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最弱勇者

因幡神社。

元の姿に戻ったシンイチが、空から降りてくる。

「すごい! さっすが私のお兄ちゃん」

「うふふ。私のご主人様はすごいわねぇ」

ミスリは飛びつき、宇美は微笑む。

「わーい。パパって強い! 」

シンイチの子供であるケンイチとラミも、強い父親に感動して抱きついてきた。

対照的にメイは容赦のないシンイチにドン引きである。

「こ、この人って何者? あんなスプラッターなことをして……怖い」

「キャハハ、怖がらなくていいよ。今のシンイチはメイちゃんより確実に弱いから」

そんなメイの肩に止まって、シルフが話しかけてきた。

「よ、弱いって? 」

「うん。戦っているときはチート道具を使いこなす最強の男。でも逆に戦わないときは、ナイフ一本で倒せるほど弱く、だけど優しい恋人や兄や父親。これこそが、強大な力を制御できる理性を持った、真の勇者なんだよ」

シルフの言葉通り、ミスリや子供達と接している時のシンイチは、勇者と言われても信じられないほど平凡な男だった。

その時、シンイチの携帯がなる。

「はい。もしもし」

「おい! こっちにスプラッターな物体が現れたぞ。天界をゴミ捨て場所にしないでくれよ」

シンイチに苦情を言う、絶対神ゼウス―居永弘雅。

「それくらいいいだろ。俺の戦いを見て楽しんでいたくせに。生ゴミの後始末くらいやってくれ」

「まったく。君にはかなわないよ。油断しているとすぐに嫌がらせをしてくるんだからな……」

弘雅はブツブツと愚痴をこぼす。

「ギャー! 汚い! 目が! 腸が! スープに入った! 」

天界では、いきなり色々な物体が神々の頭の上から落ちてきて、大パニックが起きていた。

「人間舐めんな。神様達! 」

「少なくとも君と戦う気はないよ。こっちまでバラバラにされてしまうからな。なあ、君もそろそろいい年だろ?こっちに来て、神の一員になってくれよ。そうしたら不老不死になれるから。人間の中に君みたいなのがいると、怖いんだよ」

