唸れ!私の……ヒレェェェ!?
話の結論……タンスは凶器
「きゅぅぅぅ……きゅふぅぅぅ……」
ど、どうも皆さん……今、この姿で最大の命の危機に陥ってます……アザラシ(真っ白赤ちゃん)ブランと申します。
い、今の状況を……ご説明するとですね……た、箪笥……の下敷きになってます。
「きゅふぅぅぅ……(やべっ、食べたブドウ擬きがリバースする……)」
何だ余裕そうだとお思いでしょうが、これは現実逃避というもので、命の危機には違いないのです。
思い浮かべてみてください……自宅の普通の箪笥でものし掛かられたら人溜まりもない……それをアザラシ赤ちゃんが下敷きになってたら……もう生存は絶望的ですよ。
今生きているのはチート並みに頑丈な体のお陰です。
異様な体の柔軟性に気付いて色々試した結果餅のように伸びることも分かりました。まあ、伸ばしたのは兄であって私は不本意でしたけどね。
兄よ、あの時の台詞一生忘れんぞ。
あの時の兄の発言、「餅みたいに伸びるなぁ……白い毛で覆われてるからカビ(白カビ)がはえた餅だな」である。失礼にもほどがある!
だいたい兄の例えは酷すぎる……と、まあ…キレて暴れて兄腕の中から飛び出して隠れました。
隠れると言っても家の中限定なのはこの際目をつぶろう。外は危険だから兄弟に付き添ってもらわないと出られないのだ。主に誘拐とか。
そして誰も居ない部屋に入り今現在の状況になってしまったのだ。ドジな自分が恨めしい。ドアを開けたまでは良かった。
ここは水の中、不思議な事に重力がある時と無い時があるらしく……床に寝転んでいるときは浮かぶことはないのに対し、泳いだり移動中はフワフワと浮かぶのだ。
どうしてそうなるのかはさっぱりわからない。
しかし、そのお陰でドアを開けることも出来た。勿論私の前足で開けました。結構器用なことも出来ることにビックリしたよ。
うぅぅ……兄があんなことを言わなければ私も頭にきて隠れるなんてしなかったのに……
いや、どうかなぁ……私の方が精神年齢上だよね…。言ってなかったが、私は享年……あれ?何歳だっけ……死ぬ前に初給料貰ったから20歳は越えてるのかな?
てか、兄は何歳なんだ?弟君は14~16歳くらいに見えるけど……見た目的に兄は18位なんだよなぁ……あれ?そんなに変わらないか。
そして今の状況である。
箪笥の下敷きなって抜けられず、物思いと言う名の現実逃避をしかながら自分にも落ち度はあると考えが浮かんでくる。少し大人げなかったと今なら反省する。少しだけどね。
「きゅふっ…きゅふっきゅふぅぅぅ(それでも女の子に対してカビがはえた餅は無いと思う!)」
これでも歴とした女だ。ブスとか言われれば傷付くことだってある。いくら悪気の無い率直な意見でも傷付くのだ。
前世の幼馴染みにはクラスやら公共の面前で何れだけ私の顔が整ってないだの、ブサイクだのと宣っていた……あれは正直凹んだ。幼馴染みに言われたからではない。クラスの誰も目を会わせてくれなくて……後からごめんなんて言われた時何か悲しくなったんだよね。
迷惑先輩も遠回しに私の顔が残念だ、誰それの可愛さを分けてもらえばいいのに……なんてのも大勢の前で言われれば傷付くよね。私だって言われている内容が分からないほどバカではない。
ふう。現実逃避もこれまでにしないと本当にペシャンコになってゴマちゃん煎餅になっちゃうよ。
「―――――い、ブラン?」
「きゅう?(あ、もしかして探しに来てくれた?)」
「ブラン~? ふぅ~どこ行ったんだ―――」
「きゅふ!?(え?)」
見つけてくれるかと思ったがよもや私がドアノブを回せるなんて思わなかったらしく部屋の前を素通りした。そして私は……多分このまま朽ち果てる運命なのだろうか?
「きゅ、きゅふきゅう~(今生のまだ見ぬ母よ、先立つ不孝をお許しください……うぅぅ)」
ソロソロ限界だ。お腹の中身がリバースなんてもんじゃない。本当にお煎餅になるわ。
チキショー……何が入ってこんなに重いんだ。そもそも水の中なのにどうしてこのタンスは浮かないんだ!……まあ、どうせファンタジーのご都合途かなんとなんだろうさっ。
転倒の防止にストッパーなり、何なり壁に固定してなさいよ!地震があったら倒れる危険があるでしょうが!
現に倒れてこの様だし。
私の弾力性のある(多分あるから今無事なんだと思う)ボディーがなければウボァー!してたよ。
「―――ラン~……どこに行ったんだ?……まさか……いや、アイツはドアは開けられないだろ……あっちか?」
「きゆーー!!!(こっちです。まさかまさかのこの場所ですからぁぁ!!!)」
気付いて! 届け!アザラシテレパシー!!
チートで良かったねブランちゃん。見た目ヌイグルミのゴマちゃんが下敷きになってるように見えるからグロくないよ!
弾力性のあるブランちゃんは逆担当です。
だからほぼ無敵。