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一旗揚げましょう?  作者: 早雪
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4,国の現状

真面目? 説明で堅苦しい回かもです。(^^;


「本題に入る前に前に、お前がどこまで知っているか知りたい。自分が何故ここに呼ばれているかはわかるか?」

「召喚状には私が王家への反乱分子と関わりがあるため、事情を聞きたいとありました」


ルース王太子に問われ、速やかに解放されたい一心でロアは正直に答えた。不本意に連れてこられた嫌味でも言ってやりたいが、問答を長引かせる気はなく、今すぐ帰りたい。


「他には何か聞いたか?」

「その事以外は伺っておりません」


目線を少し伏せて、ロアは簡潔に応じた。王太子を含めた壇上の者から、呆れたような視線がカイン魔法騎士団長に向けられた。その視線を浴びた当人はどこ吹く風で、緑の目がロアをじっと見つめてきた。


「……カイン、お前のその面倒がる癖は早々に直せ。年頃の少女が何の説明も無しに、突然城に連れてこられたら不安で恐慌状態に陥っても不思議ではない」


そっと息を吐き、胸中でロアは同意した。もっと言ってやって欲しい。本当にこれから自分がどうなるか、不安でしかなかった。というか、わかっていたのなら別の人を寄越して欲しかった。魔法騎士団長直々の迎えなど恐怖でしかない。

ロアは不安をそのまま表情に出し、困惑した目を壇上に向けた。


「ロア・ノーウェン、お前はどこまでこの国のおかれている現状を理解している?」


唐突な質問に、ロアは当惑した。壇上をちらりと見るが、四対の目は静かに返答を待っていた。


「…内憂外患でしょうか」

「具体的には?」


王太子が試すようにロアをじっと見つめた。


「このファウス国は現在、東北のイオニス帝国、南東のルシン国、東のサヘル国の三国に囲まれていて、よく国境で小競り合いが起きていると聞きます。魔法技術や三国が肥沃なこの大地を狙っていること、いつ戦になって攻め込んでくるかわからないこと、みんな何となく気づいてます」


五百年前まではその三国とファウス国を含めて、ノーザルス帝国という大陸で一番の大国だった。今よりも魔法師が多く、力も強い者が多かった。

それが当時の皇族、全員が亡くなり、国が分かたれて、現在の四つの国になった。


東北のイオニス帝国は産業が著しく発展して現在は軍事大国。南東のルシン国は穀倉地帯、豊かな海や山の恵みを活かした飢える者のいない農業大国。東のサヘル国は金銀鉱山や資源の豊かな商業大国にそれぞれ特色を伸ばし、国力も高い、押しも押されもせぬ強国となった。


かつてのノーザルス帝国の繁栄した帝都を含むファウス国は、ノーザルス帝国皇族の傍系が王となり、魔法とその研究、学問を活かして現在に至る。


四国の力は拮抗していたが、百年前よりそれが徐々に崩れてきた。

陰りが見えたのはファウス国。もともと少なかった魔法師の出生率がどんどん下がり、現在では数百人に一人いるかいないか。それも、力ある魔法師がどんどんいなくなってきた。


ノーザルス帝国時代からの文化を千年受け継ぎ、魔法のスペシャリストに与えられた魔法師長の称号。その地位に就ける者がいなくなったのだ。


魔法師長とは、魔法の知識があるのは勿論のこと、一国を一人で相手にできるほどの戦力、天災級の力を持つ人物のことをさした。

戦場においてはよく化け物と言われていたが、過去の文献にはそのたった一人が負け戦をひっくり返した話は多く、圧倒的な力の差から戦意喪失して戦いにならなかったこともあるらしい。

故に、魔法師長が一人いるだけで他国に対して侵略抑止の役割を果たし、同盟による円滑な関係を築けていた。


その魔法師長が、現在は空位だ。

百年と少し前も一時期空位で、勢いづいていた東北のイオニス帝国が攻めて本格的な戦争になりかけた。

当時は魔法師長になる実力者はいなくても、文字通り一騎当千の力の強い魔法師が数名いたので、帝国軍を追い返し、続けて手を出してきた南東のルシン国も早めに叩き潰した。


その後、歴代の魔法師長より体力がなく魔力も弱いが、魔法師が百人いても相手にならない程の実力があった一人の若者が魔法師長になった。

その人物が亡くなったのを最後にここ三十年以上、魔法師長の座は空いている。一騎当千の魔法師も高齢者が二人いるだけ。あとは普通の兵士数百人を一人で相手にできる若い魔法師が、三人ほど。


他の三国にも魔法師は少ないがいる。質も数もファウス国に劣るものの、圧倒的な国力と兵力があり、国の戦力としての差はファウス国が劣る。

新魔法の開発や技術があっても、それを試せる魔法師が少ないので応用も活用もままならないのが現実だった。


そんな過去最悪の状況で三十年も平和が保たれたのは、国王夫妻や宰相、大臣以下の政務官たちの努力あっての賜物だろう。

それも時間の問題であり、国境の小競り合いが激化し、国境や軍備増強による増税、不安定な国情による商人が近寄るどころか商いの撤退、観光や訪問者の減少の悪影響で国力は低下の一方。


国防の魔法師や兵士も疲弊し、国内も人心が荒み、重税に民は苦しみ、反乱分子が出て来て本格的に荒れ始めていた。



「国内も増税に次ぐ増税、頻繁に起こる臨時税の徴収、役人の賄賂横行、治安も不安定で最近では人の売り買いも出てきたとの噂があります。反乱分子も表に出始めたので、国内外で危うい均衡が保たれていると思います。民も不穏な現状を肌で感じています」


しっかりしたロアの意見に、クリスが瞠目し、全員の表情が引き締まった。


「ーーと、商人たちからの情報や街の人たちの意見をよく聞いております。真実はわかりませんが」


ロアは小耳にはさんだと、聞いた意見をまとめただけにとどめ、自分の知っている現状ではなく、国中の民が知っていることを話して自分の意見を述べるのを避けた。






面談がなかなか終わりませんね~……すみません。

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