可愛い相方と旅に出たら召喚されたふざけるなっ!
ダブちゃんピンチ!?
意気揚々とブランと旅に出たら召喚された……
そして俺は偉そうなオッサンの話を右から左へ受け流している。あの芸人は今なにをしているのだろう……結構インパクト強くて好きだったんだけどな。
「おおっ!鋭い目付き!逞しい体躯!!鋭そうな爪に牙!! まさに我が子が使役するに相応しい…」
何にかは知らないが感極まって鼻水垂らしてることに気付けよオッサン。
それと物騒な話だな……なに?あんたの子供の使い魔にでもするのか?冗談じゃない!
「さあ早くこの獣を檻に入れろ! 私は息子に報告してくる……暴れるなら多少痛め付けても構わない」
うっわぁ…小者臭漂うオッサンが悪者お決まりの台詞吐いたぞ……俺が大人しくしてると本気で思ってる?
――――まぁ、今は大人しく檻にでも入ってやるさ……だが、その事を後悔させてやるから覚悟しとけよ……フッ…
先ずは状況把握からだな。
えぇっと……
俺、檻の中。
助け、見込めない。
場所、どうも異世界っぽい(魔力の質が違う)
見張り、屈強そうなのがゴロゴロ……
俺、絶望的……?
ほぉ……上等じゃねぇーか。俺を勝手に召喚したことを心底後悔しやがれ。
状況も把握したことだし……次は脱出手段の確保だな。貰って数日もしない内に使うはめになるとは……まぁ、背に腹は代えられないか。
そう思いながら腕にガッチリホールドしている腕輪に念じて連絡を取ろうとした…したのだが……思いもしない場所に繋がってしまった。
(えぇっと……どちら様で?)
(……そちらもどちら様?)
おい、どこに繋がるんだよ!不良品が?あの人に限ってそれはないとは思うけど……まさか本当に異世界っぽい?だから違う人に繋がったのか?
(あの……どうしたんですか?)
(えっと……その)
まだ若そうなアルト声の少年?の声で返答を求められたので俺は一か八か話してみることにした。つまりは賭けに出た。
(それはまた災難ですね……其処は地下ですか?何か目印になるような物はありませんか?)
(う~ん……ガラクタばかり置かれてて後は俺が入ってる檻だけだな。後は屈強そうなのがゴロゴロ居るだけだ)
(屈強そうなのが……見張りですね。ソイツ等の鎧や身に付けている物で何か紋章等はありませんか?)
そう言われて目を目を薄目ししながら観察してみる……すると右肩辺りに何やら金色に白縁された馬と鈴蘭の紋章が見えたので話してみた……
(金色に白縁……鈴蘭と馬……ちなみに馬の色は?)
(色?……茶色っぽいな)
(なるほど、確かご息子が使役する為に喚ばれたと言いましたね?)
(あぁ……)
(少々お待ちください……決して暴れるなんて思わないように……面倒になりますから)
その一言を最後に声は途絶えてしまった。
アルト声の少年は何者だったのだろうか? ここに俺を喚んだオッサンも貴族っぽかったのに、一般人がどうこう出来るのか?
一番重要なのが俺は元の場所にブランをおいてきてしまった事だ。ちゃんと食べているだろうか?寂しがりやで人見知りが激しいあいつが……一人で耐えられるのは精々3日だと俺は思う。
だからあの人に連絡して様子を見守っていて貰いたかったのだが……え?俺が帰る方法を教えてもらう為に連絡を取ろうとしたんじゃ無いのか?
そんなこと違う世界の住人に頼んでどうする。あの人だってそこまで万能じゃないだろ。自分の事は自分でどうにかする。できる範囲でな。
多分あの会話から3時間経った頃……上が騒がしい。何を言っているのか半分以上聞き取れなかったが「何故貴方が…」とか「成り上がりがふてぶてと…」とか、誰かを避難しながらも強く出れない感じの会話だった。
その直ぐ後、扉が相手喚き散らしているオッサンと矢鱈と綺麗な女性が俺の居る部屋へと入ってきた。オッサンは焦りながら冷や汗を垂らしている。
「見ての通り…貴方が関与出来る事柄などありません!」
「確かに……ガラクタばかりだな」
「が、ガラクタ……」
オッサンは「我が家伝来の家宝がガラクタ…」と多少落ち込んでいたが直ぐに立ち直って綺麗な女性に噛み付いてきた。勿論比喩でだ。
「と、兎に角!ここに貴方が……」
「ふん。巧く隠したな……だが、少しお粗末ではある……私の能力を甘く見てないか?」
「ぐっ……何を言っているのですかな?」
「白い熊…」
「!!!」
「……の入った檻が目の前に在るだろう?」
「な、何もないではありませんか…」
「そうか……お前が掛けた訳ではないのだなこの術は。誰が協力したのだか……炙り出すのが楽しみだ」
と、この様にオッサンの反応を半ば楽しんでやっているこの綺麗な女性は多分ドSだ。ドが付かなくともSっ気はあると思う。
あと、この綺麗な女性の声や仕草を見ていて分かった……この人綺麗な女性ではなく、綺麗な男性の様だ。喉仏を確認したのでまず間違えない。
何だか話が進まないので焦れて頭を上げて彼らの方を真っ直ぐに見ると……真っ直ぐでたっぷりした白い艶のある髪と白目と虹彩の境と瞳孔だけが黒い不思議な目と目があった……あの人に睨まれた時と同じように動きが制限されたような錯覚に陥ったが、ちゃんと体は動かせた……何だったんだろう?
「白い熊も起きたようだ……さて、監査対象だな。使役目的なら使役する本人が召喚しなければならないのは知っているだろう?アナタ程の地位を持つ御仁なら……アナタのご息子は御年6歳でしたね……力量不足では?」
「そ、それは……うちの子供は才能があって……」
「可笑しいですねぇ……才能があってこんなに強大な力を持った生き物を召喚出来るのに……何故檻に閉じ込めているのですか?……まさか……強引に使役しようとしてまだ了承を得られていないのでは? それなら檻に閉じ込めている事に納得もいくのですがね?」
「~~~~……」
その後も何とか言い訳をしようとしたオッサンの追随を許さず徹底的に言い負かしたこの人の手腕には舌を巻いた。まさに二枚舌……
(助けに来ましたよ……白熊くん?)
(え……えぇっ!!?)
いや、いきなり乗り込んできた辺り何となく予感はしてたんだ……この人がさっきまで助けを頼んだアルト声の少年だったなんて……しかもご丁寧にもウインクなんてしてくれちゃって……
こうしてオッサンから助け出された俺はこの人のお世話になることになった。
あぁ…早くブランに会いたい!
意外と冷静なダブちゃんの頭のなかはブランの事でいっぱいな気がします。




