泥棒で好きなのはマスターシーフだけです
結論から言おう。泥棒は目が覚めると煩く喚いて兄の琴線に触れた。
……訂正する、弟君の怒りにも触れてしまった。
「―――っ(真っ青)」
「で?(爽黒)」
「………(無表情)」
爽やかな黒さを醸し出す弟君と目が恐ろしいほど冷たい無表情の兄に抱えられて居心地が頗る悪いです……どうも、ステルスゲーは好きだけど隣で見てるのが好きな元人間今はアザラシ赤ちゃんのブランです。渋い男性は目の包容です。
ま、男なんて2次元だけで良いです。前世で懲りました。私悪くないと思いたいけど。きっと柄じゃなかったんだよ……はぁ…
もう恋愛なんてしたくありません。するつもりないけど、この身体だし……あ、でもプラトニックな恋はいいか……いえ、どちらも勘弁ですね。
そしてイケメンだけどキラキラしい私が嫌いな自己中(私をモフろうとする所があるが…目を瞑ろう)なところがない兄とほんわかなのに怒ると恐いポイズンクッキングな弟君の家でお世話になってたら泥棒が来て厄介事も運んできたよ…。捕まえたけどこの騒動これだけじゃ終わりそうもないわね。
「命令はあの女の宝飾品だろ。女の部屋の箪笥に仕舞い込んでるから勝手に持ってけよ」
「兄さん、そんな乱暴な……あ、どうも、コソ泥さん。いくら僕たちが居なかったからといって勝手に入る方も品性を疑う行動だけど、まぁ、今回は命令だったと目を瞑ろうか……それで、用が済んだらとっとと尻尾捲ってさっさととんずらしてください。目障り……いえ、何でもないですコソ泥さん。」
目が笑ってないよ弟君。ほら、コソ泥さん今にもチビりそうだよ。このリビングが汚れるからから止めてやってよ。後が大変だよ。
コソ泥さんもそんなに睨まないでください。虫酸か走ります……おっと、レディにあるまじき言葉使いでした……。おい、今レディで笑った奴……夢に出てトランポリンしてやるから覚悟しやがれ…おっと、また言葉使いが。
おっほん……ええ、すっかり弟君と兄に怯えた(私を睨んだ所為で兄の眉間のシワが増えたことにより部屋の温度が3度程下がった)コソ泥さんは未だに簀巻きですが芋虫のように転がっています……そして小刻みに震えています。
あ、ちょっとはこの状態のコソ泥さんに同情心が湧いてきましたね……ええ、ノミほどには。
「お、俺は……ひっ!」
「話すことがあるならさっさと話せ…」
「………(うん、恐いね兄)」
「(ガタガタガタガタガタガタ…)」
まぁ、兄の顔が見れないほど怖くなってるけど、話さないとそれはそれで恐ろしいことになる気がする。コソ泥さんはまるで箪笥に隠れてガタガタと震える青色の鬼と追いかけっこするゲームのキャラの様になってしまった……こうなると多分直ぐには話せない気がする……そこまで恐いか……
今更ながら兄は人魚だ。そしてヘソから直ぐ下は魚の様になっている……そして色が綺麗な光輝く青色だ。そう、綺麗な空色。あのブルーベリーな鬼と一緒にして貰っては困る。言ったの私だけど。
そしてよく見てくれ。こんな恐い顔(美形)してるけどその腕に抱えられているものを見てくれよ……そう、私だ。アザラシ赤ちゃんだ。
滑稽でしょ?笑うとこだよこれは。
そして弟君。彼もよく見て……まだ13やそこらの子供だよ。お兄さん(コソ泥)20歳辺りでしょ? 子供に怯えて……そんなに恐いかな……ま、まぁ、恐いけどね実際…でもこんなに怯えなくても……
あ、むり? そうですか…でも
何故に私も怯えられてるのでしょうね?これも兄と1セットとして見られてるからなの?
それとも腹トランポリンがまだ尾を引いてるのか……どちらにしても怯えてなにも聞けない……もどかしいわ。
それにしても……なにこのコソ泥さんの格好……もう少し目立たない様にするよね? あ、泥棒に入るつもりが元は無かったんだっけ?それにしても旅に出るような服装でもないよね……何て言うの?………う~ん……晩餐会…? いや、それにしてはお粗末…見たこた無いけど。
……そう、そうだ、お忍びで城下に下りたけど目に見えて身分がバレバレな王子みたいな格好。それかごてごての装飾を外しただけって感じの貴族だね。ファンタジーの。
海の中なのにどうしてヨレヨレになってないのかはもう突っ込むまい。どうせ魔法でしょ、魔法。
「使いに寄越すにしても一人って……自分の貢がせた宝石類がどれ程の量に達してるか知らないのか?」
「会った記憶は無いけど……ここまで来ると兄さんが嫌ってるのも分かるよ……考えなしなんだね」
「そうだな。自分達のしでかしたことに何の責任も感じない……子供より無能な事だけは確かだな」
「きゅ……(うぅ…苦労してたのね兄よ)」
苦労話を聞いて涙が出そうになったがコソ泥さんの手前出すことは危険となんとか堪え、このコソ泥さんにどうやって宝石類を持っていかせるかについて話は移った。相当な量らしい……
それもその筈、憎っくき私の天敵埃の部屋の箪笥が件の宝石類が入っていた箪笥だったらしい。あの重さは尋常じゃなかった。……そう言えば兄は「どうせ傷付いてる」とボソッと言っていたが、もしかすると箪笥の中は……私が倒したことで大変なことになっているかもしれない。
それにしても……会いたいから此方が出向けとか、しまってた宝石類を持ってこさせるために不法侵入OKとか……親以前に人としてどうなの?
