捕食者の俺と捕食対象の彼女
何が書きたかったのだ自分よ
俺は今、非常に機嫌とやる気が低い。
ま、その原因は巡り巡って俺に帰って来ただけなんだけどな。
いじけた俺の癒し、ブランはヘソを曲げて一切俺と顔を合わせない……ま、まぁ…俺が悪かったんだよな。あまりにもブランの動向が面白くて……ついな、つい。反省はしているが後悔はしてない。あの姿を後世に残せないのが悔しい。
事の顛末は……昼飯前の俺のちょっとした寝たフリでブランのご機嫌を損ねた……あぁ、本当に自業自得。
「大体…動きが可愛いからと言っていつまでも寝たフリ等しなければ良かったんですよ。子供ですか…――あぁ、まだ子供でしたね」
「・・・・・」
「人間の姿になってお菓子作るより素直に謝りなさい。あの子はそこまで強情ではないですよ(多分)それに帰って問題が拗れそうですよ……あぁ、聞いてませんねこれは…」
「――――――」
そう、便利な雑貨屋(名前は未だに知らない)に言われた通り。俺は今不機嫌だがせっせと台所を借りてブランが好きそうなお菓子を製作中だったりする。昔の俺からは想像もできない。昔と言っても前世の事だぞ。今生では自分で作りゃにゃ生きてけなかった……冗談は抜きにして。
昔の俺は台所に立つなんて考えられなかった。あったとしてもお湯を沸かすためにヤカンをコンロにかけるくらい。料理なんて中学の調理実習以来だ。自分の怠け具合は……過去の自分に跳び蹴りをかましたいくらいだ。今のスペックなら跳び蹴りも余裕だろう。白熊でタックルもよし。
「まぁ、そうしたいならどうぞご勝手に――
あぁ、そうだ。砂糖は少な目にしといてくださいよ。あの子は特殊な体質的に食べ過ぎると巨大化するかも知れないので」
巨大化? 風船みたいに膨らむのか?
――――それはそれで……
「可愛いからと言ってられませんよ。あの子も女の子ですからね。結構気にしてるかもしれませんよ体形のことに関しては“まるい”“とか“太い”とか“重い”はタブーですから」
「………」
女の子? どちらかというと元気で甘えたで落ち着きのない子犬だけどな。――――でも、言われてみれば風呂は嫌がる、腹を触るのも嫌がる(動物の本能的に弱点を触られるのは嫌だろうけど)、丸いものに例えたりすると怒る……あぁ、確かに女の子かもしれない?
ん~――だが、俺にとってはブランはペットよりも頭のいい――――あぁ、そうだ、妹みたいなもんかもしれない。しかも年が結構離れた……もしかして俺って危ない人?
「どこまで思考の大海原に航海に出てるんでしょうね~この人は」
「伯父さーん、この注文の薬どこに置いてあんの?」
「え?あぁ、それは左から三番目の引き出しに……」
そして呆れた雑貨屋に生暖かい視線を貰いながら俺はせっさとお菓子を作るのだった
「それにしても、よく異世界に召喚されたのに落ち着いてましたね。普通ならもう少し慌てそうですけど……」
「………」
誰の事を言っているかって、可愛いブランの事だよ。ブランは俺が召喚されても落ち着いていた。でもその言い方は動物に対する言い方じゃないような……ま、いいか。
細かいことを気にしていたらこの世界は生きるのは辛い。気にしてたらきりがないからな。
それにしてもブランのブー垂れた顔は可愛い……
*******
いやはや、シロクマの彼はアザラシのブランちゃんに首ったけ……あ、古いですか。ならご執心と言っておきましょうか。実際こっちがドン引きするほど溺愛してますし。
「・・・・・」
黙々とお菓子作りに精を出している彼は見た目がキツい顔立ちなので得たいの知れない毒物でも作っている魔法使いにしか見えないんですよね~。
見た目だけなんで誤解しないでくださいね皆さん。彼は今必死なんですよ……ほら、ブランちゃんに嫌われたくない一心で……
「卵は何処だ!」
「冷蔵庫ですよ~」
「あ、なるほどそうだな…」
集中している割りには散漫してるような気もしますけど
対してブランちゃんは………
「ぎゅぶぅぅぅ~」
「まぁ、その……機嫌なおせよ」
「きゅ!きゅうぅ……きゅきゅ!」
「あ~…うん、なおす気はないと、」
「きゅぶぅ~」
うちの甥っ子と話が噛み合っていない漫才をしてます。そんなに楽しそうにしていると彼が拗ねますよ?
ま、自業自得なんですけど。
ブランちゃんはブランちゃんで怒っているのに実は惚気けととれるく愚痴を言っていますし…え?言葉分かるのか?
ふふふ、私人外の言葉も理解できるんですよ。スゴいでしょ? ま、それで異端者扱いされてますけどね。その割りに何かあると頼られる…世知辛いですよ全く。
おや、私が愚痴ってしまいました、すいません。
ひょんな事からこのデコボココンビに関わる事になった私ですが見ていて大変面白いと言っておきます。特にブランちゃんに振り回される(本人達無自覚)はまるで一昔のコントの用で……それを再現できないのは作者の才能が…ゲフンゲフン……失礼。
皆さんにお伝えできないのが実に残念でなりません。
おや、そうこうしているうちにシロクマくんがアザラシちゃんにお菓子を持ってきましたね……どうして人間の姿じゃないんでしょう?
2本足でお盆を持ちながら歩くのは難儀でしょうに。ほら、とても不安定でいっそ笑みが浮かびますよ……それに巨大なシロクマの姿で仁王立ちは目線の低い(地面に限りなく近い)ブランちゃんには恐ろしくうつる……筈なんですけどね、
どうにも彼がどの様な姿でも変わりなく接している彼女は肝が座っていると思うのです。人間でも怖いですよ彼。ええ、どちらの意味でもね。
「ガウ」
「きゅふっ(ぷいっ)」
「ガウぅ…」
「……(ちら~…)」
「…………(´・ω・`)(しょぼーん)」
「きゅ、きゅぅ~?」
「ガウ!(ニコニコ)」
あ~……ただのノロケなんですかそうですか……チッ、リア獣か
まぁ、コントのような(サシテオモシロクナイデスケド…)ものを繰り広げている二人を観察しながら私は―――
「(はたからみたら変な光景ですよねぇ)」
と、考えながら店で売る小物類をせっせと作っているのだった。
時にアザラシちゃん? 私の名前をアーさんって呼ぶのはダメだからね?
なんだか不快な感じがするのだよ……何でかは知らんのだけどね




