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怪しい病院

夕方

「はあ……やっと家に着いたよ。今日は変なことばっかり」

なんとか無事に自宅に帰り着いて、メイはほっとする。

学校を出てからも、通学路や電車内で何人もの男女に襲われたのだった。

持ち前のフットワークのよさと、なぜか彼らが目を瞑っていたりしていたのでなんとか逃げ切れたが、

襲い掛かってくる者たちはゾンビのようにしつこかった。

まるでいきなりホラー映画の世界に放り込まれたようで、恐ろしい。

「でも、映画だと家に帰ったと思ったら、またオバケが出たりするんだよね……」

おっかなびっくり家に入ったら、台所で夕食の準備をしている母親の後姿が目に入った。

「ママ、ただいま」

「あら。メイちゃん。おかえりなさい」

振り返ってにっこりと笑う母親は、いつもどおりだった。

ちゃんと目を合わせて返事をしてくれる。

「ねえ……ママ、聞いてよ。今日……」

メイが話している途中で、母親の笑顔が凍りついていく。

そのまま前のめりに倒れていった。

「ちょっ……ママ、どうしたの? 」

あわてて倒れた母親に駆け寄って体を揺するが、何の反応もない。

それどころか、その体がどんどんと固くなっていった。

「き、救急車をよばなきゃ! 」

あわてて119番する。

「あ、あの、お母さんが倒れて、体が固まって……」

動揺しながらも、なんとか説明を終える。

「わかりました。すぐ救急車を向かわせます」

「お、お願いします」

電話を切ったメイは、救急車が来るまで母親の手をずっと握っていた。


「あの男と同じ症状で倒れた人がでたと119番通報が入りました」

あらかじめ救急隊に話を通していたので、『新誠組』に情報が伝えられる。

「よし、その患者はこちらで引き受けるぞ」

彼らは急いで通報があった家に向かう。

家に着いたら、真っ青な顔をした美少女が母親の手を握っておろおろとしていた。

「や、やっと来てくれた。お母さん、もう大丈夫だからね! 」

母親を励ましながら、メイは到着した救急車に乗り込む。

「いそいでください! 」

「はい。患者は40代女性。体の硬直化が見られますが、呼吸は安定しています。意識はありません。はい。わかりました。そちらに向かいます 」

無線を切った救急隊員は、メイに近づいて話かけてくる。

なぜか彼らは全員サングラスをしていた。

「お嬢さん。この車は今から日元総合病院に向かいます」

「日元総合病院? 」

メイは首をかしげる。この街にそんな病院があるとは聞いたことがなかった。

「島根県にある病院ですよ」

隣の県にあるといわれて、メイはびっくりしてしまった。

「なんでそんな遠いところに! 救急病院なら近くにいくらでもあるじゃないですか! 」

つい語気荒く救急隊員に迫ってしまう。

「……他ではちゃんとした治療が受けられないからです。今日の朝にも同じような症例の患者が運ばれましたが、どこの病院でも治療できず、最後にはそこに運ばれました」

彼らのリーダー格の30代の男に言われて、今日の朝の事を思い出す。

(も、もしかして……それって朝のちかんおじさんのこと? )

真っ青になったメイから、救急隊員はプイッと顔を背ける。

「あの、なるべくこっちを見ないように。我々は処置に集中しないといけませんから」

それだけ言い捨てると、救急隊員はメイを放置して母親にかかりっきりになる。

メイは不安を感じながらも、おとなしく彼らにしたがっていた。


救急車は三時間ほど走り、島根県の片田舎につく。

そこには中規模の真新しい病院が建っていた。

「あの……ここは……?  お父さんに連絡していいですか? 」

救急車から降ろされた母親は、あっという間に病室に運び込まれる。

待合室で待たされているメイは、なぜか自分に付き添っている救急隊員の男に言う。

見知らぬ土地に、倒れている母親。メイの不安はどんどん大きくなっていった。

「連絡ですか? そうですね……我々が迎えに行きましょう。夜中ですし、ここの場所をご家族以外に知られるのもまずい」

「えっ? 」

「ここは、特殊な病院なのです。今の段階ではここの住所を一般の方に公表することはできません。貴方も今日はこちらにおとまりください。部屋に案内しましょう」

男は一方的にそういうと、近くの看護婦に命令する。

「佐藤メイさんをお部屋にご案内して。……決して部屋から出さないように。おっと。危ないからこれを付けなさい」

男はポケットからサングラスを取り出すと、看護婦に渡す。

「は、はい。それでは佐藤さん……こちらに……」

なぜか怯えた表情の看護婦が、メイを連れて行こうとする。

色々とおかしなことを感じて、メイはますます不安になるのだった。


看護婦についていったメイは、さらにおかしな点に気づく。

入院患者のほとんどが手足がなかったり、目に包帯をしていたりするのである。

「さあ、頑張りましょうね。あと少しで歩けるようになりますよ」

優しく車椅子を押す看護婦に、患者は感謝の声をあける。

「本当にありがとうございます……ここじゃなかったら、一生車椅子のままでした……あと一ヶ月で足が生えてくるなんて……」

そういう患者の両足は、事故でも遭ったかのように切断されていた。

「あの……どういうことなんですか? 足が生えてくるって……」

「当病院の特殊な治療『リボーン』です。あちらを見ないでください! 危ないですから! 」

慌てて看護婦は患者たちを隠すように、メイの前にたった。

「み、みないでって……」

「後から説明があります。今はとにかくおとなしくしていてください」

彼女の声は、なぜかメイを恐れるかのように震えている。

メイは釈然としない思いを抱えながら、彼女についていくのだった。

何の変哲もない個人用の病室をあてがわれる。

「あの……お母さんの側についていてあげたいんですけど……」

「申し訳ありませんが、現在処置中です。あなたは危険なので、この部屋から出てはダメです。もう少しで『封印』できる人が来ますので、それまでおとなしくしていてください」

「き、危険って……なんですか? それに『封印』って? 」

意味不明のことを言われて、メイはいぶかる。

「な。なんでもありません。それでは、私はこれで……」

看護婦は逃げるように去っていき、部屋にはメイが取り残された。

テレビも何もない部屋だったので、やる事もなくメイは外を眺める。

しばらくすると、真っ黒い車が病院に到着してきた。

「えっ、あの人たちの格好って……」

降りてきた男達は、全員が黒いスーツにサングラスの怪しい姿だった。

「ブラック○ン?  も、もしかして、私たちって誘拐されちゃったの?」

昨日聞いた話が思い出される。

「なんとかして脱出しないと……」

メイは窓から離れ、入り口近くに身をかがめて隙をうかがった。


本編はこちらになります


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活動報告に「反逆の勇者と道具袋」11巻と文庫版1巻の情報を載せました


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