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さてと、喧嘩を始めようか。

 授業が終わり、校舎の裏に喧嘩部の部員と二年の生徒会長が集まった。


 「時間は下校時間まで、ですからね?ミル先輩。」


 「分かっています、ダイガさん。」


 両者、魔法の構えを取った。


 「「ハッ!!」」


 そして手から魔法が飛び、お互いの魔法がぶつかり相殺された。


 相殺され、魔法が消え去るのと同時に両者は殴りかかった。


 「「グッ!?」」


 またもや互角だった。


 次に殴り蹴りの、乱打戦が繰り広げられた。


 一見両者の実力は互角に見えるが・・・


 (そんな訳があるか、二年生がこんなに弱い訳が無い。お互い何週間も動けなくなる位傷付く死闘になると思っていたのに・・・やっぱり引きずっているのか。)


 これはダイガの心の声だ。




 「この勝負をどう思います?マユさん。」


 「ここの学園に通っている二年生が入ったばかりの一年生と互角なんておかしいと思う。」


 そして、見物しているマユとガントも同じ事を考えていた。


 「多分あの生徒会長は迷っている、喧嘩部の意見と周りの意見のどっちを取るかで。」


 「馬鹿ですよね、僕たちの意見なんて聞かなくても良いのに僕たちがあんな言葉やこんな言葉を発しただけでこうも実力が出せないなんて。」


 三人は、生徒会長のミルに色々な事を言っていた。


 「喧嘩のどこが下等なんですか?」


 「迷惑にしているのは喧嘩の許可をあげたのに無視する奴らだと思います。」


 「何故私達は喧嘩をさせてくれないんですか・・・」


 「刺し違えてでも喧嘩部を守ります。」




 ミルにはその言葉が心に突き刺さっていた。


 (何しているんだろう私・・・本気が出せない・・・)


 今までミルは、喧嘩を無くせば平和になると思っていた。


 だがそれは大多数の話であり、ごく少数には当てはまらないと喧嘩部の部員の言葉により気付いた。


 気付けば気付いたで、周りとの板挟みに悩まされるだけだった。


 授業中でもその板挟みに悩まされ、気付けば自分の体はまるで重りを背負っているみたいに動かない。


 そして、その体に追い打ちをかける事態が起こった。


 「お前ら!何をやっているんだ!」


 ミルが戦いながら声が聞こえた方を向くと、生徒会役員が集まっていた。


 「我が喧嘩部の代表と生徒会長が喧嘩をやっているんです。喧嘩部代表が勝てば生徒会長が喧嘩部に入り、その生徒会長に我が喧嘩部の文句を潰して貰う事になっています。」


 マユが答えた。


 「君たちはふざけているのか!?」


 「そうだ!喧嘩をして良いと思っているのか!そんな訳無いだろう!」


 (皆・・・何を言っているの・・・?喧嘩部に取って喧嘩は生き残るための手段なんだよ・・・)


 ミルには生徒会役員の喧嘩部に向けての言葉が、まるで自分に言われているみたいに痛く感じた。


 「それを言うなら、あなた方がやっているその口の利き方は何ですか?けんか腰だとは思わないんですか?」


 ガントが責め立てた。


 「黙れ!喧嘩の常習犯に人様を責め立てる資格は無い!」


 「喧嘩をやる事自体、犯罪者と同じだ!即ちお前らは人間では無い!」


 (え・・・?人間じゃない・・・?喧嘩部と言う立派な部活を続けようと必死になっているのに人間じゃない・・・?貴方たちがやっているのは喧嘩以上の差別なのに・・・それこそ犯罪者と同じなのに喧嘩部は人間じゃない・・・?)


 ミルの頭はぐちゃぐちゃになってもう喧嘩どころでは無い、次第にダイガに押され始めて来た。


 「とにかく今すぐこの喧嘩を中止しろ!さもなくばお前らは・・・」


 そして生徒会役員の一人は、


 「退学だ!!」


 と、大声で叫んだ。


 (た・・・い・・・が・・・く・・・?何それ・・・?つまり喧嘩部は生徒会役員に追い出される・・・?笑顔とか・・・友情とか・・・絆を今まで大事にしていたのに退学・・・じゃあ・・・じゃあ・・・今まで私は・・・)


 そしてミルは、


 「何の為にこの学園に通っていたの―――!!?」


 自分の今の心情を叫んだ。


 「ガァァァァ!!!!!!」


 そしてその隙を突き、ダイガがミルを思いっきりぶん殴った。


 ミルは遠くまで吹っ飛ばされ、地面を転がり傷だらけになってやっと止まった。


 失意のままミルはそのまま立ち上がらず、


 「俺の勝ちですね、ミル先輩。」


 ダイガの勝利が確定した。


 「「「生徒会長!!」」」


 すぐに生徒会役員がミルの所に駆け寄った。


 そして駆け寄った生徒会役員にダイガは、


 「と言う訳で見てた通り、俺の勝ちです。約束通り生徒会長には喧嘩部の廃部を取り下げ、生徒会に来ている喧嘩部に対する文句を全部潰して貰い・・・」


 「この喧嘩は無効だ!」


 「そうだ!無効だ!」


 「喧嘩部を無くしこのファーブ魔法学園に平穏を!」


 そして生徒会役員は揃って平穏を!と大声で叫び続けた。


 「何故無効なんですか?この喧嘩を受けたのは生徒会長で、しかも生徒会長は負けたんですからあなた方生徒会役員や負けた生徒会長には無効にする権利はありませんよ?」


 「黙れ!犯罪者のダイガ!」


 「正義の鉄槌を喰らわしてやる!そこを動くな!」


 生徒会役員全員がダイガに向かって来た。


 恐らく正義と言う者を盾に袋叩きにするつもりだろう。


 マユとガントはダイガの加勢をしようと動こうとしたが、


 「ミル先輩~!こいつら正義やら平穏やらうるさいんでぶっ飛ばして貰えませんか~負けたペナルティの一種ですよね~?」


 ダイガはミルにペナルティを果たして貰おうと大声で叫んだ。


 「犯罪者が言うペナルティなど生徒会長が・・・えっ?」


 生徒会長が何事も無かったかの様に起き上がり、ダイガと戦った時に使った魔法の威力とは比べ物にならない威力の魔法を生徒会役員に放った。


 そして最後に残った一人を、これまたダイガと戦った時とは違って全力で殴り、近くの家の屋根を軽く超える勢いで吹っ飛ばした。


 (((凄ーい、漫画みたーい・・・)))


 喧嘩部三人は心の中でそう思った。


 「約束通り、ぶっ飛ばしました!他の喧嘩部に文句を言う輩も、こうしてぶっ飛ばしますのでご安心ください!」


 ミルは満面の笑顔でそう言った。


 「け、けんかぶにもは、はいってくだしゃいね?ミ、ミルしぇんぴゃい?」


 ダイガは思いっきり噛みながらミルにそう言ったら、


 「もちろんです!喜んで入らせて頂きます!では、さようなら~!」


 笑顔のままこう答え、ミルは帰って行った。


 (やっぱり実力じゃ及ばねえよ・・・あぁおっかない・・・)


 ダイガは心底震えながらそう思った。

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