舎弟と書いておバカと読む
いやいや、これに当てはまるのはシャチ君だけですよ。
シャチに追いかけられて死に物狂いで逃げていたアザラシのブランでございます。
何とか追い付いたダブちゃんにこてんぱんにノックアウトされて舎弟になったシャチが仕込まれた(ダブちゃんによって)芸を延々とやってます。今は水面から大ジャンプをしながらトリプルスピンをしているところですね。シャチってこんなに身体能力高かったんだっけ?それともファンタジー世界の動物って皆私の範疇を超える身体能力してるものなの?
ダブちゃんも身体能力地球の白熊よりも上そうだけどね。ま、彼は元々人魚だから当てはまらないけどね。地球上の生き物を軽く凌駕しちゃってるよね?
『ブラン、何かリクエストあったら言ってみろ。何でも仕込んでやらせるから』
白熊顔でニッコリ笑われても見え隠れするギラギラな犬歯が怖くてリクエスト処ではないんですが。まぁ、怒ってるんですよね、シャチに対して。
舎弟となったシャチは楽しそうに芸を仕込まれているので反省にはなりそうもないんですがそれは・・・まあ、私を追い掛けないのでもういいか。そして今は複雑な空中捻りを繰り返しています。ふっ、私にもその身体能力分けてくれんかね?無理か。
『笑顔が怖いので一先ず牙はしまってください。食べられそうな錯覚に陥るんで。』
『ん? ああ、悪い悪い。ついシャチのやろうととしたことについて考えていたら・・・三枚に卸すにはどうしようかと考えていたのでな。勿論ブランは保護の対象だから安心しよろな』
えーっと。どうしてか口からチラ見してる牙が怖いと言ったらシャチが三枚に卸される危機に直面していたことを知ったのですけど、どっから飛んでこの話になったの?
え?いつシャチを三枚に卸す算段をしてたの?私無事だしもういいんでないのかい? 命まで取るのは私のご飯が不味くなるから(罪悪感とか諸々)止めにしないかい?ね?ダブちゃん?
『ウーン、哺乳類だしな。解体ならまだしも三枚に卸すのは骨格的に難しいか・・・辞めよう』
『( ; ゜Д゜)・・・あー、うん、ヤメテクレテヨカッタヨ』
あれ?ダブちゃんってこんなキャラだった? 偽物――――ではないね。ニーアさん特製の腕輪着けてるし。あれって複製とか出来ないらしいよ。・・どうやって複製するのか分からないけど、多分ファンタジー御用達のスキルとか魔法の類いなんでしょうね。
それから私達は、
シャチに誓いを立てさせて―――――
「ガウ、ガウーン、ガウガウ(いいか、これから無闇矢鱈に生き物を追いかけ回すな、可愛いは正義だ)」
「きしゃ?シャー?シャウ?(兄貴よくわかりませんよ?アレですか要は旨いんですか?何味ですか?)」
「グカァー!ガウぅ!(バカ野郎!イエス、可愛い=ノータッチじゃボケ!)」
「シャ?ギャキャ?(要は触んなきゃいいんですね?見てればいいんですね?)」
それはそれで問題だと思う
「ガーウ、グウ(勿論弱肉強食の世界、自分の食い扶持の為なら狩るのも仕方ないだろ・・・)」
「シャー、シャウ(まー、食べなくても遊んで殺すこともありますけど)」
「グガァァ!?(てめ、遊びの為にブランを追っ掛けてたのか!?)」
とまぁ多少堂々巡りをしていました。
少しヒートアップし過ぎたので後は割愛。要はお腹が空かないとき以外に生き物を殺さないことを誓わされたようだ。これがこの海域の生態系に響くかは私も分からん。でも私は追っかけられなくてひと安心だ・・・このシャチが物忘れが酷かったなら安心はできないだろうけど。もし同じ目に会ったなら今度こそ私はダブちゃんを止めないだろう。三枚にでも卸されるがいい―――おっと、新雪のように真っ白な私が暗黒面に堕ちたブラックブラン(黒なのか白なのかハッキリしろよと言う突っ込みはないで)に成るところだった。危ない危ない。
え?なんで分かる言葉で話してないのかって?
うん、私が飽きたからだよ。多分
で、シャチに名前を付けて――――
『お前は今日からシロクロだ。ちゃんと覚えておけよ?』
『えー、シロクロなんてセンスの欠片も無いですねって・・あの、兄貴?俺の背鰭を曲げようとしてるんですかね? えっちょっ、痛い痛い痛い痛たたたたたたぁ~――――』
『お前に拒否権はない。ブランを追い掛けたその時からお前に人権は無い!』
『え?エェー!? 酷いって兄貴ィィィーっ!?』
『意外とヒレって柔らかいんだな。アハハハハ』
シャチのシロクロの背鰭をグイグイと曲げ始めたダブちゃん。その様が余りにも可愛そうだった(と言うことにして)ので取り敢えず止める。ここで何かあればフカヒレを美味しく頂けない気がするからだ。因みにフカヒレはサメのヒレだ。
『もうそれくらいにしておきなよダブちゃん。動物愛護団体から苦情が来るから』
『お前を遊び感覚で追いかけ回したコイツが悪い。』
『うん、一先ず落ち着こうね』
シャチと会話すると必ずダブちゃんがキレることになっているが、そこはスルーだ。話が進まない。
そして何よりも、私のお腹のご機嫌もよろしくない。お腹すいた。
そして少々遅めのランチ
『旨いなぁ・・・昆布』
『噛めば噛むほど奥深い味ですよね』
『よくそんなその辺に生えた海藻食えますね』
『グガァァッ!!(ノ`△´)ノ』
『あ、ダブちゃんが噛み付いた』
『イダダダダダダダダ――――』
食料品を目を離した隙にシャチに台無しにされて大人しく昆布をかじっているもそのシャチに言われた一言に危うくシャチがランチになりかけていたり。私としては止める必要性を今回は感じなかったので放置した。歯形がくっきり付いていたが元気そうで何よりだ・・・チッ!
そう、よりにもよって私達の昼飯をおじゃんにしたのだこのバカは!!
私をご飯から遠ざけるとは万死に値する。
『お、おいブラン・・・お前燃えてるぞ?海の中なのに燃えてるぞ(まるでメタンハイドレード?っていう燃える氷みたいだな。あんまり詳しく知らんけど)』
『え?ナニヲイッテイルンデスカ?ワタシセイジョウニカドウシテマスヨ?ヨ?』
『あ・・うん、そっか。』
『(。・ω・。)』
『あの~俺のことお二人さん忘れてるよね?痛いんすけど』
なんかダブちゃんがすごく遠くを眺めながら昆布をかじっているのでした。後、白と黒の魚みたいなのがしくしくと泣いていたが私は何も見ていない。うん、見えねぇーなうん。




