毛染めは計画的に
白い毛皮を紫に染めてしまった主人公アザラシ赤ちゃんのブラン。
彼女にはイケメンに対してトラウマ寸前の嫌な思い出が……
…………(・ω・)
「………」
「………」
「………」
・・・・(;・ω・)
「……落ちないね」
「完全に染まったか?」
「きゅっっーー!?」
なんと言うことか!
私の口のまわりが紫に染まってしまった……とな。
ここ水の中だよね? そんなに染まりやすいものか!?
海水で徐々に薄れていくかに思われた口の周りについたブドウ(もうブドウで良いよね)果汁は日が経っても消えることはなく、乱暴な兄のゴシゴシにも全く効果なく……染まってしまった。
つまり毛替えするか自然に薄くなるのを待つかしかないのだ!
毛替えするかなぁ……。ちょっと下品な話になるけど。
実はね、この姿に転生してから排泄とか…うん。その、諸々ね。それがないのよ。あ、涙は出たよ汗は知らんけど……犬も汗かかないし、アザラシもかかないんじゃない?
そんなわけで……この先毛替えするのか……ソレ以前に私は成長出来るのか不安です。この姿になって約一ヶ月と一週間ちょい……太りはりはしましたが成長の兆しなし。
まさかこのままこの姿のままなのか?
まぁ、ソレはソレでいいか。恋愛も別にしなくてもいいし。動物に恋心抱けるのも多分無理そうだし。
ほら、あれよ。そこんところは小説とかの主人公みたいに割りきれない?知らない場所で知らない初対面の王子とかにときめくなんて無理です。王子居ないけど。
いなくてよかったね。私心枯れてますが何か?
幼馴染みに「お前女として終わってる。そんなんだから未だにしrn」とか、迷惑先輩に「残念な顔ならせめて心がキレrn」とか。
散々言われてきましたけどなにか?
チッ、思い出しただけでも腹が立つ。
幼馴染みは両親(特に母)に猫被りで勝手に部屋に入ってくるし(奴はラッキースケベ体質だともっぱらの噂)、迷惑先輩はハーレム引き連れて人の教室に乗り込んでくるし(そして何故か私が睨まれる)。
幼馴染みは彼女を隠すための隠れ蓑に私を利用しているし、迷惑先輩は片想いの幼馴染みを隠すために私をスケープ・ゴートに仕立てあげた。
その時の幼馴染みの言葉は「ソレくらいしか利用価値無いんだし、ぶちゃいくはぶちゃいくらしく囮役くらい役に立てよ」など、宣った。
迷惑先輩も「大事な幼馴染みがあの子達(ハーレム構成員)に虐められるのはどうしても避けたいんだ。だから君が協力してくれて助かったよ」だそうだ。言っておくが私は一言も聞いていないし、承知した覚えもない。
つまりはあのバカ二人は人話を聞かない自分勝手な人間なのだ。自分の聞きたい事しか聞いていないか、重度の妄想癖でもあるのだろう。
追記しておくと二人ともよくモテる。
そして貞操なしだ。寄ってくる女は拒まない。離れていく女も追いかけない。自分からフレばいいのに女の方からフルのを待っている最低男共だ。
あ、これは私の親友(男)の情報だから確実だよ。まぁ、バレてないと思ってるのは本人達だけ。幼馴染みの彼女(本命)と迷惑先輩の幼馴染み(先輩の一方的な片想い)には私が証拠突きつけてやりました。
私の青春の約一年を無駄にしたのだから、当然ですよ。泣き寝入りなんてしません。奴らの思う壺……
と、まぁ人間の頃は色々ありましたねぇ。
私その後、その親友とお付き合いしたんですよ。支えてくれたし……挫けそうなときは活を入れてくれたし。
死ぬ瞬間の間まで私は彼の彼女だったんです。
ああ、あのあと彼等はフラれましたよ。人の目は何処にでも有りますから……ソレに女ってのはそんな簡単にへこたれません。男ほど恋を引きずったりしませんから。アイツ等に弄ばれた元カノ達が手を組んでどん底に落としてやりました。
あの光景は恐ろしくて…恐ろしくて……おお、寒気が。
そんなことがあって、私の受難も終わったかに思えた。油断していた私に復讐心を燃やさないはずはない。アイツ等にご執心なハーレム達が私に復讐してきたのだ。
同級生の元親友で彼氏……彼の目の前で……
歩道橋から突き落とされた。
即死だったのだろう。高さもあったし、車も走ってた。
死んだ瞬間の痛みを知らないお陰か割りと自分の前世の死を受け入れられた。
心残りなのは両親と弟……とはいえ、母は放置主義で父も浮気相手に夢中なのか帰ってこない。弟だけが心配だ。まぁ、私よりも確りしてるから立派に育つだろう。
心配なのは私が落ちる瞬間を見ていた彼氏だ。悪夢に唸らせていないといいけど。トラウマになったら他に恋愛など出来ないだろうし……記憶喪失希望だな。
ロマンチストなら「いつまでも覚えていて」とか言うかもしれないが、仮にも好きになった相手だ。不幸は望まない。私のことなどさっさと忘れて新しい恋でも見つければいい。そんなところはやっぱり枯れているのかもしれないね。
あ、死んだ日は初の給料日だったのに……好きな物食べようって言ってたのになぁ……そのために待ち合わせして……ソレで死んだんだわ。
もしも、もしもあの突き落とした奴らがこの世界に来ていたら――ラノベみたいにはいかないと思うけど――絶対このモフモフのぷりちぃなアザラシ赤ちゃんには触らせてあげない!
え?そこじゃない? だって他に思い付かないし。
だいたいこんな異世界まで来ないでしょ
「きゅきゅ~」
「ん?」
「どうかした兄さん?」
「今、壮大なフラグを建てたような?」
「兄さんの言ってる事ってたまに分からないよ」
口を拭かれながら思い出していた私であった。
あっ、イッタいなぁ!!
ひねくれていて、本当は単純。そんな主人公になったらいいなぁ…まぁ、私が書くとひねくれているのは確実なのかもしれません。