弘雅はそう懇願してくるが、シンイチは冷たく断る。

「いやなこった。俺は死ぬまで人間でいたいんだよ」

そういって弘雅との電話を切る。今のシンイチは神々すら凌駕する存在だった。

「よし。最後に後始末だ。『琴座』こい」

シンイチが小槌を振ると、銀色に輝く事が現れる。

「ミスリ、倒れている生徒達の記憶を封印してくれ。トラウマになったらまずいからな」

「わかったよお兄ちゃん」

ミスリは笑顔を浮かべて、『封印の歌』を奏でる。

こうして、大魔王サタンと勇者シンイチの史上最大の戦いは、生徒たちの記憶に残る事もなく終わるのだった。


理事長室

重厚なデスクにシンイチが座り、ミスリはその前に立っていた。

「ミスリには本当に苦労をかけたなぁ。普段から生徒会長として生徒たちの面倒も見てくれているし。本当にありがとう」

「えへへ。そんなの当然だよ。だって私は『勇者の義妹』だもん」

シンイチの義妹である事を誇りに思っているミスリ。

「そうだな。お前は俺の自慢の妹だよ」

シンイチに褒められて、ミスリは照れ笑いを浮かべた。

「なにかほしい物があるかい? 今回のご褒美になんでも買ってあげるよ」

そういわれて、ミスリは考え込む。

「そうだね~。いい機会だから、お兄ちゃんにお願いがあるの」

瞳をうるうるさせて、上目遣いに見上げてくる。

「なんだい?」

「私を、お兄ちゃんのアイジンにしてほしいの」

手を前に組んで、可愛らしくおねだりしてきた。

「ごほっ! あ、愛人? 」

「うん。王妃様にはしてもらわなくていいから、アイジンとして可愛がってくれれば……」

スッとシンイチの側に寄ってきて、体を摺り寄せてくる。

今まで子供だと思っていたミスリからいい匂いが漂ってきて、シンイチはうろたえた。

「い、いきなり何言い出すんだよ」

「あのね。 宇美お姉ちゃんから全部聞いたよ」

動揺するシンイチの耳元に口を寄せて、小声でささやく。

「き、聞いたって? 」

「宇美お姉ちゃん、お兄ちゃんのアイジンなんでしょ。そして、お兄ちゃんがケンイチ君たちのパパなんだよね」

それを聞いた途端、シンイチはガタガタと震えだす。

「た、頼む。メアリーたちには内密に」

真っ青な顔になって、必死にミスリに頼み込むシンイチだった。

その情けない様子に、ミスリは吹き出す。

「あはは、別にそんなに怖がらなくても。お姉ちゃんたちなら許してくれそうだけど」

「ミスリは知らないからなぁ。メアリー達って本当に怖いんだぞ。あの時も……」

シンイチは何かを思い出して遠い目をする。

「あの時? 」

「い、いや、なんでもない。シルフと合体したとき、勝手にタマゴを産まされたとかじゃないから! と、とにかく、子供がアイジンになりたいなんていうもんじゃない。というか、ませた事を言ってないで、勉強しなさい! 」

