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人魚辞めてシロクマになったらブランを撫でられなくて辛い

 またまた兄視点でお送りします。

 色々有りすぎたが、漸くこの国も落ち着いて数日……俺はあの人に以前から依頼していた魔法をかけて貰った。あの人は物語的には人魚を人に変える魔法を授ける魔女だろう……男だけどどっちも。



「まさか本当にやるとは……思い切ったねぇ」


『そんなに不思議なことか?』


「普通なら不便な動物になんかなりたくないさ……一時的ならまだしも……」


『それでも一時的なら人魚あるいは人の姿になれるだろ?』


「1日2日……それに3日日を開けないといけない……それほどに君には煩わしかったかな?この世界は」



 この世界全てが嫌いって訳でもない。ただ俺の存在がまた何か争いの火種になって欲しくないからだ。母親(あの女)父親(愚王)が俺と弟を呼んだのも自分達の良いように動かない王太子(兄上)よりも魔力の高い子供を傍に置くことで自分達の力を誇示しようとしたからだ。


 俺だってバカじゃない。あの場で口答えしたら牢屋にぶち込まれることぐらい分かってたさ。弟を巻き込んだのは反省してるが、反乱分子に弟が狙われるのを回避したかったんだ。



“俺達はこのバカ二人に従いはしない!!”



 ――てさ。それにキレたアイツは手がつけられないからな……




 そして事が終わり、次に残った課題が俺達兄弟の身柄。弟は確かに魔力が高いが、まだ成人してもいない子供で、兄上の方が遥かに魔力が高い。

 そして俺は……悲しいことに兄上よりも上だった……しかも今年で成人する。未だに甘い蜜を吸いたい愚臣共に良いように祭り上げられては堪ったものではない。だから早々に死んだことにして兄上を新たな王に即位させたのだ。


 即位には時間がかかる。継いで直ぐには国はきちんと機能しない。もし人に戻るにしても全てが兄上の手の内になってから……なんだ?悪どい?



 ……フッ……誉め言葉だな。



 俺が善人だといつ言った?


 俺はヒーローではない。自分達の為なら多少の悪事もい問わない。



 弟も覚悟はしていた……いつかこうなるだろうとは。

 だが、ブランを巻き込むのだけは……納得いかなかったったんだ。兄上は物珍しいブランをあの女に献上させて……と結局は俺がもう反対して使わなかった作戦があった。この作戦でご機嫌とりをしてもう少し穏便に出来、俺達も早くに牢から出られたのだが……可愛いブランを差し出してなるものか!無機物ならまだしも…このブランは繊細……ではないかもしれないが、人見知りで泣き虫だ。



 こんな可愛いブランを差し出すなんて…しかもあの女に何てもっての他だ!




 意地でも嫌だと突っぱねたら兄上にも呆れられた…。それに家に来た使者がブランの姿を報告したのかあのバカ二人に「あの珍しい生き物はどこにいる」と言われていたのだ。勿論「何処かに預けた」とシラを切っていたが、あいつらもブランが俺のリュックに入ってるなど思いもしなかったのだろう。



「しかし…良いのか?弟は王家に残ることになったぞ?」


『俺には何時までも迷子に付き合ってやることはできない…王家ならアイツの絶望的な迷子に付き合ってくれるだろう……蔑ろにしたら俺が噛みついてやる』


「君は今クマなんだから気安く噛みついてやるとか言わないの。洒落になら無いよ……」


『ならどうしてシロクマにしたんだ……俺は手先が今まで通りで動物なら何でもいいと言っただろ?』


「ならサルにでもすればよかったかな?」



 意地悪そうに人差し指を口許に持っていき笑っているこの人は遠い国で雑貨屋を営んでいる人らしい。魔法に長けている事から貴族出身か魔法に長けた一族の出ではないかと言われている。

 何処と無く気品も有るので強ち間違いではないかもしれない。



「――まぁ、冗談は置いといて……私は君の要望通りに手先を器用なまま、君に合った動物にする魔法を掛けただけさ……名前通りに白い生き物になるとは思っていたけど……まさかシロクマとは思わなかったよ」


『俺に合ってるか? シロクマが?』


「さぁ?でも最適な姿になってるハズだし、それが君の姿って事だよ。泳げて陸も歩ける……だけど強面に見えて実はよく見ると可愛げもある……ピッタリかもね」


『可愛げ……?』


「そう、可愛げ。君は私の子供と同じ位かそれより上か……子供のようなものだからね…可愛げもあるように見えるのさ……実は甘いものは好きだとか、老け顔と言われてショックだった事とか……あと可愛い生き物に目がないってところも……育ててあげられなかった息子に似ててね……」


『………』


 以外な事実。この人は結婚してたのか? それに子供も最低でも二人は居たのか……育ててあげられなかった? 死んでしまったのだろうか?



「ま、君の様につり上がった目はしてませんし、容姿も全く似てませんから重ねるのも不思議ですけど」


『……』



 この人は何かひとつを誉めるとその数倍貶す。冗談とわかってはいるが少々頭にもくる。



 悪い人ではないのだが。





「それで……何か不便なところは?」


『そうだ!一つだけ不便なことが!俺にとっては死活問題なんだ……っ!』


「それは……大変だ…で?何が問題なんだ?」


『~~~~ブランを……』


「はい?」


『ブランを撫でられない! 爪が鋭くて抱えるときに誤って傷つけそうで怖い!!』


「………は?」


『だから、爪が鋭くて――』


「いえ、そこは聞こえました……死活問題なんですよね?」


『俺の唯一の癒しが無いなんて死活問題だろ』


「あ~~……そうですね」




 ブランを撫で回したいのに爪が鋭くて怖くて出来ない何てなんて残酷な仕打ちだ! 目の前に上等な肉をただ見ているしか出来ない犬と同じっ!

 なんて蛇の生殺し……いや、シロクマの生殺し……



「爪は任意で出し入れ出来るようにしときます……他には?」



 ハ~…やれやれといった感じで快く要望を聞いてもらえてよかった。一生ではないにしろ毎日撫でられないなん軽く死ねる……は言い過ぎか。最悪生きた屍になると思う。



「―――――。はい完了。旅に出るんでしたらこれも付けときます。この腕輪を付けている時限定で人間の姿になれます……勿論制限も有りませんからご心配なく。ただし、それはあくまで君専用。他人には全く効果ありませんよ。本当は指輪の方が目立たずに良かったのですがサイズをチイチイ合わせるのが面倒でして……それに腕輪ならシロクマでもしていられるでしょ? 勿論人間の姿になったときはサイズもその時に適した物になってますから……失くさないでくださいね、代えを作るのは骨がおれますから……」



 そう言って左前足の手首辺りにカチリと音をたてて腕輪が填められた……これじゃ失くすなんて無理だろ。ガッチリホールドされてるから取れないし…でもキツくはない。



「一応発信器と通信機能もつけときました……人間の姿になりたい時は念じてください。私に通信する時も念じてください。簡単でしょ?」



 簡単ではないと思うが……まぁ、魔法をかじってる身としては……感覚的には分かった。多分…。



 これで心置き無くブランを撫でられる!



「ドウシテコウナッタ……(まぁ本人が幸せならいっか)」



 そんな呟きを隣でしているなんて俺は気が付かなかった……




 だか俺は後悔などしていない!!






 重要な事はみんなブランな兄……変わらない。



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