アザラシはアシカじゃないぞ!
似てない……ですよね?
どもども……イチゴ(魔物の一部)を食べてあまりの美味しさに感動しました、アザラシのブランです。あの美味しさは魅惑のモンですよ。依存性もありそうで怖いですが……。
「大漁だからジャムにして保存しとこう…」
「きゅー…(いいねぇジャム。パンにつけると美味しいよね……レモンバターも好きだけど)」
「カビ生えない様に密封容器買わないとな」
「きゅ~ん…(あ~…手作りのジャムって保存料入れないから直ぐにカビるんですよね……冷蔵庫で保存してたのに何度苦渋を舐めたか…)」
保存料って体に悪いとか言われてるけど、なければないで大変なんだよね…。砂糖もたっぷり入ってるから余計に悪くなるのかな?そんなイメージあるよね甘いものって……腐りやすいって思うのよ私は。
ちなみにレモンバターは、我が家で作った自家製バター(マーガリンじゃない。買ったバターの時もある)にレモン果汁と下ろした皮で香り付けをしたバターのことです。ホントの名前は知らないや。お母さんが何処からか知って朝食に出したのが始まりだった。好きだったなぁ……レモンバター。リンゴバターも作ってくれたなぁ……あぁ、ホームシックになって泣きそう。
「ブラン……?」
「………」
泣くな泣くな……泣いたらまた涙が真珠になる。外では誰が見てるか分からないから見られたらヤバイ。それでなくても見た目的に珍しくて目立つのに……こんな辺鄙で人影もない場所だけど、何事も例外ってあるよね……
「くすんっ……きゅぃ(鼻が詰まったよ……花粉症かな?)」
「鼻水出てるぞ……」
そう言って兄は私の鼻をハンカチでごしごし拭いた。相変わらず力加減がない。お陰で鼻がヒリヒリした。
何だろうねぇ……この姿になってから精神が幼児化してる気がする。この体が赤ちゃんだから影響してるのか昔よりも涙脆くて……。
鼻水でグジャグジャな有り様になってしまった。
そしてふと気付く……涙が真珠じゃなくてガラス玉(と思う)になってる……何で?
「真珠じゃないぞ……コレは……ルビー?」
「きゅ!?」
ルビーだと!?私にはビー玉にしか見えないぞ。普通サイズのビー玉……にしか見えない。そもそも宝石ってのはある程度小さくて(米粒くらい)綺麗にカットされてるから綺麗に見えるのであって、原石とか玉状の場合は……安っぽく見えるのよね……それに本物なんて母親のピアスに付いてるちィいちゃい物しか見たこと無いしね。
それにしても……これが公になったら命の危機だわ。
「さ、帰ろうか…ブラン?」
「きゅー…(泣いてないぞ、泣いてないからな)」
「何を息巻いているんだ…」
「きゅー…きゅ!(兄よ、ホントに君は欲ってものが無いのね)」
安心したったてか、その欲の無さは逆に心配になるよ。普通の反応は「スゴい!」とか「売れば…」とか、間違っても「病気か?」とか心配したりしない……と思う。大体は驚くか欲が出るかの2択じゃない?
「あ、涙が石になるのは海中に浮いてるときか!」
「………きゅ?(;・ω・)(……え?)」
あぁ、そうだね。涙腺から出る瞬間はただの涙だしね。固まって真珠や今回宝石になったのは海水に浮いてるときだしね。言われて気付いたよ。
涙腺から固形物出てきたら痛いもんね……何か違う気がするけどツッコム気もないわ。
「……まあ、その事はいいか。」
「きゅきゅ…(そうだね…気にならないなら別にいいよ)」
「大漁だからジャムの他にも使えるな!……またお菓子にしようか…」
細身の剣を鞘にしまって倒した魔物からイチゴモドキと何やら宝石の塊みたいな石を取り出していた。薄い水色の荒く削られた宝石の原石は不思議な力を感じた。もしかするもファンタジーによくある魔石とかそんなもんじゃないかな。感じる力ってのは多分魔石……だと思う。地球生まれ(このボディはこの世界だと思うけど精神的にはこの世界)の私には判別不能です。
そう言えば……兄や弟君からは色のついたモヤモヤ見えないねぇ。
何であの兄弟に色つきモヤモヤが見えないのかと考えているといつの間に家に着いていた。
兄の手には風呂敷(あの唐草模様のやつ)の中にいっぱい詰まったイチゴモドキと魔石(仮)がお土産にぶら下がっていた。水の抵抗がスゴいよね多分。
戦い終わってから言うことでもないけど、兄の軽装にはちょっともの申したい。下は尾ひれなので穿けないのは分かるが、上もラフなシャツと上着だけってのは……怪我するよね。何で鎧…とはいかないけど、何かしら防御する物でもつければいいのに…。何より私を背負って闘うことが間違ってるけど。
「お帰り兄さん。大漁みたいだね」
「あぁ、これで暫くは食い繋げる」
「売りに行くのが大変だけどね……そろそろ食材とか日用品が無くなりそうだったからちょうどいいね」
「塩と砂糖……それから諸々少なくなってたからな」
「きゅぃ……(料理してるとこあまり見ないけど、水中でも出来るもんなんだろうか?)」
