食べなくても平気
食べなくても平気なのではなく、食べなくても生きてはいけるだけです。基本的に食べないとヘソを曲げます。
兄と弟君の論争は夜中まで続いた。そして出された結論は……「魔法で安全を確保してブランに初めてのお留守番をさせる」事にしたようだ。うん。妥当な判断だよね。
不安要素の弟君の手料理を食べさせられたら……安全とはきっといかないね。多分二度目のあの世に逝っちゃうね。それに比べれば、安全を確保して私に留守番させてる方が安全だ。どれ程弟君の料理はダークマターなんだよ。
前世は料理があまり上手くなかった私に言われるなんて……どれ程なのよ。あ、別に私の料理はダークマターじゃないよ。勿論毒でもないからね。特別美味しいわけではないけど、不味くもない……所謂普通の料理の腕でした。誉められたこともないけど、文句を言われたこともない。
個性がないって先生には言われたわ……個性って……家庭科の授業って必要だった? テキスト通りに作るのが目的でしょ。アレンジはホントに作りなれた人がするもんであって、下手な人がやったら失敗するだけ……同じクラスの美人さん(幼馴染みや迷惑先輩の取り巻きではない)が物凄く……アレンジしちゃって料理失敗してた。
けど、その事を誰も責めなかった。私も責めなかったけど、失敗したことを代わりに私に文句言われても仕方ないと思う。だって違う班だったし、隣に同じ班の人も居たのに……今思えばスケープゴートにされてたわね。チキショウ……
美人さんって得するのねって思ったわよ……ま、彼女自身はそんな私に文句いってくる人たちをまるでゴミを見る目で見てたから別に恨んでないけどね。得をする反面、色んな人を惹き付ける……大変だなぁって思ったよ。ま、そのお陰で意気投合して友達になれたんだけどね。
彼女自身は隠れオタクでかなりコアなゲーマーで、遊びにいった家でゲームするのが楽しかった。
「……ブランは頭が良いから心配は無いんだが……トイレの心配もないし、食べ物をキチンと用意しておけば1日なら大丈夫……だと思うんだが…」
「きゅ?(え?)」
あぁ…大丈夫だよ。もう同じ失敗はしない。箪笥のある部屋には絶対に入らない。もう絶っっ対に!
出来れば戸締まりをして、ブドウモドキをタンマリ……は無理か……被れるんだっけね人魚は。
なら、何か果物を木の器に山盛りに入れてってくれれば……後はゴロゴロして過ごしてるよ。自宅警備? アザラシにそんなことできません。番犬ではないです。
「きゅ!きゅきゅぅ!(ご飯さえ置いてってくれれば大人しくしてます!)」
少しでも有れば1日程度空腹には耐えられる。一週間は流石に無理そうだけど……精神的にね。なにも食べなくても死なないだろうけど、精神的にダメージは受けそうよ。人間だった頃の常識が邪魔しそうな予感。
「この器に果物を入れとくからな……これで足りるか?」
「もう少し入れていった方がいいよ。1日も家を空けるんだから……ねえ?ブラン」
う~ん……正直多ければ多いほどいいんだけど、それは食べ過ぎで太りそうな予感がするから……あ? もう手遅れ? 余計なお世話じゃ!
……ま、まぁ…悪いしね……置いてもらってるのに甘えすぎは駄目かなぁと、今さら思ったのです。