俺は弱い女子とは喧嘩をしないが、強い女子なら大歓迎だ!
俺は突然、長い銀髪をした女子に喧嘩を申し込まれた。
この一か月間、色々な奴に喧嘩を申し込んで連戦連勝している俺に挑むと言う事は相当腕に自信があると見て良いだろう。ましてや仮にもこの学園に通っているんだ・・・腕が鳴るぜ。
「分かった、その挑戦を受けよう。場所はどこが良いかな?」
「場所は・・・屋上にしませんか?」
「屋上か、分かった。時間は今日の授業が全部終わってから下校時刻までにしよう。」
銀髪の女子がウィンクをしたと言う事は、了承したと言う事だな。
「では、また会おう!」
俺は教室に戻った。
そして授業が全部終わり、俺は屋上へ向かった。
(まだあいつは来ていないか・・・少し待つか。)
(一時間経ったが・・・来ない。)
俺はやる事も無いので更に待つことにした。
(・・・・・・・・)
日が沈む時間になっても来ない。
(これは集中力を削いで俺に不意打ちすると言う作戦か・・・?上等だ、どこからでもかかって・・・)
すると突然、屋上のドアが開いた。
「ついに来たか!散々待たせやがって・・・」
出て来たのは俺のクラスの担任だった。
「ダイガ、もう下校時間だから家に帰れ。」
(え・・・?下校時間・・・?)
と言う事は・・・俺、喧嘩をすっぽかされた!?
「あの女――――!!!!!!!」
俺は頭を掻き毟りながら屋上を後にした。
「あぁ、畜生!あの女!」
俺は心底ムカつきながら家に向かって歩いていた。
途中で通りかかった俺を知っている奴は、俺の機嫌が悪そうな顔を見て全員逃げて行く。
「あのウィンクは了承じゃ無く、ただの冷やかしの合図だったのかよ!畜生!」
そしていつの間にか、俺の暮らしている寮の、自分の部屋に着いていた。
「あぁ畜生!」
勢いよく俺は、ドアを開けた。
「お帰りなさい。」
「ただいま!」
お帰りと言う言葉に俺は返事をした。
(あれ?お帰りなさい?)
ふと、俺は疑問を感じた。
(おかしいな・・・俺はこの部屋に一人暮らしだった筈だが・・・それに今の声、最近聞いたような声だな・・・)
声が聞こえた台所に向かってみると・・・
「お帰りなさい、ダイガさん。」
「やっぱりお前か・・・」
そこには、屋上で喧嘩の約束をした女子がご飯を用意していた。
「貴方がいない間に、部屋の掃除とかお風呂の掃除とか、色々やっておきましたよ。」
「おぉ、そりゃありがとう。」
「晩御飯・・・冷めない内に食べましょう?」
「あ、あぁ分かった。」
そして俺と銀髪の女子は席に座った。
「いただきま・・・」
俺は何かに気付き、
「っておーい!何故にお前が俺の部屋にいるのか説明しろーい!」
「見事なノリツッコミですね。」
銀髪の女子が深呼吸した。
「敵を知り己を知れば百戦危うからずって言うことわざ知ってますか?」
「知ってる、俺はぶっつけ本番で喧嘩するけど。」
「私はその言葉に賛同していましてね、喧嘩相手も知り尽くせば絶対に勝てると思いまして。」
「それで喧嘩相手の家に勝手に押しかけて情報収集していると?」
「はい、これまでで47件程やりました。そう言う訳でよろしくお願いします。」
「出て行けと言ったら?」
「ストーカーしてでも情報を集めます。」
おい、それだと俺に好意を持っている事になるぞ。
「・・・・・あぁ、もう良い。どうでも良い・・・」
「と言う事は、ここで貴方の情報収集しても良いと?」
「好きにしろ・・・」
この手のタイプは漫画や小説で見た事あるが、手に負えない・・・
取りあえず俺は、こいつが作った晩御飯に手を付ける事にした。
「毒があるとかは気にしないんですか?」
「それは無い。だってそれじゃあ喧嘩じゃ無く暗殺になる。」