水のなかで料理……どうしてるんだろう。私は今までキッチンに入れてもらったことがない。危ないからと中に入るのを禁止されているのだ。だから調理風景は見たことがない。
前にお世話になってた家でも部屋に閉じ籠りっきりだったので見たことない。
見てみたい気もするが、何かトラウマ的なモノを見るかもしれない恐怖感があるので見ようとは思わない……魚を食べる習慣も動物を獲る習慣もあることから……捌いている風景は見たくない。
私も食べられそうになった身だしね。喰われなくて良かったわ。
それにしても……果物(陸の物かは不明)は食べてるの見たけど、料理を食べてるところも見たことないなぁ……いつ食べてるんだろうこの兄弟。特に弟君。
兄はお菓子とか何やら食べてるのは見たことが数回あるけど、弟君は見たことない。多分二人ともキッチンで食べてるから見たことないんだと思うんだけど……何やら徹底して私には見せないよね。
「どうした?ブラン」
「疲れたんじゃない?狩りに連れていくなんて無謀だったんだし……兄さんはもう少し相手のことを慮って」
「楽しいと思ったんだよ……いつも外に出ると言えば海の酸激を食べに出るだけだし……それも家の近く……いい気分転換になるかと……」
「確かにそうだけど、ブランにとっては散々な目に遭っただけで……」
「うっ……それもそうか……すまんブラン」
「きゅっ!(まぁ、確かに気分転換にはなったから……気にしてないよ!)」
建前ではね。ホントはもう勘弁です。
兄と弟君は魔物から取ってきた魔石(仮)を売に行くのは何時にしようかと相談中のもよう。かなり遠くまで行かないといけないらしく、何日も家を開けないといかず、私はどうするのかと相談しているようだ。
まあ、何と言うか……箪笥に潰されない限りは何も無くても生きていけるよ。寂しいとかは抜きにしたらね。あ、それと……食べ物も置いていってくれるとありがたいかなぁ。
普通のペットはちゃんと面倒を見てくれる人に頼むか、連れていくかの2択だけど、私はその心配は無いぞ!
心のなかで言っていても仕方ないと私はちょっと遊び始めた。
「(ぬぬぅ…中々難しい。)」
何をしているかというと、床に何気無く転がっていたボール(多分)を鼻の上でバランスを取る……アシカのショーでお馴染みのアレである。
水族館の人気者ベスト3に入っている(私の独自の)アシカは鼻先のバランス感覚がスゴくいい。姿の似ている?アザラシもいいかと言われれば……良くない。私だけ頗る悪いわけではないと思う。アザラシのあのバランス感覚は長くて器用な髭がアンテナの代わりにあるからできるのであって……アザラシには無理なんです……え?
そもそも似てない……とな。
……た、確かにそうだけど……特に私は似ても似つかない……だと!?
うぅ……否定できない。
「(アレはアシカの専売特許だろ……ほら見ろ…失敗してる……可愛いなぁ)」
「兄さん……(ブランも兄さんをメロメロにしてどうしたいの?……可愛いから良いけど)」
特に最近ゴロゴロしかしてないから……骨格自体どうなってるんだろうってくらい……ええ、太りましたけど何か? 殆どブドウモドキしか食べてないのに太りましたけど何か?
ちっ、あのブドウモドキには何か肥える養分が多く入ってたのか……単に私の運動不足か……どう考えても後者です、本当にありがとうございます。……なに言ってんだ私……
多分、周囲の魔力を常に吸収してるからお腹も減らないし、偏食でも肥るんですよ……ってことにしてください。
「ブランを置いていくのも不安だが、お前(弟君)を置いていくのも不安だ……主に食事面で」
「どうせ僕はダークマターしか作れないよ」
「どうやったらああも黒くなるんだ……不思議でならない」
「きゅ、きゅう!?(だ、ダークマターだとっ!?
)」
「ブランまで……そんな目で見るの?」
弟君……きみはポイズンを通り越して暗黒物質を作る天災(誤字じゃないよ)なのか? 死人を出すほどの……恐ろしや弟君の料理の腕前。食べたらあの世に逝っちゃうね。
「大体火を使わないのに黒く焦げるんだよ……周り水だぞ」
「そんなの僕が聞きたいよ!」
「………きゅふぅぅ…(もうそこまで逝くと才能だよね)」
砂糖と塩を間違える何てまだ可愛い……どうやら弟君は不思議な力で食材を黒焦げにする天災らしい。火を使わないってのかスゴいね。
でも、兄の心配もわかる気がするわ。そんな弟君が私の世話をする(食事面)のは確かに心配だわ。私も心配だわ……主に胃袋と命が。
本人の体も心配になるもの……一人にしたら危ないわな。どうすんだろう。
どうか今後弟君の手料理だけは食べたくないと切実に思いました。
似てないですね。骨格も違いますし……前足もアシカの方が発達してますし……後ろ足も泳ぐことにしか使えなさそうなアザラシの足……
でも目がくりんくりんしてて可愛いのは共通ですよね?