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捕食者な彼と補食対象の私

 きゅっふー! 丸くなったダブちゃんの上からこんにちわ~。永遠の赤ちゃんアザラシのブランです。一応メス。

 今の状況をもしも何も知らない人が見たら「アザラシ逃げて!」と思う場面でしょう。



 だって、丸まって眠るシロクマの上で寛いでるアザラシ………食われますよね、このあと確実に。



 でも、ご安心ください。ダブちゃん中身までシロクマではないですから。元々は人魚でした。

 その、色々とありまして……今はどんな原理でかシロクマしてます。呑気なものです。


 最近までは何処かに召喚(という名の誘拐)されてましたが、漸く戻ってこれたのでのんびり養生してました。



 あ、別に健康を損ねたとかそんなわけではないんです。単純にダブちゃんの可愛いものに対する熱意が……逆に神経をすり減らしていたというか…


 アーさん曰く「ブランちゃん分が底を尽きて今は補充しているんだよ」だそうです。



 おい、ダブちゃんよ。君はそこまでフワモコの私の毛皮が恋しかったのか? 私にそっくりな縫いぐるみを大事そうに抱き締めてたくせに……テーブルの上に鎮座させてますよね……そんなに本物が良いかそうなのか……あ、ちょっと嬉しかったり……



「きゅふきゅふ……きゅふ」

「ぐぅ……(ZZzzz……)」



 ダブちゃんが寝返りをうったので転げ落ちた私を鋭い爪で傷付かないように器用に引き寄せて抱き締めた……おい、ダブちゃん。君起きてないよね?

 お姉さんにハッキリ言いなさい。こんな器用に抱き寄せるなんて……百戦錬磨の兵か貴様!


 絶対この人女性慣れしてそうだよ!それか子持ち……(゜ロ゜)!


 ま、まさか異世界で経験してきたか!?



「伯父さん……ブランがまた妄想してるぞ」


「そうですね~。放っといて差し上げましょう」



 ま、まさかね……まさか大人の階段登ってきたのか?そうなのかダブちゃん!?



 あ、でもシロクマとして召喚されたんだし……相手は同じシロクマァァ!? アレ?君は人魚ではなかったのですか?そっちも行けちゃう系?



 ………どうしよ、妄想が止まらない。




『ぐぅ……むにゃむにゃ……ブラン……』

「ぐきゅっ!?」



 び、ビックリした……寝言ですかい。なんてグットなタイミング。驚いて心臓が口から出るかと思ったし。はぁ~…、驚いた。



『違うぞ……それは……むにゃむにゃ…』

「きゅぅ~(どんな夢見てるんですか~)」



 力一杯絞められてますが、何時だかの箪笥に比べれば可愛いもんです。実際ダブちゃんの寝顔は人魚の時もシロクマの時も可愛いですが。幼く見えるんですよねぇ…寝顔って。

 何時も不機嫌そうに見えたり(ブランを可愛がる時はデレデレな顔してます)、ちょっと怖そうに見えるシロクマだったり……眠ってる方が数倍可愛いです。


 私、イケメン嫌いですけど見るだけなら好きですね。鑑賞用ってやつです。それ以外は迷惑被るので勘弁ですけど。



 まぁ、こう言ったら私悪女ですけど、身を呈して守ってくれるダブちゃんなら別にイケメンでもいいですね。あと、ペットとしてそばにいるなら私に害は無さそうですし。

 寄ってくる女の恐ろしい嫌がらせはペットにまで来ませんからね~。キチガイはしそうですか。ヤンデレとか。


 もうイケメンに寄ってくる女は花に集まる蝶なんて綺麗なもんじゃないですよ。地面に落とされた角砂糖に群がる小さな蟻の大群ですよ。まだ光に寄ってくる蛾の方がマシってほど……私の周りが特殊すぎたのかもしれない。運がなかったな私よ。




 その点、ダブちゃんは女嫌い。それにイケメンだけど雰囲気がちょっと怖そうに見える。特に今はシロクマだし、今のところ女性に言い寄られらことは無さそう。



 まぁ、いつかはダブちゃんも誰かと結婚して子供出来たりするんだろうなぁ……その時私の立ち位置どうなるんだろ?ペット? なら良いけど、何も役に立たない私をダブちゃんの未来の奥さんは許してくれるかな?


 ま、ダブちゃんの迷惑になるなら潔く去るけどね。去り際はダブちゃん泣きそうだけどいつかは吹っ切れるだろうし。ペットとの別れはいつだって辛いもんね。うんうん、私も可愛がってた飼い猫のミーちゃんに先立たれた時はこの世の終わりだと思ったほど辛かったもん。



 大丈夫、ダブちゃんも乗り越えられるよ!