シンイチはミスリを子ども扱いする事で、必死にごまかそうとした。

「あ、ずるい。そんな事いうんなら、こっちにも考えがあるからね」

ミスリは膨れた顔をする。

「考え? 」

「お兄ちゃん知らないだろうけど、私は学園ではモテモテなんだよ。いっぱいラブレターもらっているもん。適当な男子を見繕って、あんな事やこんな事をしちゃおうかな~」

スカートをヒラヒラさせて、シンイチに揺さぶりをかける。

大切な妹分からそんな事を言われて、シンイチの顔が真っ赤になった。

「こら! ミスリ! いつからそんな悪い子になったんだ。お仕置きするぞ! 」

シンイチが大声を上げると、ミスリの顔が輝いた。

「お、お仕置き? 久しぶりに? うん、わかった」

ミスリは顔を染めて、シュルと音を立ててパンツを脱いだ。

「な、なぜパンツを脱いだんだ」

ノーパンだと思うと急にミスリの太ももがまぶしく思えて、シンイチはひたすらうろたえる。

「だって……久しぶりだからじかに味わいたいもん。ご主人様、悪い子の私を叱ってください」

いきなりシンイチの膝の上に、うつぶせで乗っかってくる。

ミスリのスカートから尻尾がピンと飛び出し、千切れんばかりにブンブンと振られていた。

それにつれて肌色の何かがチラチラ見えるので、危なくて仕方ない。

「くっそ~。俺を馬鹿にしているな! よし、本気でお仕置きしてやる」

シンイチは腕まくりし、平手でミスリのお尻を思いっきり叩いた。

「あ、あん。いたい! 」

ピシっという音が響き渡り、ミスリが悲鳴をあげる

「お仕置きだからな」

「そんな、もっと優しく……」

ミスリが哀願するも、容赦なく生のお尻を叩かれる。

「あっ、そんな……いたい……けど、もっと……」

何かに目覚めてしまうミスリだった。


「はあはあ……お兄ちゃんのお仕置き……満足……」

ミスリは涙を流しながらうっとりとした声でつぶやく。

着衣は乱れ、全身に汗をかき、顔は上気して真っ赤だった。

「はあはあ……ミスリ、これにこりたら反省しなさい」

シンイチも息を切らしている。

「はい……あっ」

立ち上がったミスリの足がもつれ、側にあったソファに倒れこんだ。

そのままそこでぐったりと横になる。

「だ、大丈夫か? ごめん。やりすぎた? 」

あわててシンイチが駆け寄って、額に手を当てる。

「大丈夫だよ。それより、お兄ちゃん……」

小声で話しかけてくる。

「ん? なんだい? 」

シンイチが耳を寄せた瞬間、ミスリの腕がシンイチの頭を抱え込み、胸元に押し付けた。

「捕まえた! さあお兄ちゃん、続きをしよう」

ミスリは意外な力でシンイチを抱きしめた。

「つ、続きって? 」

「もう、分かっているでしょ」

ミスリは可愛らしい顔に妖艶な笑みを浮かべる。

「あ、あのなミスリ。何度も言うけど、お前の事は可愛いと思うし大好きだけど、それは妹として」

「ふふふ、ハルミお姉ちゃんやアンリお姉ちゃんにも同じような事を言ってたけど、今は仲良し夫婦じゃない。お兄ちゃんにとって妹って、彼女の前段階のことなんだよね~」

「うっ、ち、違う……だから、それは……」

何か言い訳をしたいが出てこない。

ミスリはいたずらっぽくシンイチの喉を指でくすぐる。

「それに……この状況を考えたほうがいいよ」

「この状況? 」

改めて部屋を見渡してみる。

ソファに横たわっているミスリを押し倒しているような体制の自分。床には純白パンツ。

どう考えても警察に通報されるレベルである。

あわてて逃げようとするシンイチを、ミスリはより強く抱きしめた。

「ふふふ……この状況で私が叫び声をあげたら……」

「ミスリ……成長したな。お兄ちゃんを嵌めるなんて……喜んでいいのか悲しんでいいのか……」

シンイチは涙を流している。

「えへへ。ほめられちゃった。というわけで……お兄ちゃん。どうぞ」

ミスリは目をつぶって、シンイチに身をゆだねる。

その体からは少女特有の色気が漂っていて、思わずシンイチはごくりと唾を飲み込む。

「ミ、ミスリ……本当にいいのか? 」

「うん。ちっちゃい時から、ずっとお兄ちゃんのお嫁さんになると決めていたんだもん」

その言葉を聞いて、シンイチはミスリに対するこれまでと違った愛情が湧き上がってくる。

そのまま目を閉じて、二人の顔が重なろうとした時―

バンッと音を立てて、理事長室の扉が開かれた。


「あ、あんた、ミスリちゃんになんてこと」

理事長室の入り口には、怒りに燃えたメイが立っていた。

あまりに意外な人物の登場に、シンイチは固まってしまう。

「もう。メイちゃん早いよ。もうちょっと遅く来てくれないと」

シンイチの下でミスリが小声でつぶやいた。

「ミ、ミスリ、これは……」

「私たちが仲良くしている所をメイちゃんに見てもらって、噂を広めてもらおうと思ったの。だって男子生徒からの告白がしつこいんだもん。勇者シンイチのアイジンだと認められたら、ちょっかいを出してくる人がいなくなると思って」

あっけらかんと言うミスリだった。

「こ、怖い……ミスリが悪女になってしまった……俺は教育を間違えたのか? 」

苦悩するシンイチの前に、メイがツカツカと歩いてくる。

「ミスリちゃんが理事長室に行くって書置きがあったから、心配してきてみたら、案の定襲い掛かっていて……あんた、最低。ロリコン! 変態! 犯罪者! 」

ミスリの顔には泣いた跡があり、着衣は乱れている。トドメに床には純白パンツが落ちていた。

何を言っても弁解不能である

メイの顔が険しくなり、髪が蛇に変わっていった。

「だ、だから……」

「問答無用。『メドゥーサの瞳』」

メイの目から緑色のビームが発せられ、シンイチを貫く。シンイチは瞬く間に硬直化していった。

「ミスリちゃん。大丈夫? 」

メイはソファに横になっているミスリを助け起こす。

「だ、大丈夫だよ。でも、ちょっと痛いかな? お兄ちゃん、激しかったから」

下半身を押さえてもじもじとする。

「そ、そんな……かわいそう。すぐ保健室にいこう」

メイはミスリをお姫様だっこで抱えあげた。

「ち、ちょっと待ってよ。お兄ちゃんを元に戻さないと! 」

「こんな変態なんてどうでもいいよ! 特別強い呪いをかけてやったから、当分元に戻らないよ」

「そ、そんなぁ~」

ミスリは強制的に連れ出されていく。

理事長室には、女子高生に負けた最弱勇者の像が虚しく残されるのだった。



「反逆の勇者と道具袋」文庫版一巻 8/12日発売

「反逆の勇者と道具袋」最終巻11巻 8/25日発売です

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