも情けない己に腹が立った彼は、
「うっせぇ……、うっせぇ…………、うっせぇよっ、ちっきしょう!」
子供が駄々《だだ》をこねるように暴れ出した。
「ちょっ、ちょっとぉ、動かないでよぉ! きゃあ……っ!」
弱っているとはいえ、男の強い力に抗えるはずもなく、彼女も一緒に倒れてしまう。
そこへ──、
「ならば、予が無条件で命を差し出せば……、気が済むのか?」
微妙な具合に絡まった二人を冷たい目で見下ろしつつ、利光はとんでもない事を言い出した。
「ぇ…………お殿さまっ、そんなのダメですぅ!」
口を両手で覆いながらびっくりした様子の雪音が、袖を何度も引っ張る事で抗議活動をする。
「フザけんじゃねぇ! んな事で、気が済む訳ねぇだろうがよぉ!」
「だろうな……、そなたの本音は仇討ちではない……」
「何言ってやがるっ、オレは…………」
「予と存分に戦い……、実力で上回りたいのであろう……、違うか……?」
利光はずばりと、自分でも分からなかった真意を当てた。悔しいが、その通りであったのだ。頭にガツンと食らわされたようなショックで、ただ呆然と立ちつくす。
「そうだよ…………、ちっきしょ……う」
敵を知り、己を知れば、百戦危うべからず──との言葉がある。今の双七に当てはめれば、敵を知るどころか、己が事すらロクに知らないのだ。どうしようもない敗北を直感した事によって、口惜し涙がどんどん溢れ出してくる。
「今のそなたにくれてやるほど……、予の命は安くない……、精進を重ねて強くなるがよかろう……、さすれば、いつでも受けて立とうぞ……」
「ちっき……、しょおおおおおおぉぉぉ」
無様に男泣きする双七。緊張の糸が切れたのか、すぐさま意識を失って後ろへ倒れ込んだ。それをしっかりとキャッチしたキサが、
「もぉ、ほんとバカなんだからぁ……」
満ち足りた表情で尻尾をパサパサ振りながら、彼の頭を撫でる。
「どうやら一件落着のようやな。ほんまどうなる事やと思うたでぇ……」
「青春ですよねぇ……、うらやましい限りです。私めも分けてもらいたいものです」
遠い目で、彼らの成り行きをいつまでも眺めている猿宝斎と厳時。
初雪は──白露様が微笑んでいるかのような安らぎを含んで、この鎮西地方の為に生死を賭けて戦った全ての者を優しく慰めるように、まだまだ降り続けるのだった。
了
もののふかたり、
ついに完結と相成りました。
まことに見苦しい小説ながら、長々とお付き合い戴きまして、ありがとうございました。
最後に、
新人賞公募原稿用として添えて送ったあらすじを書きます。
もし、新人賞に応募されるのでしたら、何かのご参考になればと思います。
梗 概
元服間近で望まぬ初陣を迎えた双七郎は、師匠の最期を眼に焼き付ける。必ず、仇は取ると誓った彼は、ひたすら強くなる為に励む。そして、一年が過ぎ去った。
されど、彼は未だに行き詰まりを感じていた。そう、[もののけ]が跳梁跋扈するこの世界において、武芸を極める為には<もののふ>に成らなければならない。それは、人間と信頼関係にある、[もののけ]と合体する事によって初めて成り立つもの。師匠に拾われ、兄妹のように育ったキサという狐の、[もののけ]を見ながら、憂鬱な溜息をつく。
朝敵の汚名を着せられ、隠れ里でひっそりと暮らす双七郎とキサに、おつかいを頼む長老。しぶしぶ従った彼らは、目的を果たす途中で憎むべき仇の兄に襲われ、キサがさらわれてしまう。ひょんな事から知り合った、長老の相方である鮨屋台のオヤジが、黒き神の封印が絡んだ巨大な陰謀説を語る。それを打ち砕くには、師匠と共に朝敵として征伐された、この地方の守護神である白露様が遺した三枚の鱗を揃えなければならない。
キサの救出と引き替えに、隠れ里が精鋭部隊に襲撃される。指揮を取るのは、師匠を殺した憎き仇、この鎮西地方を支配する評 利光であった。しかし、本当の黒幕は彼の兄である事が明らかになり、全ては陰謀通りに。黒き神を蘇らせ、その力を存分に振るう<もののふ>が、世界を破壊しつくそうと牙を剥く。
一方、紆余曲折を経て三つの鱗が揃った。その力を以て強大な敵に立ち向かう三人の<もののふ>。キサと合体した双七郎。その仇である評 利光。最後に隠れ里の長老だった碓氷 厳時。追いつめられた彼らの一か八かの賭けが功を奏し、黒き神は消滅した。だが、全てが終わった訳ではない。師匠の仇を討たねば。と、今一度奮起する双七郎に対し、強くなれば挑戦を受けると告げた評 利光。満身創痍の彼らに、初雪が降りしきる。