『う~ん……違う……それは……おやつじゃない……輪ゴムだ~……むにゃ』

『わ、輪ゴムって……どんな夢だよ』



 先走って考えをまとめた私に聞こえてきたダブちゃんの寝言にツッコミを入れてみたが、肝心のダブちゃんはそれ以来何も話さなくなった。気になるな夢の話……起こしても覚えてないだろうし…。





 モゾモゾと寝言が漏れるダブちゃんの口元を見ているといきなりグワッと口が開いて酷く驚いた。そうだよ、中身がいくらダブちゃんでもシロクマって最大級の肉食動物だし、そりゃ牙も鋭いよね……あぁ、恐かった。


 一瞬だけど走馬灯が見えたくらいに恐かった。





「さあ、お昼ですよ二人とも~」


「きゅふ!きゅきゅ~(え、お昼!わーい、ダブちゃんお昼ですよ~)」

「グムグム……グゥ…」



 うん、起きないね。すっかり自堕落が板についてきたねダブちゃん。働き者だった君はどこに行った。ま、人のこと言えないけどね私。


 余程異世界は疲れる事があったんでしょうね。




 あ、ちょっと悪戯を思い付きました♪


 名付けて「どこまですればダブちゃん起きるかな?」です。うん、そのまんまなのはツッコミ無しでお願いします。



 さて、始めは何故かニーア君が私で遊んでいたときに使っていた猫じゃらし……私猫じゃないよニーア君。ま、ノリでじゃれてたけど―――を使いダブちゃんの黒いお鼻をこちょこちょしようとおもいます。

 敏感そうなあのお鼻が何れくらいこちょこちょに耐えられるか見ものです。手は使えないので猫じゃらしは口に咥えてこちょこちょするので手加減が難しいですが……私の悪戯心は「やれ♪」とGOサインを出してるので突っ走りたいと思います。




 結果。



「ムグ……ムグッ……ハックショォォォォ!!」

「きゅぁぁぁぁ!?」



 あまりのくしゃみの勢いに横にローリングして飛ばされた私が壁に激突しました。ダブちゃんのくしゃみの威力は建物を崩壊させる威力は無くても私を吹き飛ばす程にはありました……それでもダブちゃんは起きません。寝汚いぞ、私も人のこと言えないが。

 激突した痛みは地味に痛かった。




 その2「顔を触られて起きるにはどの程度か?」です。まぁ、さっきと似たり寄ったりだけど今度は顔全体が私の悪戯のターゲット……いえ、実験の範囲です。

 顔は体の中でも神経が敏感そうな部分ですから起きるとは思いますが……あのくしゃみで起きなかったダブちゃんが起きるのか少々不安です。


 でもやります!楽しそうですから!!




「(いつになったらお昼を食べるのでしょうね?)」




 結果。



「きゅぅ……きゅい!(えいっ……ぺちぺち!)」

「スピ~……グゥ……ムグムグ」



 叩いただけでは起きませんでした。毛皮が頑丈で私の非力な前足では起きるほどの衝撃は与えられないようです。ならばと思い尾びれでビンタは効くかとやってみました。




 結果。



「きゅいきゅ!(えいやぁ!)」

「(ばふっ!)…………グゥ」



 私のすることに意味なんてなかった。




 結論。



 早いですけど結論です。もう私ではダブちゃんは起こせません。自分で起きてもらう以外手はありませんね。今後これがどう影響するのか心配ですが、起きないのなら仕方ないですよ……



「(そろそろお昼だと思い出してくれません?)」


「(お腹すいた……まだかよ)」



 はぁ~。どうしましょこの人。どうやったら起きるのですかね?




 起こすことを諦めたのでお世話になってるアーさんに頼みましょう。予々すいません、ホント。



「あぁ、漸く存在を思い出してくれましたか…」


「コントは終わったか?」


「きゅふきゅふ…(すいませんお待たせしました…)」



 全然目を覚まさなかったダブちゃんをアーさんはとってもイイ笑顔で首根っこを掴んで食卓まで運んであの巨体(私から見たら普通の人も巨体だからシロクマダブちゃんはかなりでかい)を特注の椅子に乗せてニッコリと笑って自分も席についた……


 アーさん見かけ細いのに力持ち。人は見かけではないとダブちゃん以来に実感した。片手だよ片手。やっぱりファンタジーは何でもありか。





「さて、始めから起きていたシロクマはこの際無視してお昼にしましょう」


「あぁ…やっとか」


「きゅ!!?(え!?)」

「………(ギクリ)」




 そのあとちょっとイジケましたがなにか?














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