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高沢のくせに、賽を投げるような詩的表現でまとめようとした。史実にあやかってブルータスに刺されてしまえばいいのに。
「八ツ坂、俺が知る限り桜さんとお前が交わした言葉は片指で数えられる。この意味は分かるよな」
「言われなくとも痛感してる」
「今のまんまじゃ俺に出せるサインはねえよ。何出しても一緒だ。ワイルドピッチでサヨナラか被弾してサヨナラになるかの違いしかねえ。どっちがいい」
「ど真ん中ストレートで射止める可能性がまだこの地球上の片隅に」
「ははは、タイムマシン拾う方がまだ確率が……ぶほぁ!?」
牛乳を飲み干した高沢の口の中に俺ははっさくを丸々放り込んだ。喉を通らない苦しみと絶望的な牛乳との相性の悪さにもがき苦しむがいい。
うーうーと横で高沢が唸っている中で、俺はふと遠くの席で机を寄せ合うグループを見つめた。その一角に座っている桜さんはいつものように穏やかで、やはり柔らかな笑みを携えている。でも、高沢に感化されてしまったからだろうか、友達と合わせているその瞳はどこか上の空な感じがする。
窓辺から吹き込む秋風が、さらっと頬を流れていった。
新たな予兆も、不安も、一縷の望みも、まるですべてを次のステージへ持ち運ぶように。