仮にも長年放ったらかしてた子供に対する態度じゃない。まるで……召使いにする態度よりも酷いんじゃないか?
「面倒だから箪笥ごと持っていってもらおう。重量軽減の魔法でも掛けとく」
「それが良いね。……この前盛大に倒れたから中身がどうなってるかなんて知らないけどね」
「自分で放ったらかしてたんだ。そんなところまで面倒見切れるか」
ま、生きていくことに必死でそんなことまで手が回るわけないよね。
「きゅ!きゅぅ!(それで文句でも言ってきたら私の往復ビンタが火を吹くぜ!)」
「ブラン……(何を意気込んでるのかは知らないが……可愛いなぁ…)」
まかせときな兄よ。私は恩は忘れないぞ。例え日頃からモフられてウザいと思っていても!それはそれ、これはこれ。
今だ見ぬ兄弟の両親にもしも合間見える事があるならば……私の必殺往復ビンタを喰らわせてやろう。
「ブランも何か分からないけど意気込んだところで……さっさとコソ泥…さんに箪笥を運んでもらおう。なんせ僕たちまだ16歳未満だし、種族的に腕力は強くないもん……勿論あの無駄に……ム・ダ・に!大きな箪笥をコソ泥さんが責任もって陸まで運んでくれるよ……ね?」
「ア、ハイ」
「……(我が弟ながら容赦がない…)」
「きゅ……(鬼がいるよ!)」
「兄さん?ブラン?(爽黒)」
「俺はなにもいってないぞ」
「ぎゅっ?!(どうしてわかった!)」
「ん?(ニコリ)」
「………箪笥だが…」
あ、話ずらした……
「俺が魔法を掛けるがそれは陸までだ……後は陸だろうし自分達でどうにかしてくれ…後は知らん」
「誇り被るほど長年放置してたからどうなってるかなんて期待しないでね。半ば棄てた子供に何を期待してるの?って何か言われたら言っといてね?」
もう弟君は容赦がない。どんどん追い込む。例えコソ泥さんがどんな目にあうかも多分分かっててやってる。宝石類に傷がついていたらこのコソ泥さんが処罰されるのは目に見えている。ご愁傷さまです。
ま、仕えた人が悪かったね。自分の人を見る目が無かったと思って諦めてね……え?私がどうにかしろよ?主人公だろ? ………無理じゃ無理。アザラシ赤ちゃんに何が出来るのさ。
「ほら、さっさと立って歩いて……全く……僕の部屋に宝石があると思うなんて目が余程節穴なんだね……最初っから豪勢な扉を選べば良いじゃないか。見るからにあの部屋に宝石がありそうじゃないか」
「あの悪趣味なドア……な」
「ふきゅ?」
ん?――あぁ確かに乙女チックで私は絶対そんな扉のついた部屋には住みたくない…それくらい悪趣味なドア……あのドアさえ開いていなければ潰されることもなかった……そう言えばやたら誇りっぽかった。掃除も稀にしかしてないんだろうなぁ。
弟君も誇りっぽいとか傷がついていても不思議じゃないなんて中身を確認してない……相当兄に恨まれてるね。
そう言えばあれが母親の部屋なら父親の部屋は何処なんだろ? 見掛けないなぁ……兄か弟君がその部屋つかってるのかな?
ま、どうでもいいか。
そして悪趣味なドアの部屋から埃被っていた箪笥を兄が丁寧に埃を拭き取り――家の中に埃を落としたくないから――動かせないとヘタるコソ泥さんにしびれを切らして兄が軽々と持ち上げたことに脱帽して開いた口が塞がらなかった。
そして重量軽減の魔法を掛けてコソ泥さんと箪笥をブドウ擬きのトゲトゲと茂みより向こう側に捨ててきた…らしい。ちょっと不安になったがここまでする義理もなかったと思う私は絶対性格がネジ曲がっている……元々こんな性格だったかな?




