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その箱には、一通の招待状があった。告白を予告した一文も書かれていた。だからこそ暴走しそうな心臓の鼓動も踊り狂いそうな気持ちも抑えて俺は約束の地へとやってきたんだ。
多くを語らずとも伝わるだろう。これが青春ってやつだ。アオハルは確かに存在した。
校舎入口からもっとも遠く離れた僻地にあり、今となっては倉庫としてのみ用途を果たす旧視聴覚室。通称『第二視聴覚室』の扉は開けるほどにきしむ音を室内に響かせる。放置されている機材はもれなく埃が被っていて、いかに秘密を語る場としてもってこいかが伺える。
「なによ、その目は」
すべては桜さんの一言が聞きたいがため。先に広がる夢物語へと花咲かせていた俺は目の前の女の子にしばし絶句していた。壁にもたれながら、彼女はそんな俺の姿に怪訝な視線を送りつける。
「言いたいことがあるなら言いなさいよ」
約束の場所へ時間通りに来た。確かに一人の女の子がそこにいた。しかし、しかしだ。何故だろうか、ここにはときめきもきらめきも夢も希望も無い。
「お前じゃない!」
「あんた!来ておいて何様よ!!」