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闇からの呼び声

拙作「反逆の勇者と道具袋」の11巻が8月に発売されますので、ここで後日談を発表します

「目覚めよ……その力……我に捧げよ……」

どこからか暗い声が聞こえてくる。

「我が意思を受け取りし……悪魔たちよ……いまこそ、魔王のもとに……」

「まったく……いったいなんだってのよ! 悪魔ってなにさ。私には関係ないよ。」

少女は大声で抗議するが、声は収まるどころかますます大きくなっていく。

「魔神……地獄から……解放……」

「うるさい! 」

ついに少女は大声を上げて、目を覚ましてしまった。

ベットの上に起き上がった少女は辺りを見渡すが、いつもどおりの自分の部屋だった。

白で統一された壁紙に、学習机とベッド、あとテレビにステレオ。

平凡な16才女子高生の部屋だ。魔王だの悪魔だの、変な中二病を喚起させる要素なんか何一つない。

「もう……一体何なのよ」

少女はつぶやくが、その変えには不安が浮かんでいた。

彼女の名前は佐藤明(サトウメイ)

広島県に住む、特別なところは何にもない平凡な女子高生である。

それなのに、数ヶ月前から変な夢を見て、不安に思っていた。

「まだ朝の五時か……まだ眠いけど、ランニングに行こうか!」

そう決めると、ジャージに着替えて外を走る。

不安を振り払うように、彼女は走って汗を流し続けた。


ランニングから帰ったメイは、いつもどおり家族と朝食をとる。

朝のニュースでは、奇妙な事件が報道されていた。

「さて、次のニュースは、最近急激に信者を伸ばしている『魔教会』についてです」

画面が切り替わり、黒いローブを着た怪しげな集団がデモ行進している映像が映し出された。

「この世界には、もはや神はいない!  我々『魔人』こそ新たな神である」

「力に目覚めた我々こそ、この世界の正当な支配者である」

次の瞬間、彼らはいっせいにパフォーマンスをはじめる。

ある者は手から炎を生み出して、近くの木にに投げつける。

そして、燃え上がった炎を、その隣にいたものが水を召喚して消し止める。

他にも風を起こして空を飛ぶものいれば、地震を起こす者もいる。

「あ、あの……あなた方の『魔法』は、本物なのでしょうか……? 」

おそるおそる近づいてインタビューするレポーターに対して、彼らは胸をそらす。

「そうだ。我々は進化して魔法を使えるようになった人間、『魔人(デモン)』である。我々に従うがいい。愚かなる旧人類どもよ」

彼らが轟然と言い放ったとき、ファンファンと音がして、何台ものパトカーが駆けつけた。

「キミ達、すぐに解散しなさい! 」

何人もの警官が説得するが、彼らは恐れ入らない。

「ふん。愚かなる者達よ。我らが『魔王』の力にひれ伏すがいい」

デモ集団の先頭にいる男が高らかに宣言すると、デモ隊の中から一人の小柄な人間が進み出る。

黒いフードをかぶっていて、男か女かも分からなかった。

「……キミが彼らのリーダーか? キミ達は集会をするのに必要な届けを出していない。即刻……」

その者の肩に手を触れようとした警官は、いきなり強い力で体中を締め付けられた。

「な、なんだ!?」

その警官だけではなく、他の警官やパトカーまで、何か強い力によって拘束され、そのまま空に浮き上がっていく。

「た、たすけてくれ! 」

彼らはそのまま近くのビルの屋上まで運ばれていった。

目の前におこった超常現象に、テレビレポーターも青い顔をしている。

「い、いまのは……」

「魔王ルシフィル様のお力だ。彼こそ我らが王! 」

取り巻きたちが力に酔ったように喚き散らす。

「……我は……魔王なり……我がもとに集うがいい。我が眷属よ……」

小柄な者がはじめて声を出す。それは年若い少年のものだった。

「そ、それでは中継終わります」

慌てたようなレポーターの声を最後に、ニュースはスタジオに切り替わった。

「なんだか、不気味な事件ですね……彼らを取り締まれないのでしょうか?_」

美人アナウンサーがつぶやく。

「……残念ですが、現在では魔法や超能力が存在するという科学的な証明はなされていません。しかし、数年前から突然普通の人がそういった超常的な力に目覚めると言ったケースが多発していますので、いずれは解明されると思います。そうなったら法整備も行われると思うのですが……」

専門家のコメントは歯切れが悪い。

両親や妹はそのニュースを見ても自分に関係ないこととして無関心だったが、メイはそれをみて真っ青になっていた。

「あれ? メイちゃんどうしたの? 顔色が悪いみたいだけど……」

様子がおかしいメイを母親が気遣ってくる。

「な、なんでもないよ」

あわてて取り繕うメイだったが、その心臓は早鐘のようにドキドキと打っていた。

(あの声……夢で呼びかけてくるあいつの声とそっくり……)

少しずつ不安になってくる。

メイは怪訝な顔を向けてくる家族の視線を避けるように、学校へと向かった。


昼休み

仲のいい友達四人と、屋上でお弁当を食べていたら、朝のニュースの話題になった。

「ねえねえ、『魔教会』って知ってる? 」

「知ってる。なんか不気味よね~」

キャッキャと笑いあう少女。

魔人を名乗って不思議な力を使う彼らは確かに気味が悪いが、同時にオカルトや神秘に憧れる年代である彼女達にとっては関心の的だった。

その時、メガネをかけた少女が話し始める。

「これは聞いた話なんだけどね……。私のいとこの知り合いが、魔人になったんだって。いろんな魔法が使えるようになったみたいだよ」

「え~。ちょっとうらやましいかも。魔法使いってカッコイイし」

聞いていた少女は興味津々だったが、メガネの少女は怖がらせるように言う。

「でも、魔力に目覚めたら、悪魔にされてしまうのよ。魔王って夢で自分の僕になりそうな人を探しているんだってよ」

「え~? こわーい」

彼女達は面白がって聞いているが、メイは真っ青になっていた。

「ね、ねえ。もし魔王が夢に出てきたら、どうすればいいのかな? 」

必死になって対処方法を聞く。

「うーん。見つけられないように、絶対に返事をしちゃだめ。じっと黙っていればいればいいみたい。でも気をつけなよ。魔王に目を付けられたら、黒いスーツの変な人達が迎えに来て、どこへともなく連れて行かれるのよ」

「それってブラック○ンじゃない?色々まざっているよ~」

友人達の無邪気な様子がうらやましい。

メイは体を震わせて、のしかかる恐怖に耐えていた。


放課後

メイは空手部だったが、今日は部活に参加する気になれなかった。

「どうしょうかな……」

悩みながら学校をぶらぶらしていると、そこに一人の男子生徒が近寄ってくる。

「メイちゃん。どうしたの? 顔色悪いよ」

白い歯を見せて笑いかけてくるのは、瑠士 フィル (ルシフィル)、英国人とのハーフで高校二年生である。家がこの高校の理事長をしている大金持ちで、生徒会長と空手部の部長を兼任、おまけに学校首席の秀才で超イケ面である。

メイを含めた多くの女子生徒から人気がある、学校一のモテ男だった。

「あの……瑠士先輩、すいません。今日は気分悪いんで……」

「いいよ。今日は帰りなよ。みんなには俺が言っておくからさ」

頭をポンと叩いて、早く帰ることを勧めてくる。

「ありがとうございます。それじゃ、失礼しますね」

ひとつ礼をして去っていくメイを、フィルは満面の笑みを浮かべて見送った。


本編はこちらになります


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活動報告に「反逆の勇者と道具袋」11巻と文庫版1巻の情報を載せました

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