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3-2

 薄い窓ガラスを通り抜けて、差し込んでくる夕焼けの色が彼女の横顔と床材を染めていた。桜さんで間違いなかったはずのお相手はツインテールの片方を手で揺らすと、ふてぶてしく腕組みまでして、さもご不満な表情だ。


 だがそれは俺も同じ。言いたいことは言わせてもらう。


 「生憎(あいにく)だが、俺にはここで然るべき話をする相手がいる」

 「あたしだって話したい奴がいるのよ。そいつとケリつけなきゃ気が済まないの」


 鼻で笑った俺はぎょっと目を開いて凄みを見せると、びしっと出入口を指差した。


 「青春を謳歌するための秘密の扉なんだここは!甘い甘い日々の想像を掻きたてる夢のような一言を告げる神聖な場所だ!てめえの喧嘩は外でやれ!」


 ばしっと言ってやった。


 これで少しはおとなしく……眉を吊り上げた彼女が震える左手でなにかを放つと、俺は顔面に受けた衝撃のあまり後ろへと吹っ飛ばされた。鼻を押さえて泣きそうな痛みをぐっと堪えていると、弾んだサッカーボールが吸い寄せられるように彼女の足元へと戻っていく。おのれ奇術師め。


 「あらあら。ここの部屋の鍵は教員許諾のもと、貸出し制よ。もちろん借りたのはあたし。甘い甘いお花畑の妄想は頭ん中で留めときなさいよこのド三枚!」


 妄想真っただ中だった俺は灰が溶けるように呆然と立ちすくんだ。ホルダー付きの鍵を彼女が指に引っかけているということは、彼女の言い分が正しいことを証明している。しかし、俺宛ての恋文があったのもまた真実。


 恋文という言葉に俺は我へと返った。

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