デートだから外に出たのにデートする羽目になるとは・・・後、視線を感じる。
俺は、本屋で立ち読みをしていたら店員に止めさせられ帰ろうとしたら俺と同じ立ち読みをしていた女子に人気の無い所に連れて来られた。
「あのですね!ちょっとお話が・・・」
「うわー助けて!俺は無実だ!痴漢なんかやってない!」
「いや、私を無実にして欲しいんですよ!」
「俺は絶対痴漢なんか認めないからな!俺は有罪になる位なら海の中の神殿で人魚と一生を過ごす!」
「意味わかんないし!!とにかく私の話を!」
「うわー!やめろー!助けてー!!!」
しばらく経ち、お互い少し落ち着いた。
「それで?お前は何の為に俺をここに連れて来たんだ?」
「・・・引きを黙ってて欲しくて。」
「え?良く聞こえなかった。」
「万引きを黙ってて欲しくて!」
・・・は?万引き?
「いつ?誰が?何を?」
「本屋・・・本屋以外にも洋服店とか、百貨店とか、家具屋とか、宝石店とか、銀行とか・・・」
「どうやって万引きしたんだよ・・・」
「物を小さくする魔法を使った・・・辞書に偽装した収納本でそれを運ぶの・・・」
「いや、本屋とか洋服店とか百貨店なら一つや二つ小さくしても目立たないとは思うけど、家具屋とか宝石店とかは持ち運べないぞ?ましてや銀行の金とかどうやって小さくするんだよ・・・」
「自分を小さくしたの・・・鍵穴とかよりも小さくなって入り込んで、人がいないのを見計らって小さくした・・・銀行は沢山お金あるから楽だった・・・ちなみに元の大きさにも戻せるよ。」
コイツ、怪盗かよ・・・
「つまり、この辞書を落としたから俺を人気の無い所に連れて来たと?」
「そう・・・だからお願い!この事は誰にも言わないで!」
「どうしよっかな~」
俺に被害が及ばなければ正直どうでも良いのだが、誰かの弱みを握るのは得になる事だ。
「何でもするから言わないで!お願いだから!」
「ほう・・・何でもか・・・」
俺はこの言葉にほくそ笑み、俺の願いを叶えて貰う事にした。
「いただきま~す!」
「いただきます・・・」
そして俺とその女子は牛丼屋に来た。
もちろん俺は万引きの事を黙ってやる為、特上頼み放題トッピングかけ放題だ。
「良いよね~ダイガは、私なんか牛丼の匂いをおかずに白いご飯だもんね~」
「しょうがないだろ?マリーナが将棋で負けたのが悪い。」
「食べ終わったらもう一回勝負しよう!」
「いいぞ、次は買いたいもので勝負しよう。」
ちなみにマリーナと言うのは万引き女子の名前で、この会話はカップルが将棋をやって負けた方が罰ゲームで言う事聞くと言う設定の演技だ。
「・・・おい、マリーナ。ご飯粒付いてるぞ。」
俺はマリーナのほっぺたに付いているご飯粒を指で取り、そのまま食べた。
「・・・・・」
マリーナ、それをされて赤くする所まで演技しなくても良いんじゃ・・・
「「チッ。」」
ん?なんか誰かの舌打ちが聞こえた様な・・・気のせいかな?
「洗剤と、入浴剤と、ボディソープと・・・後なんか有ったかな・・・」
またしても俺が勝ち、日用品を俺が選んでマリーナに買って貰っている。まぁ負けたとしても俺が金を貰うだけだけどな。
「ねぇ、もう罰ゲームは止めない?」
「そうか、じゃあ一生お前はあそこに行って貰うだけだな。」
あそこと言うのは、犯罪者が捕まった時に行く豚箱の事だ。
「もう、分かったよ・・・あ!」
「どうした?」
マリーナが見つめる先には、コルセット付きの黒いワンピースがあった。
「ゴスロリって奴か、これが欲しいのか?」
マリーナが首を縦に勢いよく振った。
「じゃあ自腹で買え、その間に俺は小説でも・・・」
立ち読みしようと言った時、マリーナが俺の手を掴んできた。
「ねぇ~これ買って~」
「やだよ、罰ゲームなんだし自分で・・・」
「お願い!」
マリーナが手を合わせ、ウルウルとした目で見つめて来た。
「・・・・・」
「ねぇお願い!」
俺は迷った。そして、
「将棋無しで罰ゲーム受けるか?」
「うん!受けるから買って!お願い!」
「・・・分かった、今回だけだぞ。」
「わーい!ありがとう!」
マリーナはすぐにワンピースを手に取り、試着室へ向かった。
(あ~面倒くさい・・・次の罰ゲームは高級レストランのディナーでも奢ってもらおう。それにしても何で自腹で買えば次の将棋で勝って罰ゲーム受けなくても済むかもしれないのにわざわざ罰ゲームを受けてまで俺に買って貰おうと思ったのかな?)
「ダイガ、試着してみたんだけど・・・」
そうこう考えている間にマリーナが試着を終えた。
試着室のドアが開くと、
「どう?似合うかな~?」
黒のワンピースを着た、ただそれだけのマリーナが出て来た。
どうコメントしたら良いか迷い、周りを見てみると皆マリーナに見とれている様だった。
「ダイガ、どう思う?」
「・・・まぁ似合ってんじゃないの?周りも皆そう思ってるんじゃないか?」
「かわいい?」
「周りがそう思ってる様に見えるけど・・・」
「・・・私の事好き?」
「周りはどう思う・・・」
「さっきから客観的にしか判断してない!!」
「あ、バレたか。」
だってどうとも思わないんだもーん。
「・・・取りあえず、周りが似合ってると思ってくれてるからこれを買って貰うよ・・・」
マリーナは試着室のカーテンを閉めた。
(高級レストランに行くなら俺もスーツとかネクタイとかいるかな・・・?)
俺はこんな事を考えた。
そして試着室から出て来たマリーナに、
「良し、俺のスーツとネクタイを見に行くぞ。」
「・・・は?」
「晩御飯に高級レストランに行く事にしたから俺もスーツとネクタイいるだろ?お前はそのワンピースで良いだろ。」
「え・・・あ、うん。分かった・・・」
そして俺は会計を済ませ、マリーナとスーツとネクタイを売っている所に行き、そして買って貰った。
「あ、4時24分を過ぎた。じゃあ一旦家に帰ってレストランに行く服装に着替えて、夜六時にレストランの前で会おう!」
「分かった、じゃあまた。」
俺はマリーナと別れ、スーツとネクタイを持って自分の部屋に戻った。
「ギャ―――!!!僕に八つ当たりするな―――!!!」
今、何か聞こえた様な・・・気のせいか?