「その晩御飯に喧嘩で有利になる様にホレ薬を・・・」
「ブボッ!!ゴホ!ゴホ!何て物入れてんだ!!ペッペッペッ!!」
「冗談ですよ、そんなに否定しなくても・・・」
「するわ!好きにならなければ殺すと言われても否定するわ!」
「そうですか・・・」
銀髪の女子がシュンとした。そこまでして俺に喧嘩で勝ちたいのかよ・・・
「ごちそうさま!」
しばらくして、俺は晩御飯を食べ終わった。
「感想はどうでしたか?」
「まぁ、普通だったな。」
「そうですか。」
「そういや風呂沸かしたんだよな?入っても良いか?」
「・・・ご自由に。」
その言葉に甘え、俺は着替えとタオルを持って風呂場に行った。
「・・・風呂と言う者は誰が沸かしても似たような物だな。」
俺は、あの銀髪の女子の沸かした風呂の感想を言ってみた。
大体風呂なんか毎日入る必要あるのか?水道代の無駄だし、ガス代だって掛かる。どう考えても何日間の汚れを一日で徹底的に洗い流した方が良い。
「湯加減はどうですか?」
「いつもと変わんな~い。」
「そうですか、じゃあ入りますね?」
「・・・はい?何で?」
これまた漫画や小説で見た様な展開。
「裸を見たら何か弱点が分かるかも知れませんし、温め直す必要もありませんし。」
「前半はともかく後半はこじつけっぽくない?」
「気のせいです。では、失礼して・・・あれ?」
「俺がこんな事も予測出来ないほど馬鹿だとでも思ったのか?この風呂の戸の鍵を内側からしか開かなくしたんだよ。」
「中々考えましたね、流石喧嘩に合意を取ろうとするだけあります。」
(それ褒めてんのか?)
「ですが甘いですね、こんな物、蹴破ればどうにでもなります。」
なるほど、力ずくでも入ると言うのか。
「う――、ずりゃ!」
銀髪の女子が蹴った。
「がっ!痛い!」
だが、失敗の様だ。
「何でこの戸は全然ビクともしないんですか!?」
「そりゃそうだよ、だってこの戸は厚さ最大五十センチに伸縮出来るから。」
「金庫ですか!?」
「と言う事だ、一緒に入るのは諦めてくれ。」
「・・・・・私の裸には興味ないんですか?」
「別に。」
「三文字で流さないで下さいよ・・・」
銀髪の女は諦めて風呂場から出て行った。
(これでゆっくり入れる・・・)
「ふわ~そろそろ寝るかな。」
「そうですか、布団の用意もしておきましたよ。」
「一応聞いておくが、寝ている所も観察したいから一緒に寝ましょう。何て思ってないよな?」
「そうですが、それが何か?」
全くこの女は・・・
「駄目、暑いから一緒に寝たくない。」
「じゃあ一緒に寝なくても良いので観察だけしても良いですか?朝まで。」
「お前ずっと起きてるつもりかよ・・・」
そして俺は布団に入った。入ったは良いが・・・
「じ―――。」
この銀髪の女子が見つめているので、中々寝付けない。
「あの、良ければ子守唄歌ってくんない?」
「良いですよ。」
銀髪の女子は息を吸った。
「眠れ~眠れ~お~や~す~み~な~さ~い~」
(中々上手いじゃないか、これなら眠れそう・・・)
急激に眠気が襲った。明日も頑張ろう・・・
「眠れってんだよこの野郎!!ゆっくり眠れよこの野郎!!叶いも!!しない!!夢を!!見て眠れってんだよこの野郎!!だらしない顔を~おかんにでも見せて~眠れよ!!明日は!!今日よりも元気に!!働けよ!!この野郎!!」
「何だこの子守唄!?何で子守唄がノリノリなんだよ!?眠れないし子供が絶対泣くぞ!!」
「この子守唄は今思い付いた限りで三十八番までありますよ。」
「無駄に多すぎる!!と言うかまだ追加する気かよ!!」
あぁ、もう疲れる・・・これからどうなるんだ?